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2013年1月14日 (月)

血液培養からグラム陽性桿菌が検出されたシリーズ①解答編

忽那です。

前回の血液培養からグラム陽性桿菌が検出されたアレですが、同定結果は・・・
 
Abiotrophia defectiva
 
というグラム陽性球菌でした。
血液培養のグラム染色ではグラム陽性桿菌に見えたのに、同定結果はグラム陽性球菌であったという、まあ知っておくと役立つことがあるかもしれない事例です。
AbiotrophiaはNVS(Nutritionally variant Streptococcus)に属するグラム陽性球菌です。
口腔内の常在菌で感染性心内膜炎の他にも、primary bacteremia、眼感染症、膵膿瘍、人工関節感染症などの報告があります。
栄養要求性が高いため血液寒天培地には発育せず、チョコレート寒天培地には発育します。
血液培養でも陽性になりますが、栄養が十分ではないため陽性桿菌のように見えるようです。
いただいたコメントにも「真菌ではないか」というご意見がありましたが、確かに真菌に見間違えるような形態をしているので注意が必要です。
チョコレート寒天培地に生えたコロニーを塗抹してグラム染色するとグラム陽性球菌に見えます。
 
DCCのH川先生が「NVSはStreptococcusEnterococcusの中間のような性格の菌である」ということをおっしゃっていました。
臨床で分離されたNVSのうち33〜67%はペニシリンに対するMICが0.25-2μg/mlであり、中には4μg/mlという株もみられたと報告されています(Antimicrobial susceptibilities of invasive pediatric Abiotrophia and Granulicatella isolates. J Clin Microbiol. 2004;42:4323-4326.)。
またNVSはEnterococcusのようなtolerance(最小殺菌濃度MBCが最小発育阻止濃度MICよりも32倍以上)がペニシリンとバンコマイシンに対してみられるそうです(Nutritionally variant streptococci. Clin. Microbiol. Rev. 1991, 4(2):184.)。
 
感染性心内膜炎の際にはGMを併用することがガイドラインでも推奨されていますが、それでも治療効果が十分に得られないことが多いようです。
NVSによるIE49例とその他の口腔内常在菌によるIE130例の予後を比較した研究では、NVSによるIEの方が死亡率が高く(14% vs 5%)、塞栓症状も多く(33% vs 11%)、外科的治療が必要になる症例も高かった(33% vs 18%)と報告されています(Streptococcal endocarditis: The viridans and β-hemolytic streptococci. In: Kaye D, ed. Infective Endocarditis. 2nd ed. New York: Raven Press; 1992:191-208.)。
また治療失敗や再発率も非常に高いようです(Endocarditis due to nutritionally deficient streptococci: Therapeutic dilemma. Rev Infect Dis. 1987;9: 908-916.)。
 
ということで、IEの起炎菌としてときどきみられる菌ですので、感染性心内膜炎の症例で血液培養陽性までの時間が遅い場合は頭の片隅にNVSを置いておくと良いかもしれません。

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