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2012年9月17日 (月)

糖尿病足感染症(DFI)ガイドラインまとめ

クツナ@国立国際医療研究センターDCCです。
土地柄なのか、糖尿病足感染症(DFI)を診る機会が多い今日この頃ではございますが、当院の総合感染症コースのスーパーレジデント杉原淳先生がIDSAのガイドラインをサクっとまとめてくれました。
シェアして良いです、とのことなのでこちらにも貼らせていただきます。

2012 Infectious Diseases Society of America clinical practice guideline for the diagnosis and treatment of diabetic foot infections.
Clin Infect Dis. 2012 Jun;54(12):e132-73.

【1. 臨床診断とリスク因子】
Primary signs: 炎症の古典的兆候(発赤・腫脹・熱感・圧痛・疼痛)、化膿性分泌物
Secondary signs: 非化膿性分泌物、脆弱なor変色した肉芽腫組織、創周囲のトンネル形成、悪臭

・DFIの定義:以下の2項目以上をみたすもの
 ・局所の腫脹・硬結
 ・紅斑
 ・局所の圧痛または疼痛
 ・局所の熱感
 ・化膿性浸出液(濃い不透明の白色あるいは血性の分泌液)

<リスク因子>
ゾンデで骨まで到達する傷、30日以上持続する潰瘍、再発性の足潰瘍、外傷性足傷、患側の末梢血管病の存在、下肢切断の既往、保護的感覚の喪失、腎機能障害、裸足での歩行の既往

【2. DFIの重症度分類】
・ IDSA/IWGDF(DM footに関する国際ワーキンググループ)の分類  ・・・ 臨床的アウトカムに相関
・ DFI Wound Score ・・・ 定量的であり、研究に有用


臨床的特徴              PEDIS Grade  重症度分類(IDSA)
・ 感染兆候なし            1      感染なし(Uninfected)
・ 皮膚・皮下組織まで         2      軽症(Mild)
・ 紅斑>2cm or 皮下組織以下に達する
       +SIRS(-)        3      中等症(Moderate)
       +SIRS(+)        4      重症(Severe)

PEDIS: Perfusion, Extent/Size, Depth/Tissue loss, Infection, Sensation

【3. 微生物学的診断】
Do's
 ・ 創部の汚れをとり、デブリしたのちに、深部組織から生検かキュレッテージにより組織を採取
 ・ 膿性分泌物の穿刺液
 ・ 骨髄炎合併が疑われる場合は骨生検組織を採取

Don'ts
 ・ 臨床的に感染兆候のない創からの採取
 ・ デブリされていない創部からの採取
 ・ スワブによる採取

【4. 治療】

・ 軽症と大半の中等症は好気性GPCのカバーのみで十分
・ 重症例、慢性経過例では嫌気性菌、緑膿菌の関与が増える

<考えるべきポイント>
1) 感染はあるのか? ・・・  臨床的に感染を疑わない創部には抗菌薬を使わない
2) 感染が疑われる場合は以下を考慮する:
 a) MRSAのリスクが高いか?
   Yes ・・・ MRSAカバー(後述)
 b) 一ヶ月以内に抗菌薬投与歴があるか?
   Yes ・・・ 腸内細菌群のカバーを加える
   No  ・・・ GPCのみカバー
 c) 緑膿菌のリスクはあるか?
   Yes ・・・ 緑膿菌カバーを加える
 d) 重症度は?
   後述の重症度に沿ったレジメンを選択する


・ 1年以内のMRSA感染症・コロナイゼーションの既往
・ 地域のMRSA分離率が十分に高い
   軽症例の場合50%以上、中等症の場合30%以上で考慮
・ 重症で培養結果を待つ余裕がない場合

<緑膿菌に関して>
・ 緑膿菌の関与は意外と少ない(大半はnonpathogenic colonizer)
・ 欧米で緑膿菌が検出されるのは10%以下
・ たとえ検出されてもカバーせずに改善することが多い
・一方で以下の様な場合にはカバーを要する
  - 緑膿菌が頻回に検出される国 (引用は南米、インド?!)
  - 足を水にひたしたことがある  (??)
  - 緑膿菌非カバーで失敗した
  - 重症例

