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2013年1月 2日 (水)

キノロンはマラリアに効くのか

国際医療センターの忽那です。
本年もID CONFERENCEをどうぞよろしくお願いいたします。
 
忽那の2013年の「染め初め」はギムザ染色でした。
ところ変われば染色も変わる・・・奈良ではグラム染色一辺倒だった忽那も、都会の色(ギムザ色)に染まりつつあるということでしょうか・・・(しばし感傷に浸る)。

 
002
 
さて、最近semi-immuneと思われる方の熱帯熱マラリアの症例を経験したんですが、前医でキノロンしか投与されていないのに、前医初診時(キノロン投与前)よりも当院受診時(キノロン投与後)の寄生率が明らかに少なかったんですよね。
semi-immuneだからそんなこともあるのかな〜という気もしたんですが、リングが壊れているマラリア原虫もチラホラみられました。
これってまさか・・・キノロンがマラリアに効いているのでは・・・?
そういえば奈良に移られたF先生が「キノロンもちょっと効くで〜」とおっしゃっていたような・・・。
クリンダマイシンとかドキシサイクリンとかアジスロマイシンがマラリアにちょい効きするのは知られていることですが、キノロンもちょっと効くのか・・・。
 
というわけで、マラリア原虫に対するキノロンの効果について検討した研究を調べてみたんですが、PubMedで「malaria quinolone」で検索すると90くらいの文献がヒットして、意外と注目されている話題のようです。
 
In vitro activities of 25 quinolones and fluoroquinolones against liver and blood stage Plasmodium spp.
Antimicrob Agents Chemother. 2003 Aug;47(8):2636-9.
 
例えばこの研究によると、in vitroで様々な種類のキノロンがマラリアの発育を阻害したとのことです。
「キノロンはマラリアの治療薬となる可能性を秘めている!」という結論のようです。
in vivoでもチョロッとは効くんじゃないでしょうか。
まあだからと言ってマラリアの治療に今のキノロンが使えるわけではないので、熱帯熱マラリアにクラビット単剤で治療などということは決して行なってはいけませんが(結核と同じですね)、いずれは超効くキノロンが開発される可能性はありそうです。
皆さまの「オレもキノロンがちょい効きした熱帯熱マラリアの経験があるぜ!」という体験談を募集しております。

2012年12月31日 (月)

パロモマイシンは本当に必要なのか

忽那@国際医療センターDCCです。
先日腸管アメーバ症の治療薬パロモマイシンが承認されました。
 
■腸管アメーバ症治療剤「アメパロモカプセル250mg」の承認取得

http://www.pfizer.co.jp/pfizer/company/press/2012/2012_12_25_03.html

アメーバにパロモマイシンでアメパロモということでしょうか。
安易ですが、なかなかキャッチャーでいい名前だと思います。
覚えやすいのが一番です。
 
しかし、パロモマイシンは本当に必要な薬なのか!!
そのような熱い議論がNCGMで巻き起こっており大変勉強になりましたのでご紹介させていただきます。
 
まず、赤痢アメーバ症はEntamoeba histolyticaによる感染症でありますが、Entamoeba histolyticaは栄養体とシストの2つの形態を取ります。
糞口感染(汚染された食べ物や水、またはoral sex)でシストが腸管内に入り、シストが、栄養体になると腸管粘膜に侵入し大腸炎や肝膿瘍を起こします。
赤痢アメーバ症の治療薬であるメトロニダゾールは栄養体には有効ですがシストには無効であるため、メトロニダゾールによる治療の後にLuminal Agentと呼ばれるパロモマイシンなどの薬剤で腸管内に残ったシストを駆除する、というわけです。
 
Amebiasis_lifecycle
http://www.cdc.gov/parasites/amebiasis/より
 
パロモマイシンを投与する目的は大きく2つにわかれます。
一つは患者自身の再発を防ぐこと、もう一つは周囲への感染を防ぐことです。
しかし、ACC(AIDS Clinical Center)のW先生らはこのパロモマイシンの有効性について疑問を呈しています。
つまり、再発を防ぐこともないし、周囲への感染についてもあまり影響がないのではないかと。
 
Irusenらは36症例の赤痢アメーバ肝膿瘍で20例がメトロニダゾール治療後にシスト残存し、シスト駆除をしなかった20例中3例が侵襲性病変を再発したと報告しています(Clin Infect Dis. 1992 Apr;14(4):889-93.)。
この結果を持って一般的に「シスト駆除をすべし!」とされていますが、本研究ではシスト駆除群での再発率について言及されておらず、本研究は南アフリカで行われており再感染のリスクが非常に高い地域であることから、シスト非駆除群の再発例3例も再発ではなく再感染ではないかというのがW先生らの意見です。
W先生らは赤痢アメーバ症に罹患したHIV陽性のMSM患者170名について検討しており、シスト駆除あり群と駆除なし群とで比較すると、両群とも5年間で15%程度であり再発率に差がなかったと報告しています(PLoS Negl Trop Dis. 2011 Sep;5(9):e1318.)。
 
Cyst
 
 
また本研究では新規梅毒の発症率(→リスク行為)と再発が関連しており、これら再発の大部分が再感染ではないかと考えられる、と結論付けられています。
大変興味深いですね。
もう一点の周囲への感染ですが、アメーバのシストを保菌している患者の家族で発症する人はほとんどおらず、oral sexなどの濃厚接触をしなければ感染することはないだろうと言われているそうです。
また、Entamoeba histolyticaに感染しても大部分は不顕性感染のキャリアーになり発症する人は1〜2割程度とされています。
したがって、発症者の数倍はシストのキャリアーの人がいるわけで、発症者だけをシスト駆除しても他者への再感染を予防することはできない、というわけです(もちろん全く無意味というわけではありませんが)。
というわけで、パロモマイシンは必ずしも必要ではないのではないか、というのがW先生らの結論だそうです。
Lancet IDのMSMにおける赤痢アメーバ症についてのレビューでもW先生らの文献を引用して「シスト駆除についてはcontroversialである」と書かれています。(Lancet Infect Dis. 2012 Sep;12(9):729-36.)。
 
しかし、MSMのグループほどシストキャリアが多くはないであろうheterosexualの集団でも同じ結果となるのかどうかは別個に検討が必要であり、現時点ではMSMではない(例えば旅行者などの)赤痢アメーバ症などではシスト駆除を行う、というのが一般的なプラクティスになるかと思われます。

闘魂外来@阪南市民病院

忽那@国際医療センターDCCです。
皆さま、本年も大変お世話になりました。
東京に生活の場を移してんやわんやの1年でしたが、お陰様でなんとか無事に1年を過ごすことができました。
1年の締めくくりとして、阪南市民病院での闘魂外来に参加させていただきました。
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徳田安春先生、山中克郎先生、そして我らが志水太郎先生という錚々たるメンバーにこっそり紛れて医学生の指導をしてきました。
感染性腸炎などの感染症が多かったので、まあそれなりにお役に立てたのかもしれません。
北和也先生をはじめとした阪南市民病院のスタッフの皆さま、参加してくれた医学生の皆さん、ありがとうございました。
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1年前に徳田先生に初めてお会いしたときにシカテントレーナーにしていただいたサインが薄くなってきていたので、上からなぞっていただき改めて闘魂を注入していただきました。
このトレーナーを着ているときに「すいません、徳田さん・・・」と声をかけられたことがあります。確かに道端でこの服を着ている人が歩いていたら、このヒトの名前は徳田さんだろう、と考えるのが自然ですね。
来年も頑張ります。

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