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2012年6月27日 (水)

Prit Sign:グラム染色でS. aureusとCNSは鑑別可能か

くつな@NCGMです。
いきなりですが、このグラム染色の菌はなんでしょうか?

Gpc

グラム陽性球菌で、しかもStaphylococcus属であることは皆さんお分かりになると思います。
Staphylococcusの際に問題になるのは言うまでもなく「コアグラーゼ陽性であるS. aureusか、コアグラーゼ陰性Staphylococcus(CNS)であるか」です。

S. aureusであればコンタミよりも真の起炎菌である可能性が高く、CNSであればコンタミのことが多い
S. aureusの方が病原性が強く、IEや骨髄炎などの合併症を起こしやすい。
S. aureusの方がより長期の治療期間が必要となる

など、臨床的に治療方針が大きく異なってきますのでS. aureusであるかCNSであるかの判断は臨床上非常に重要です。
しかし、血液培養が陽性になった時点でグラム染色をしても分かるのはせいぜいStaphylococcus属であることまでで、S. aureusかCNSかが最終的に分かるのは血液培養が陽性となって1日ほどかかります。

もし血液培養が陽性になった時点でどちらかが判明すれば、主治医が不安な夜を過ごす日数が1日減るのになあ・・・と誰もが思われると思います。

さて、国際感染症センター(DCC)では毎朝血液培養陽性の症例をチェックしており陽性ボトルのグラム染色像も見ているのですが、やはり全体としてグラム陽性球菌が多く、特にクラスター形成しているStaphylococcusが半数以上を占めています。
で、毎日顕微鏡を見てるとグラム陽性球菌の中でも粒が大きいものと小さいものがいることに気づきます。
さらに培養結果と照らしあわせていくと「プリっとして大きいのはS. aureusのことが多いかな・・・」とか「小粒なのはCNSっぽい」とかなんとなく相関があることに気づきます。
当院DCCでは血液培養ボトルのグラム染色において、グラム陽性球菌の粒が大きくてプリっとしている所見を「プリっとサイン Prit Sign」と呼んでいます。
プリっとしているGPCを見ると「プリっとサイン陽性!」、小粒のGPCを見ると「ネガプリ(Prit Sign陰性)だな・・・」とか言って盛り上がっています。
これがまた、けっこう当たるんです。
ボスのO曲先生に教えていただいたのですが、実際にこのPrit Singを用いて血液培養のグラム染色でS. aureusかCNSかが鑑別できるという日本からの報告があります。

血液培養液中のブドウ球菌属の塗抹グラム染色による形態学的鑑別
感染症学雑誌. 2008 Nov;82(6):656-7.

これによりますと、Bactecを用いて培養した場合に
S. aureus:好気ボトルでツブツブがデカい(>1μm)。クラスターしまくり(密集している)。立体的に見える。
CNS:ツブツブが小さい(<1μm)。クラスター度低し(密集せずバラバラ)。平面的に見える。

だそうです。
んなーる。
ちなみにこの鑑別法を用いてS. aureusと判断した場合の陽性尤度比はなんと11.4!
これはかなり有用な鑑別法かもしれません。
ちなみに国立国際医療研究センターも血液培養はBactecを使っています。

同様に、BacT/Alertを用いて培養した場合にも鑑別可能である、という報告も海外の文献でありました。
Rapid identification of Staphylococcus aureus from BacT/ALERT blood culture bottles by direct Gram stain characteristics.
J Clin Pathol. 2004 Feb;57(2):199-201.

この文献では、同様の鑑別法で感度89%・特異度98%という驚異的な結果が報告されています。
これはマジで使えるかもしれない。

さっそく、この鑑別法を意識してグラム染色を見てみましょう。
まずは好気ボトルのS. aureusです。

P1200338
■好気ボトルのS. aureus

うーん、確かにツブツブが大きくてボコボコ固まっているような・・・
もう少し拡大して見てみると・・・

120627902
■好気ボトルのS. aureus

デカい!なんかプリっとしてる!
Prit Sign陽性!すなわちポジプリであります。
また立体的に見えるという所見については「ピントが合わせにくい」と言い換えることができるかもしれません。確かにS. aureusだとバックの赤血球にピントを合わせようとすると細菌にピントが合わず、細菌にピントを合わせようとすると赤血球がブレて見えることが多いです。

