感染症学会雑感 ガイドラインとリスクファクター
先日、感染症学会へ行ってきました。諸事情あって、25日1日だけの滞在でしたが、興味深い発表が多かったです。特に興味を引いたのが、医療・介護関連肺炎(NHCAP)診療ガイドラインにおける抗緑膿菌活性のある抗菌薬の推奨を検討したものでした。このガイドラインでは重症度によって経験的治療の抗菌薬を分けていますが、喀痰Gram染色などきちんと評価すれば、重症例でも抗緑膿菌活性のない抗菌薬でも死亡率に差が出ないというのが、発表の趣旨です。
これを聞いていて、広域抗菌薬について考えてみました。私たちが広域抗菌薬を使うのは、経験的治療で外すと予後が悪くなるからです。そして外すのは、耐性菌による感染症の時です。耐性菌による感染症のリスクファクターについては多数の報告がありますが、多くの場合「オッズ比○.△△」という形で表現されます。ある報告(Can J Infect Dis Med Microbiol. 2009 Fall;20(3):e43-8)では、ESBLまたはAmpC産生菌を検出するリスクは、14日以上の入院でオッズ比3.05、28日以内の第3世代セフェム使用でオッズ比4.52との結果が出ています(別にこの報告を持ち上げる訳ではありません。あくまで一例です)。
これをどう考えるか。この報告のDiscussionで、E. coliの0.28%、K. pneumoniaeの0.8%がESBL産生するというサーベイランスが引用されています。話を簡単にするために以下では1%で考えることにします。確率1%とは、オッズ比で言えば1/99です。これで、14日以上入院し、第3世代セフェムが使用されたとして、オッズ比は1/99×3.05×4.52≒0.139。ちょっと繰り上げて1/7としても、2つのリスクを考慮した場合で確率は1/8。このくらいになると臨床的に無視はできないでしょうが、決して高い確率ではありません。この1/8をカバーするために全例カルバペネムを使用するとなると、8回中7回は不要であったと後から分かるわけです。
ここからは哲学も絡んできますが、ガイドラインって、非専門家がこの1/8で足下をすくわれないように作成されるという一面があるのではないでしょうか?その分、ある程度の不正確さはついて回りますし、子細に検討すれば広域抗菌薬の使用が過剰ということも当然あると思います。これはやむを得ないでしょう。
専門医としてコンサルテーションを受ける場合は、そこから一歩進んで、目の前の患者に対して、既存のガイドラインの内容がどの程度当てはまるのかを検討し、最適な治療を模索することが必要なんだと思います。抗菌スペクトラムで言えば、ガイドラインより狭域となる場合もあれば広域となる場合もあるでしょう。狭域の方がエレガントだとは思いますが、そこは症例毎の問題です。






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IDATENウインターセミナー2012が無事終了しました。遅くなりましたがご報告させていただきます。







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