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2012年9月 2日 (日)

唾液のような喀痰をリジェクトするには

本日,奈良県の研究会で市立堺病院の藤本卓司先生によるご講演を初めて拝聴しました.一例一例,グラム染色に基づいて選ばれた抗菌薬が,ガイドラインによって選ばれるであろう抗菌薬とどれほど異なるかをお示しになり,大変勉強になりました.

質疑応答で,「唾液のような喀痰は,検査できないとお返ししても良いのでしょうか」という質問がありました.最近,仕事が多すぎてどんどん物事を忘れていくのですが,久しぶりにこの質問をお聞きして「あー,これも取り組まないといけない問題だったな~」と思い出しました.

確かに,

「質の悪い喀痰は,培養する意義が乏しい」
「米国では,質の悪い喀痰は,それ以上検査せずに reject している」

と聞きます.一方で,臨床医の言い分は

「言ってることは分かるけど,とりあえず今回はこれしか取れなかったんだ.もしこれから何か培養されたら,患者さんのマネージメントに役立てうる可能性があるから,とりあえずやってほしい」

みたいなものではないでしょうか.

たぶん,この議論は平行線だと思います.そして,微生物検査技師から言えば,「本当は検査したくないけど,医者にそんなこと言えない」というところでしょうか.

この問題は,科学的に,そして民主的に解決するべきだと思います.「想い」や「伝聞」で物事を決めるべきではないでしょう.プロセスとしては,

・過去の(山ほどある)質不良呼吸器検体をリストアップ
・どのような微生物が培養されたかチェック
・その結果に基づいて,マネジメントがどう変わり,患者の予後がどう変わったかをチェック
・コストをチェック

した上で,本当に質不良呼吸器検体が「どのくらい自施設で役に立たないのか(場合によっては悪影響なのか)」を示し,院内感染対策委員会などで議論し,「病院として」質不良呼吸器検体を「リジェクトする権限と責任を微生物検査室に持たせる」ことが必要だと思います.
そうなればあとは臨床医から何を言われようが,「病院として決まってる」,「こうしいないと病院としての規則に逆らうことになる」,「俺たちも拒否したくて拒否してるんじゃない」,「文句があるのなら院長に言ってくれ」で済みます.

想いがあっても,それを本当に実現したいのなら,想いを熱く語るだけでは不十分で,「説得力」が必要があります.説得力を持たせるのが「科学」だと思います.

「科学」と「民主」.キーワードですね.ところで,ウチで誰か,やってくれないでしょうか?諸病院に先駆けて,role model になれると思うのですが….

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