<偏性嫌気性菌に関して>
・ 多くの慢性で過去に治療歴のある症例、あるいは重症例で分離される
・ 以前考えられていたよりもcommonなようだ
・ 大半の軽症・中等症では主要な病原菌ではない
・ 十分にデブリされたDFIで嫌気カバーの必要性についてのエビデンスは乏しい

<重症度に沿った経験的治療薬の選択>
●・・・第一選択(太字)

・軽症例
MSSAカバー
 ● CEX      ・・・ 安価、QID
 ● AMPC/CVA ・・・ 比較的broad、嫌気カバー
 ・ MPIPC     ・・・ 安価、カバー狭い、QID
 ・ CLDM     ・・・ CA-MRSAに有効な場合もある、EM感受性のチェックとD-test、毒素産生抑制
 ・ LVFX      ・・・ QD、S. aureusにはsub optimal
MRSAカバー
 ・ DOXY     ・・・ 連鎖球菌活性に不安
 ・ TMP/SMX   ・・・ 同上

・中等症~重症例
MSSAカバー
 ● AMPC/SBT ・・・ 緑膿菌のリスクが高くなければ十分
 ● Ertapenem  ・・・ QD、広め、緑膿菌以外
 ● IPM/CS    ・・・ 超広域、必要な場合のみ、ESBL producerが考慮される場合
 ・ CFX      ・・・ 嫌気カバー
 ・ CTRX     ・・・ QD
 ・ LVFX     ・・・ QD、S. aureusにはsub optimal
 ・ MFLX     ・・・ QD、broad、嫌気カバー
 ・ Tigecycline  ・・・ MRSAに有効、超広域、嘔気・嘔吐、死亡例の注意喚起、Ertapenem+VCMに劣る(1RCTで)
 ・ LVFX+CLDM ・・・ S. aureusの重症例に対するCLDMのエビデンス少ない
MRSAカバー
 ● VCM      ・・・ MIC高いことがある
 ・ DAP      ・・・ QD、CKモニタリング
 ・ LZD      ・・・ 高い、2週以上で骨髄抑制
緑膿菌カバー
 ● PIPC/TAZ  ・・・ 緑膿菌は特殊な状況を除いてuncommon pathogen
 ・ その他のantipseudomonal drugs

<治療期間>
 ・重症度に基づいて判断
 ・骨への進展がなく、治療への反応が良好な場合: 一般的には1-2週間で十分
 ・決められた期間の投与を行うのではなく、感染の臨床的兆候が消失すれば終了可能
 ・創の治癒まで続けることを支持するエビデンスはない

<抗菌薬の投与経路、入院の必要性、投与期間の目安>
○ 軟部組織感染のみ
 ・軽症    局所 or 経口            外来     1-2週、長くて4週
 ・中等症   経口 or 最初は経静脈        外来/入院   1-3週
 ・重症    経静脈、可能ならば経口スイッチ   入院     2-4週

○ 骨髄炎・関節炎合併
 ・感染組織の残存なし     経静脈 or 経口         ・・・      2-5日
 ・軟部組織感染残存      経静脈 or 経口         ・・・      1-3週
 ・骨髄炎残存(腐骨化なし)  経静脈、経口スイッチ考慮   ・・・      4-6週
 ・手術(-)or腐骨(+)        経静脈、経口スイッチ考慮   ・・・      3ヶ月以上


【5. 糖尿病性足骨髄炎(DFO)合併の診断】

<DFOを疑う所見>
・ 十分な血流がある患側で、適切な創ケア、除圧を行っているにもかかわらず潰瘍が6週間以上治らない場合
・ 骨の露出がある場合
・ 2cm以上の潰瘍面積
・ 3mm以上の深掘れ潰瘍
・ 過去のDM footの既往歴
・ 再発性or多発の潰瘍
・ 緊満した足趾(sausage toe)

<ゾンデ試験>
滅菌ゾンデで潰瘍面がどこまで深いかを探る→骨にあたれば骨髄炎合併を疑う
・ Pretest probabilityによる
   DFOを疑う場合に施行した場合は、陽性でrule inできる(特異度 高)、陰性でrule outできない(感度 低)
   DFOを疑わない場合に施行した場合は、陰性でrule outできる(感度 高)