Untitled1

このように、S. aureusの場合好気ボトルでのPrit Signが陽性となり、クラスター度が高く立体的に見えるという所見が観察されます。
ツブツブがでかくて、密集して襲い掛かってくる・・・いかにも病原性が強そうです。恐るべし、S. aureusであります。

次に、嫌気ボトルでのS. aureusを見てみます。
P1200346
■嫌気ボトルのS. aureus

ふむ。
なんか嫌気ボトルで見ると元気がないように見えるのは僕だけでしょうか。
もう少し拡大して見てみます。
120627897
■嫌気ボトルのS. aureus

ボコボコ固まってはいますが、ツブツブが好気ボトルほど大きくはありません。
やはりちょっと元気がなさそうであり、そこはかとなく「アウェイ感」が漂ってますね。
S. aureusにとっては好気ボトルがホームで嫌気ボトルがアウェイ、と覚えておきましょう。

では、いよいよCNSと比較してみます。
P1200355
■CNS

うむ、クラスター度低し。
みんなバラバラです。
こいつらチームワークがなっちゃいないぜ。
そんなんで人間に勝てると思ってんのか、CNS!?

と軽く挑発したところで、またしても拡大してみてみます。
120627904
■CNS

うーん、小さい。
小粒であります。
結束力がない上に粒も小さい。
CNSの病原性の低さを垣間見ることができます(科学的な根拠なし)。

これだけじゃちょっと納得いなかい、という方もいらっしゃると思いますので、S. aureusとCNSとを比較してみました(クリックで拡大します)。

Prit
S. aureus(ポジプリ)とCNS(ネガプリ)の比較

どうですか。
大きさが全然違うでしょう。
赤血球の大きさはほぼ同じなのに、細菌の大きさが全然違う!
このようにポジプリ(Prit Sign陽性)であればS. aureus、ネガプリ(Prit Sign陰性)であればCNSの可能性が高くなります。
血液培養が2セット採取されていれば両者の鑑別は比較的簡単かもしれませんが、1セットしか出されていない場合にこのPrit Signは両者を鑑別するために大いに役立ちます。
皆さんもこれからは「血液培養でブドウ球菌様のグラム陽性球菌が検出されました!」と細菌検査室から報告があったら「で、見た目はプリっとしてますか?」と聞いてみてはいかがでしょうか。

ただし、実際にここまではっきり違って見えることもあれば、微妙な大きさのこともけっこうあります。
CNSの1.5倍くらいに見えることをDCCでは半分プリっとサイン(半プリ、ややプリ、セミプリなどの言い方あり)と呼んでいますが、この場合の陽性的中率は低い印象です。
また、先ほどお示しした2つの文献を読んでいただければ分かりますが、Bactecでは35検体、BacT/Alertでは150検体での検討の結果ですのでn数が少なく、今後さらなる検討が必要と思われます。

というわけで、Prit Signの追試を目下計画中です。

※Prit Signという名称は国立国際医療研究センターの中のごく一部でしか使われないスラングですので、所属の施設で「Prit Signはどうですか?」と聞いても返事は虚しく闇に吸い込まれていきますのでご注意ください。

2012年6月24日 (日)

第5回 なんということのないカンファレンスのお知らせ

くつな@大東京です。
東京の街に出てきて相変わらず訳の分からないことばかり言っておりますが、本日は奈良の勉強会のお知らせです。
奈良の仲間たち主催のカンファレンスが開催されます。

5001

日時:7月4日(水)18時30分〜
場所:厳橿会館3F大ホール

この「なんということのないカンファレンス(通称ななかん)」は奈良県内の総合診療・感染症診療を盛り上げるべく昨年から始まった勉強会で、今回で5回目となります。
毎回50億人くらいが当カンファレンスに参加しており、奈良県民の恒例行事と化しています。
そのうち参加の際はHajiのように髄膜炎菌ワクチンの接種が義務化されるかもしれません。
それくらいの大イベントです。
立案者の一人であった僕が奈良からいなくなってからも何事もなかったかのように引き続いて開催されるわけですが、僕がいないところでななかんが開催されるのは全くもって良い気持ちがしませんので、僕も夏休みを取って奈良まで出かけて参加しようと思います。
奈良近郊にお住まいの方はぜひぜひご参加ください。

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