「面会制限をどうしたら良いか」というご質問をたくさんいただきます。
新聞などメディアでもしばしば取り上げられている話題でもあります。そういう特集を見るたび、「もう少し違う観点から議論しても良いのではないか」と感じています。
「何をやるか」は、その人(や組織)が決めることであり、感染症専門家が決めることではありません。私たちはいつでも「お手伝い」する立場です。しかもその「お手伝い」は、感染症という極めて限られた領域のものになります(我々もそれをしっかりと自覚しておくことが重要です)(ちなみに、その究極の形が修二会-お水取り-でした)。
「面会制限」という言葉も、よく考える必要があります。
病院や福祉施設で行う「面会」が、全くフリー(病院や福祉施設の管理なし)に行われることはありえません。遊園地内で事故が起きれば遊園地に一定の責任が生じるように、病院の面会で問題(盗難なども含みます)が起きれば、病院にも管理責任が生じます。従って、存在するのは「制限」ではなく「条件」です。つまり「面会にあたっての条件」を設定する、という考え方です。
こういった考えに基づいて、以前私が質問者に回答した文面の一例をご紹介します。
「面会制限」という言葉に振り回されるのではなく、あくまで面会の本質をしっかりと考えることが重要だと思います。
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○○様
この度は面会についてご質問のメールをいただき、ありがとうございます。
我々感染症専門家の立場は物事実施の可否を決めるのではなく、基本的には実施主体の方々がやりたいことをどのように実現するかということのお手伝いをする立場と考えております。
従って面会をすべきとお考えの方々には、私としてはどのような形で面会ができるかということを共に考えるようにしております。
まず面会するにあたって面会者からの患者あるいは患者からへの面会者への感染は起きないに越したことはありません。
この点で最も重要なことは患者及び面会者の双方がヒトヒト感染させるような感染性を有していない状況にあることだと思います。
従って面会前の双方の体調確認が最も重要であると思いますし、可能であれば周囲の感染症流行状況なども確認し、例えば面会者がインフルエンザやコロナを疑うような方と同居されているような状況であれば一層慎重な対応が必要だと考えます。
それでも例えばコロナなどは無症状でも感染性があるということを問題にされる方がいらっしゃるかもしれません。
それを問題視するのであれば例えば面会者に感染性があったとしても患者に感染させないような一定の感染対策を講じて面会する必要があると思います。それは、例えばマスクであったり換気であったりすると思います。接触時間は短い方が感染のリスクは低くなりますので、面会時間に一定の基準を設けるという発想もあると思います。
もう1点重要なのはこのような面会時の感染対策のルールを作ることは大事ですが、それが守られているかを確認するという作業も必要かと思います。つまり、安全管理という観点から面会が病院の管理下で行われていることが重要だと思います。その上で各病院のリソースやキャパシティに応じて面会の条件や基準を決めていっていただくのが良いのではないでしょうか。
私自身はなるべく「面会制限」という言葉は使わないようにしています。
上に申しましたように基準や条件のない面会というのは存在しないと思いますのであくまで、どのような基準や条件で面会を行っていただくかということを繰り返しになりますが各病院のリソースやキャパシティに応じてお決めいただくのが良いと思います。「面会制限」ではなく、「面会の条件」を適宜設定していく、という考え方です。そういう認識を共有することで「制限」という言葉から受けるネガティブな印象から開放され、生産的な議論を行うことができると思います。
余談になりますが、コロナ禍で個人的に興味深かった経験は、病院の声のポストにある患者さんから「面会が減って嬉しく思う」という意見が入っていたことです。
大部屋で隣の患者さんのところにたくさんの人が面会に来てうるさいなと思われている患者さん、あるいは自分にとっても面会に来る人が減って気が楽だという風に感じられる方もいらっしゃるのだなぁと思いました。
こういうときはこう、というクリアカットなお返事でなく恐縮ですが、何かしらの参考にしていただけますと幸いです。
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