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2014年9月27日 (土)

ダニーズ、約束の地へ

DCCの忽那です。

実は私、回帰熱に人一倍興味のある人間です。
輸入回帰熱を診断して以降、輸入感染症にすっかり魅せられいつの間にか今の職場におります。
そんなわたくしがずっと行きたかった場所、それが沓島であります。
いきなり沓島と言われてもどこだか分からない方がほとんどではないかと思います。
 
 
こちらが沓島であります。
舞鶴市の沖合い、若狭湾に浮かぶ無人島で、 冠島とともに京都府指定冠島沓島鳥獣保護区(集団繁殖地)に指定されている島です。
ウミネコやヒメクロウミツバメといった海鳥が繁殖しており、海鳥の繁殖保護のため原則として上陸が禁止されています。
 
禁止されていてもどうしても上陸したい・・・。
なぜ私が沓島に執着するのか。
それは、一つは名前が「くつ」だから。
そしてもう一つは、そこに回帰熱ボレリアがいるからであります。
沓島は太古より舞鶴の地域の人々の信仰の対象であり、不可侵の土地であったとのことですが、ここに足を踏み入れた者は原因不明の熱病に襲われていたとのことです。
そんな幻の地、沓島の回帰熱に関する報告をご存知でしょうか。
 
Relapsing Fever Spirochete in Seabird Tick, Japan
Emerg Infect Dis. Sep 2009; 15(9): 1528–1530.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2819885/
 
これまでに全く知られていない新種の回帰熱が沓島のダニから分離されたという、高野先生、川端先生らによる2009年のEIDに掲載された衝撃的な報告です。
この日本に、世界中のまだ誰も罹患してことのない種類の回帰熱が存在する・・・。
それも、人類が足を踏み入れることのできない無人島で。
心震える話ではないでしょうか。
ロマン溢れる話ではないでしょうか。
 
まだヒトの感染例は正式には報告されておらず(もしかしたら伝承されている熱病が回帰熱なのかもしれませんが)、少なくとも回帰熱ボレリアを持ったダニが存在することは間違いないようです。
私がこの話を初めて川端先生から伺ったのは今年の2月5日、川端先生に当院にお越しいただき回帰熱のご講演をしていただいたときでした。
その話を聞き、何としてでも沓島に行きたいと思いました。
しかし、上陸が禁止されている島であり、一般市民がおいそれと入れる場所ではありません。
ここはやはり川端先生にお供するしかないッ!
 
最後にダニが捕獲されたのは2008年ですから、すでに6年の月日が流れています。
そろそろ再調査を行うべきであろうと思っていた矢先!
沓島のダニの再調査が行われることになったのであります!!
ダニーズ戸山支部部長 兼 国立感染症研究所 細菌第一部第4室長の川端先生が沓島に行くという情報は前々から掴んでおりました。
私もダニーズとしてダニ採取の経験は積んでいます。決して邪魔にはならないはずッ!
もし決行されるのであればぜひ同行させていただきたいと部長にお伝えしていたダニーズ戸山支部 一般部員の私でありますが、その日は突然に訪れました。
 
20140923_210155
 
なんと前日に突然の沓島上陸作戦決行の連絡が!
え・・・明日行くの!?
しかしそこに少しでも躊躇してはいけない!
若い先生方には、この「忽那先生も行きますか?」と打診されて、「なぬー!では行きます」と1分以内に返事するこの瞬発力を大事にしてほしいと思います。
見る前に跳べというやつです。
川端先生に「ヘルメットと革手袋、登山靴とカッパ持参で来てください、15mほどの直上ロッククライミングがあります」というご連絡があったのがやや気になりましたが、とりあえず道具だけは揃えました(というか妻に揃えてもらいました)。
なんでそんな道具がいるんだろうなあ・・・。
 