<画像評価>
・単純Xp: DFOを疑う場合に推奨するが、感度・特異度ともに低いが、下記の目的で有用
  - 明らかな骨の異常(変性、溶解)の検索
  - 軟部組織のガス産生、体内異物の有無の確認
・MRI: 軟部組織の膿瘍が想定される場合、骨髄炎の可能性がはっきりしない場合に推奨
  感度 90%、特異度 79%
  創が骨へ到達していたり、単純Xpで骨浸潤が明らかな場合は診断目的では不要
・MRIが不可能な場合: 骨シンチと白血球シンチの組み合わせを考慮(診断精度80-85%)
・PET-CT・SPECT: 報告が少なく、コストパフォーマンスに優れない

<微生物学的検査>
・ S. aureusが最多、続いてS. epidermidis
・ GNRでは、E. coli, K. pneumoniae, Proteusが多く、次いでP. aeruginosa
・ 偏性嫌気性菌の検出感度は低いが、Peptostreptococcus, Peptococcus, Finegoldia magnaが多い

・ 骨組織培養が軟部組織培養よりも正確
・ 創部表面のスワブと骨組織培養で微生物が一致するのは50%未満
・ 深部の穿刺吸引軟部組織培養が骨組織培養の代替となるが、骨組織培養とはあまり一致しない
・ 一方で、開放創から侵襲的な骨培養を行う意味に関しては議論がある
  骨培養に沿って治療を行った場合とEmpiricに行った場合の治療成功率の差に関しては報告により異なる

<骨組織培養が推奨される場合>
最も推奨
 ・長期治療よりも早期の手術を正当化するための確定診断を患者または医療者が望む場合
 ・血液培養・創部培養の結果が耐性菌による骨髄炎のリスクが高いことを示唆する場合
 ・治療中に骨の劣化が進行したり、炎症反応高値が持続する場合
 ・患部が人工物の埋め込み対象である場合
推奨
 ・ 身体所見・画像検査で骨髄炎の診断が不確かなとき
 ・ 軟部組織培養の結果が陰性か、紛らわしい菌が複数検出されるとき
 ・ Empiric therapyに不応のとき
 ・ 骨髄炎に有効とおもわれるが、耐性菌を選択すてしまう高い可能性がある抗菌薬を選択したい時(RFPやキノロンなど)


 ・ 単純XpでDFOを示唆する所見がある場合
  (皮質のerosion、activeな骨膜反応、不均一な透過性、骨硬化像など)
  → 適切な検体(可能ならば骨生検)を採取し、DFOと想定して治療を開始する
 ・ 単純Xpで所見がない場合
  → 軟部組織感染があれば最大2週間まで抗菌加療、創ケア、除圧を行う
  → 初回撮影から2-4週後に単純Xpをフォローする
 ・ 繰り返しの単純Xpで所見がなく、それでもDFOが疑われる場合
  → 創の深さが改善しており、かつ、PTB試験が陰性なとき、骨髄炎はunlikely
  → 創の改善がみられないか、あるいは、PTB試験が陽性のとき
    次の選択肢から1つを選ぶ
    ・ 追加の画像検査、可能ならばMRIを行う → 陰性ならばDFOは否定的
    ・ 骨組織培養・組織診のための骨生検を行う
    ・ さらに2-4週抗菌加療(培養結果を反映し、最低限S. aureusはカバーする)を行う → さらに2-4週後に単純Xpを再検

【6. DFOの治療】
<内科的加療 vs 外科治療>
● 内科的治療を試みることを考慮する状況
 ・ Sepsisが持続しない場合 (48-72時間以内)
 ・ 適切な抗菌加療を受けることができ、耐えられる場合
 ・ 足機能が回復不可能なほど骨破壊が進行していない場合
 ・ 患者が手術を避けたい場合
 ・ 併存症/合併症により手術がハイリスクな場合
 ・ 長期の抗菌薬加療に対する禁忌がない場合(CDIのハイリスクなど)
 ・ 近接する軟部組織感染・壊死のコントロールのため手術を必要としない場合

