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2012年12月31日 (月)

パロモマイシンは本当に必要なのか

忽那@国際医療センターDCCです。
先日腸管アメーバ症の治療薬パロモマイシンが承認されました。
 
■腸管アメーバ症治療剤「アメパロモカプセル250mg」の承認取得

http://www.pfizer.co.jp/pfizer/company/press/2012/2012_12_25_03.html

アメーバにパロモマイシンでアメパロモということでしょうか。
安易ですが、なかなかキャッチャーでいい名前だと思います。
覚えやすいのが一番です。
 
しかし、パロモマイシンは本当に必要な薬なのか!!
そのような熱い議論がNCGMで巻き起こっており大変勉強になりましたのでご紹介させていただきます。
 
まず、赤痢アメーバ症はEntamoeba histolyticaによる感染症でありますが、Entamoeba histolyticaは栄養体とシストの2つの形態を取ります。
糞口感染(汚染された食べ物や水、またはoral sex)でシストが腸管内に入り、シストが、栄養体になると腸管粘膜に侵入し大腸炎や肝膿瘍を起こします。
赤痢アメーバ症の治療薬であるメトロニダゾールは栄養体には有効ですがシストには無効であるため、メトロニダゾールによる治療の後にLuminal Agentと呼ばれるパロモマイシンなどの薬剤で腸管内に残ったシストを駆除する、というわけです。
 
Amebiasis_lifecycle
http://www.cdc.gov/parasites/amebiasis/より
 
パロモマイシンを投与する目的は大きく2つにわかれます。
一つは患者自身の再発を防ぐこと、もう一つは周囲への感染を防ぐことです。
しかし、ACC(AIDS Clinical Center)のW先生らはこのパロモマイシンの有効性について疑問を呈しています。
つまり、再発を防ぐこともないし、周囲への感染についてもあまり影響がないのではないかと。
 
Irusenらは36症例の赤痢アメーバ肝膿瘍で20例がメトロニダゾール治療後にシスト残存し、シスト駆除をしなかった20例中3例が侵襲性病変を再発したと報告しています(Clin Infect Dis. 1992 Apr;14(4):889-93.)。
この結果を持って一般的に「シスト駆除をすべし!」とされていますが、本研究ではシスト駆除群での再発率について言及されておらず、本研究は南アフリカで行われており再感染のリスクが非常に高い地域であることから、シスト非駆除群の再発例3例も再発ではなく再感染ではないかというのがW先生らの意見です。
W先生らは赤痢アメーバ症に罹患したHIV陽性のMSM患者170名について検討しており、シスト駆除あり群と駆除なし群とで比較すると、両群とも5年間で15%程度であり再発率に差がなかったと報告しています(PLoS Negl Trop Dis. 2011 Sep;5(9):e1318.)。
 
Cyst
 
 
また本研究では新規梅毒の発症率(→リスク行為)と再発が関連しており、これら再発の大部分が再感染ではないかと考えられる、と結論付けられています。
大変興味深いですね。
もう一点の周囲への感染ですが、アメーバのシストを保菌している患者の家族で発症する人はほとんどおらず、oral sexなどの濃厚接触をしなければ感染することはないだろうと言われているそうです。
また、Entamoeba histolyticaに感染しても大部分は不顕性感染のキャリアーになり発症する人は1〜2割程度とされています。
したがって、発症者の数倍はシストのキャリアーの人がいるわけで、発症者だけをシスト駆除しても他者への再感染を予防することはできない、というわけです(もちろん全く無意味というわけではありませんが)。
というわけで、パロモマイシンは必ずしも必要ではないのではないか、というのがW先生らの結論だそうです。
Lancet IDのMSMにおける赤痢アメーバ症についてのレビューでもW先生らの文献を引用して「シスト駆除についてはcontroversialである」と書かれています。(Lancet Infect Dis. 2012 Sep;12(9):729-36.)。
 
しかし、MSMのグループほどシストキャリアが多くはないであろうheterosexualの集団でも同じ結果となるのかどうかは別個に検討が必要であり、現時点ではMSMではない(例えば旅行者などの)赤痢アメーバ症などではシスト駆除を行う、というのが一般的なプラクティスになるかと思われます。

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