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2012年2月10日 (金)

腸球菌の「アミノグリコシド高度耐性」の定義と耐性遺伝子の関係

腸球菌の薬剤耐性遺伝子解析が進み,ゲンタマイシンの高度耐性には様々な原因遺伝子が関わっていることが明らかになってきた.最も頻度の高い原因遺伝子であるaac(6’)-Ie-aph(2”)-Iaを保有する株はゲンタマイシン,トブラマイシン,カナマイシン,アミカシンなどに耐性を示す一方,ストレプトマイシンには感受性である .一方30Sリボソームサブユニットの変異やstreptomycin adenylyltransferaseを有する株はストレプトマイシンの高度耐性を示す.その他,アミノグリコシド修飾酵素の一つであるaph(2”)-Icを持つ腸球菌はゲンタマイシンのMIC256384µ/gmL500µg/mL以下であるが,ゲンタマイシン併用による相乗効果は期待できない .さらに稀ではあるがゲンタマイシンのMIC816µg/mLにも関わらずゲンタマイシン併用の相乗効果が期待できない株なども報告されている .このような腸球菌のアミノグリコシド系薬の耐性機序の多様化に伴い,現在の高度耐性の有無のスクリーニング方法の見直しが必要になる可能性もある.今後も引き続き検討が必要である.

 

2012年2月 9日 (木)

腸球菌IEに対するアミノグリコシド系薬併用のエビデンスはあるのか?

アメリカ心臓協会(American Heart Association, AHA)による感染性心内膜炎のガイドラインでは,ペニシリン感受性腸球菌による感染性心内膜炎の場合,ゲンタマイシンの高度耐性がなければゲンタマイシンの併用を推奨している1.またゲンタマイシン高度耐性の場合はストレプトマイシン高度耐性の有無を調べ,高度耐性でなければストレプトマイシンを併用することを推奨している.これらの勧告の推奨度はIAとなっているが,実はこれらの勧告の根拠となる質の高い臨床研究は存在しない . 

ペニシリンGやアンピシリンは腸球菌に静菌的に働き,殺菌作用を示さない.そこで,ストレプトマイシンやゲンタマイシンなどのアミノグリコシド系薬を併用した方が有効性が高いことが1970年代~1980年代に主に動物モデルで示された .その後,アミノグリコシド系薬に高度耐性を示す腸球菌が発見され,それらの腸球菌に対してはペニシリン系薬とアミノグリコシド系薬の相乗効果が見られないことが分かった .上記ガイドラインの推奨は,臨床研究によるエビデンスというよりも,主にこれらの動物実験に基づいて実際に現在まで行われてきたという「実際のプラクティス」に基づくものであり,2012年に出された英国化学療法学会の感染性心内膜炎のガイドラインでもそう明記されている 

一方で,同じガイドラインでは「ゲンタマイシンであれば1mg/kg12回で多くの症例で十分な濃度を達成できる」,「ゲンタマイシンの開始が遅れると予後が悪くなるといったデータがないので,高度耐性の有無の結果が出てから開始するかどうか決めれば良い」と記載されている.

Olaisonらはスェーデンでの5年間の前向き研究で93例の腸球菌性感染性心内膜炎症例の検討で,81%で臨床的治癒が得られたが,それらの症例に対して併用投与されたアミノグリコシド系薬の平均投与期間が15日間であったことから,アミノグリコシド系薬の併用は,従来ガイドラインで推奨されているような「全治療期間」の併用ではなく,23週間に短縮しても問題ないとしている 

また,併用する場合のアミノグリコシド系薬の用法や用量についても,多くのガイドラインでは8時間毎の分割投与が推奨されているが,これについてもエビデンスがあるわけではない.Beraudらは,腸球菌性心内膜炎に対し,フランスでは分割投与する医師と11回で投与する医師はほぼ同数であるというアンケート結果を報告している 8時間毎の分割投与の方が11回投与よりも有効である,というデータはなく,むしろ11回投与の有用性が指摘されていなかった頃の用法・用量が引き続き使用されているのが現状である.

(続くかも)

腸球菌の「アミノグリコシド高度耐性」の定義は何か?

 腸球菌属 Enterococcus spp. は,主に消化管に常在するグラム陽性球菌である.1980年代まではD群連鎖球菌として分類されていたが,様々な条件での増殖性や抗菌薬の感受性などの違いから,いわゆる連鎖球菌属とは異なる性質を示す.

 腸球菌はアミノグリコシド系薬の細胞壁透過性が低いことから内因性に低レベルの耐性を示し,またペニシリン系薬やセファロスポリン系薬にはpenicillin-binding proteinPBP)の親和性の低下のために比較的高いMICを示す.

 米国Clinical and Laboratory Standard InstituteCLSI)は,ディスク拡散法,微量液体希釈法,寒天平板希釈法の3方法でゲンタマイシン,ストレプトマイシンそれぞれの高度耐性の検査法を規定している.例えば微量液体希釈法でゲンタマイシンなら>500µg/mL,ストレプトマイシンなら>1000µg/mLで高度耐性と報告される.一方,ヨーロッパのEuropean Committee on Antimicrobial Susceptibility TestingEUCAST)では,ゲンタマイシンのMIC>128µg/mL,ストレプトマイシンのMIC>512µg/mLを高度耐性と規定しており,CLSIEUCASTの定義は異なっている.

(続く)

2012年2月 5日 (日)

中心静脈カテーテル挿入時のクロルヘキシジン濃度

久々の管理人です.

福岡で開催された環境感染学会に参加してきました.

いくつかお仕事があったのですが,そのうちの一つは初日の朝イチで開催されたシンポジウム2「血管内留置カテーテル関連感染予防のためのCDCガイドラインをめぐり」での「生体消毒関連の諸問題」という発表でした.

現在,同ガイドラインでは,中心静脈カテーテル挿入時の皮膚消毒として,「>0.5% chlorhexidine preparation with alcohol」を推奨しています.でもこの「>0.5%」という濃度には,実は確たる根拠はないんですね.

昨年秋のClinical Infectious Diseasesへのletterでずばりこの根拠について質問した人がいるんですが,その返答は「0.5% chlorhexidine単独製剤と10% povidone iodineの効果は同等だった」というもので,これはchlorhexidine単独であれば確かに「だから0.5%ではダメで>0.5%が良い」と言ってもいいかもしれませんが,ガイドラインでの推奨は「with alcohol」ですから,0.5% chlorhexidine with alcoholと10% povidone iodineを比較してもらわねば困ります.

なに細かいこと言ってるの,と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが,基本的に薬は必要最低限が良いでしょうから,やはり専門家はこだわる必要があります.0.5%と1%では,副反応の発生率が違うかもしれないじゃないですか!

ただ,「アメリカにはそもそもchlorhexidineが2%未満の製品はないんだよ」という意見もあることから,現在も,そして未来も基本的に感染対策関係のstudyは「製品ありき」のものになることは間違いないでしょう.そういう意味では,私たちにできることは,「限られている」し,さらに「ガイドライン」が果たせる役割は,あるいは「ガイドライン」に期待できることは,縮小していくのかもしれません.

ちなみに,日本では,上記ガイドラインの推奨を満たす製品として,ヘキザックAL1%綿棒などがあります.

発表では,そのほかに,クロルヘキシジンドレッシングおよびクロルヘキシジンbathingについても言及しましたが,またの機会に…

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