● 外科治療を考慮する状況
 ・ DFOによると思われるSepsis syndromeが持続する場合
 ・ 適切な抗菌薬加療を行うことが困難な場合
 ・ 適切な治療に関わらず骨の荒廃が進行する場合
 ・ 足機能が回復不可能なほど骨破壊が進行している場合
 ・ 患者が長期の抗菌薬治療を好まず、創治癒を急いでいる場合
 ・ 軟部組織創部のコントロールを良好にするため、あるいは一次閉鎖を目指す場合
 ・ 長期の抗菌薬加療は避けたほうが良いor効果的でないと考えられる場合(腎機能障害の存在など)

<早期の外科的介入を要することが想定される兆候>
 ・ SIRSの存在
 ・ 感染の急速な進展
 ・ 広範囲の壊死or壊疽
 ・ 捻髪音、画像検査で組織内ガス像
 ・ 広範囲な斑状出血 or 点状出血
 ・ 水疱、特に出血性
 ・ 新たに生じた創部の感覚消失
 ・ 臨床的に想定される範囲より広い疼痛領域
 ・ 新たに生じた神経機能の喪失
 ・ 重症の患肢の虚血
 ・ 広範囲の軟部組織の喪失
 ・ 広範囲の骨破壊、特に中足部、後足部
 ・ 適切な治療で感染の改善がみられない

【7. 創部のマネジメント】
● 適切なデブリ、除圧、ドレッシングの3点が重要

1. デブリ: 不良肉芽、痂皮、周囲の仮骨を取り除く。鋭的(あるいは手術的)方法がベスト。
2. 除圧:  特に土踏まずの領域の創部に重要。ドレッシング・フットウェア・歩行の際の除圧も大切。
3. ドレッシング: 湿潤環境を保つ、過剰な浸出液を吸収する。潰瘍のサイズ、深さ、性状(乾燥、浸出液が多い、膿が多い、など)にあわせて選択。
・ その他: 創治癒が遅い場合、人口皮膚、成長因子、G-CSF、高圧酸素療法(HBOT)、創部の陰圧療法なども考慮される。(下記詳細)

<ドレッシング剤>
・ 持続的に湿らせた生食ガーゼ: 乾燥or壊疽病変
・ ハイドロゲル: 乾燥or壊疽病変、自己融解を促進
・ フィルム剤: 乾燥病変 閉鎖性or準閉鎖性
・ アルジネート: 乾燥した滲出性病変
・ ハイドロコロイド: 滲出液の吸収、自己融解の促進
・ フォーム剤: 滲出性病変

<局所抗菌薬>
・ 局所抗菌薬、銀含有製剤を支持するエビデンスはほとんどなし。耐性菌出現、局所の有害事象出現のリスクから推奨しない。

<その他の療法>
・ HBOT: 創治癒の促進を支持するいくつかのRCTあり、ただし感染症自体は改善させない
・ 血小板由来成長因子: 賛否両論、ルーチンに使用する根拠はなし
・ G-CSF: 5つのRCTあり。創治癒や感染の改善、抗菌薬投与期間の短縮には寄与しないが、手術頻度減少、入院期間短縮は有意。ルーチンに推奨しない。
・ 人工皮膚: 有用性を支持する結果なし。推奨する十分な根拠なし。
・ 創の陰圧療法: 特に術後の創管理で頻用されており、潰瘍治癒を改善させる研究は複数あるが、質の高い研究(特に感染創に対して)が少ない

【8. 経過観察】
創治癒・感染の改善がみられない場合、再増悪を来たす場合には下記を考慮する

● 創治癒の失敗があるか?
 ・ 創部ケアレジメンへのアドヒアランスは良好か
 ・ 十分にデブリされているか
 ・ 適切にドレッシングされているか
 ・ 十分に除圧されているか
 ・ 未知のor未治療の虚血はないか
 ・ 悪性疾患ではないか
 ・ 診断されていないor不適切に治療されている感染症はないか

● 感染症治療の失敗があるか?
 ・ 未知のor未治療の虚血はないか
 ・ 未知の壊死性軟部組織or骨病変はないか
 ・ ドレナージされていない膿瘍はないか
 ・ 十分にデブリされているか
 ・ 治療に反応していない骨髄炎はないか
 ・ 未知or未治療の病原体はいないか
 ・ 抗菌薬のデリバリー上の問題点はないか
 ・ 抗菌薬へのアドヒアランスの問題はないか
 ・ すべての代謝異常は補正されているか

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