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2012年12月18日 (火)

抗菌薬ロック療法

国際医療センターDCCの忽那です。
 
「カテ抜いてください」って言うのは簡単ですが、「そんなこと言われても抜けないよ」っていう症例は多々ありますよね。
そのような場合の切り札としてのALT!
泥臭い治療ではありますが、主治医と患者の目線に立った思いやりのある治療ではないでしょうか。
まあ正直自分はあまり良い適応の症例に出会ったことがないのですが、本日、初めて抗菌薬ロック療法(ALT; Antibiotic Lock Therapy)を行いました。
復習としてIDSAガイドラインのALTについての記載を読んでみました。
 
Clinical practice guidelines for the diagnosis and management of intravascular catheter-infection: 2009 Update by the Infectious Diseases Society of America.
Clin Infect Dis. 2009 Jul 1;49(1):1-45
 
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Recommendation
 
68. 抗菌薬ロック療法は長期留置カテーテルでのCRBSIで出口部感染やトンネル感染の所見がなく、カテーテルを使い続けたい場合に適応となる(B-II)。
69. CRBSIでは、抗菌薬ロック療法単独で治療してはならない。全身の抗菌薬投与と組み合わせて7〜14日間投与すべきである(B-II)。
70. 抗菌薬ロックした液体は再挿入までに48時間を超えてはならない。外来患者の再挿入は、大腿カテーテルで24時間毎に行うことが好ましい(B-II)。しかし、血液透析を行なっている患者では透析が終わった後に抗菌薬ロックを行うべきである(B-II)。
71. 黄色ブドウ球菌、カンジダ属によるCRBSIでは、他に挿入する部位が残されていないなどの止むに止まれぬ事情がある状況以外では、抗菌薬ロックしカテーテルを維持するよりも、カテーテル抜去が推奨される(A-II)。
72. カテーテルから採取した血液培養から複数回CNSまたはグラム陰性桿菌が陽性となり、同時に末梢血から採取された血液培養が陰性であった場合、全身抗菌薬投与をせずに抗菌薬ロック療法を10〜14日間行うのみで良い(B-III)。
73. バンコマイシンは、病原微生物のMICの少なくとも1000倍以上の濃度が必要である(B-II)。
74. 現時点では、CRBSIにエタノールロック療法を推奨するにはデータが不十分である(C-III)。
 
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Evidence Summary
 
CRBSIに対する抗菌薬ロック療法は全身抗菌薬投与と組み合わせて行い、カテーテル内腔の病原微生物に感受性のある抗菌薬を高濃度に注入する。長期留置カテーテルを含むCRBSIに対し抗菌薬ロック療法を行わずにカテーテルを留置したまま全身抗菌薬治療のみを行った14の研究では、平均治療成功率は67%であった。成功率は感染部位(例:トンネル感染やポケット感染は治療に反応しにくい)や病原微生物(例:CNSは治療に反応しやすく、黄色ブドウ球菌はしにくい)によって様々である。カテーテルを抜去した場合よりもカテーテルを留置したままの方が点滴治療後の菌血症の再燃率は高い。これはバイオフィルム中の微生物を殺菌するのに十分な抗菌薬濃度が達成できないことによると思われる。バイオフィルム内の細菌を殺菌するためには抗菌薬の濃度は浮遊している細菌の殺菌濃度の100〜1000倍の濃度が必要である。長期留置カテーテルや埋込み型カテーテルの感染の大部分は内腔の感染であり、細菌の根絶はカテーテル内腔に高濃度の抗菌薬を満たし、数時間〜数日置いておくことで可能である。これを抗菌薬ロック療法という。長期留置カテーテルを含むCRBSIに対する抗菌薬ロック療法について検討した21の研究では、全身抗菌薬投与の有無に関わらず、カテーテルを抜去せずに済んだのは77%であった。92人の患者に対し抗菌薬ロック療法を行った2つの対照試験では、コントロール群の成功率が58%であったのに対し抗菌薬ロック療法群では75%であった。細菌感染症に比べ、カンジダ属によるCRBSIでは抗菌薬ロック療法で微生物を根絶するのがより困難である。黄色ブドウ球菌によるCRBSIに対する抗菌薬ロック療法について検討した最も規模の大きい研究では、約半分の症例で治療失敗がみられた。抗菌薬ロックとして用いる液体は、適切な抗菌薬濃度と50〜100単位のヘパリンまたは生食を含み、ルーメンを満たすのに十分な量(通常2〜5ml)が必要である。抗菌薬ロックされたカテーテル内腔の遠位側は時間とともに急速に濃度が低下していき、特に大腿カテーテルを留置している外来患者で顕著である。したがって、バンコマイシンの濃度はMIC90の11000倍以上を保つ必要があり(5mg/mlが望ましい)、抗菌薬ロック療法は遅くとも48時間毎には交換すべきである。
 
Alt
 
抗菌薬ロック療法を行う期間については研究によって異なるが(3〜30日)、ほとんどの研究の治療期間は2週間であった。バンコマイシン、セファゾリン、セフタジジムはヘパリンを含んだ液体中でも、25℃あるいは37℃の環境下で数日間安定していた。いくつかの抗菌薬はヘパリンと混合すると沈殿してしまう(濃度が高くなればなるほどできやすい)ため全ての抗菌薬がヘパリンと組み合わせることができるわけではない。表9の抗菌薬ロックの組成は沈殿することなく使用できる。
抗菌薬ロックの使用によって全身抗菌薬治療を省けるわけではない。しかし、血液培養が陰性となり、敗血症の徴候が改善すれば全身抗菌薬治療は経口治療に変更できることもある。吸収率の良い経口抗菌薬(フルオロキノロンやリネゾリドなど)と24〜48時間毎の抗菌薬ロック療法は外来患者のCNSによるCRBSIで行われる。
2週間以上留置されたカテーテルは外腔が感染しやすく、カテーテルを長期に留置された患者では外腔の感染所見も認められることがある。抗菌薬ロック療法はカテーテル外腔感染症には効果がない。
その他のロック療法も検討されている。小児のCRBSIに関する研究では70%エタノールによるロック療法が高い成功率であったと報告されている。
ときどき、カテーテルから採取した血液培養からCNSやグラム陰性桿菌が検出されるが同時に採取された末梢血からの血液培養では陰性である有症状患者がいる。このような患者ではカテーテル内腔に細菌がコロナイゼーションしていると考えられる。もしこのコロナイゼーションしているカテーテルが留置され続けた場合、本当のCRBSIへとなりうる。このようなカテーテルを抜去できない場合、全身抗菌薬治療をせずに抗菌薬ロック療法のみ行うこともある。

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コメント

いつも興味深い報告ありがとうございます。
抗菌薬ロック療法ですが、ロック療法中にどの程度使えるのか教えていただけませんか?
ガイドラインに引用されている報告(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16597634)ではロック療法中は透析以外には使用しなかったようです。治療中も高カロリー輸液や循環作動薬などを使いたい時に、大本のカテーテルが使えなければありがたみも半減するかもしれないと、泥臭い心持ちとなってしまいました。

おっしゃるとおり、ロック中の点滴って難しいですよね。
私の経験した症例は1日2回のVCM点滴に合わせてロックの中身を入れ替えていましたが。
点滴の回数が増えれば増えるほどロックの回数が増えるのでめんどくさくなります。

ヘパリンロックみたいに、バンコマイシンロックみたいな製剤を販売すればバカ売れするのではないでしょうか。
製薬会社の方、いかがでしょうか。

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