翌日の朝、私は朝4時半に起床し朝5時に光が丘駅の地下鉄に乗車、そして8時40分には敦賀駅に到着し川端先生と合流、さらにそこからレンタカーで舞鶴市に移動したのでありました。
舞鶴市から沓島へと出港する地点である「ととのいえ」へと辿り着き、今回の我々の沓島上陸の手助けをしてくださる、日本野鳥の会のK先生とI先生に合流しました。
大変ありがたい、そして頼もしいお二人です。
お二人は定期的に沓島で野鳥の観察をされている、沓島のプロといっても過言ではないお二人なのであります。
ちなみにお二人とも普段は学校の先生をされております。教科は予想通り理科でした。
 
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お二人に挨拶を済ませ、予め確保していた漁船に乗り込み、沓島へと向かいます。
ちょっとスケール感が前回のダニツアーと違うなあと思いつつ、流れに身を任せる忽那。
 
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船に揺られること約30分、我々は沓島へと辿り着いたのでした。
ちなみに外観が「クツ」っぽいから「くつじま」というそうです。確かにスニーカーっぽいです。
これを見て分かる通り、四方が断崖絶壁であり上陸のためにはまず崖をよじ登る必要があります。
 
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沓島に到着するや否や断崖絶壁を登る我々。
足を滑らせたらただでは済まない難所。
ちょっと場違いなところに来てしまった感が隠せない忽那。つーか死ぬんじゃないかオレ。
 
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上陸して最初の休憩地点からの景色。確かに綺麗ではあるものの、やはり死の予感を感じずにはいられない私でありました。
 
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15Mの急傾斜を、ロープを頼りによじ登ります。
忽那は死に物狂いで登ったので写真はこれしかありませんが、マジで危険です。良い子はマネすんなよ。
ロープを登った後も、死の予感をいっぱいに感じつつ断崖絶壁を横目に足場の悪い道無き道を歩きます。
足場がゆるゆるで、大丈夫だと思って踏んだ岩が無情にも崖を転がり落ちていくわけですがK先生が「落石〜!」と叫び「って言っても無人島なんだから下には誰もいないんだけどね☆」と自分で突っ込む無人島ジョークに顔をひきつらせながら、我々は一歩ずつ進んでいきます。
 
そしてようやく辿り着いたダニスポット。
海鳥たちの鳥の巣穴がたくさんあるこの場所に、我々の目的のダニもいるのであります。
 
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ここにたくさんの鳥の巣穴があり、そこに目的のダニが生息するのであります。
待たせたな、ダニ!
 
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こういう巣穴を優しくかき分け、土を取り出します。
 
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取り出した砂を、ザルですくってダニがいないか確認します。
実に繊細な作業です。
 
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もちろんダニはいました。
この写真の真ん中で白く輝くダニがそうです。日光の関係でこんな色ですが、実際は黒っぽい色です。
 
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巣穴の砂をほじくっていると、ときどき中にいるひな鳥が見つかりました。
ギザカワユス!
 
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大量とはいかなかったものの、無事にダニをゲットし、我々は今回のダニ旅行の目的を達成したのでした。
 
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ダニとの戦いを終えたダニファイター忽那。
「いやー来るときに新幹線でビール飲んでたらマジで死んでたな」と安堵の表情。
生きていることを実感できた一日でした。
なかなか臨床医だと体験できない、スペシャルな経験でした。
  
ちなみにこちらが今回ゲットしたダニ、Carios sp.であります。
川端先生から写真をいただきました。
テラキモス!
 
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最後に、我々は舞鶴市教育委員会に許可をいただいた上で、川端先生、そして沓島の案内人K先生とI先生による先導の元上陸しております。
遊んでいるように見えるかもしれませんが、これはれっきとした疫学調査です。
安易にダニを取りに行こうとするとホントに危険ですのでマネしないでください。
まあ誰もしないと思いますが。

それでは最後に、ダニーズ戸山支部のテーマソング、ミッシェル・ガン・エレファントの「Danny Go」でお別れです。
 

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