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2012年7月25日 (水)

二度目の海外熱帯医学研修

最近すっかり忽那先生のブログとなっていますが,久しぶりに登場の管理人です.今回研修にあたって提出した感想文を転載します.

 2004年に当時の長崎大学21世紀COEプログラムでフィリピンで3週間の熱帯医学研修をさせていただいてから,早8年が過ぎた.感染症センターという職場にいるおかげで,時々デング熱,マラリア,腸チフスや時にはリーシュマニアやレプトスピラ症などを経験するが,正直そろそろ熱帯医学に関する自分の知識と経験をリフレッシュしなければならないと強く感じていた.そんなときに,フィリピンでもお世話になった大石和徳先生から,インストラクターとしての参加を打診いただいた.現在の自分の業務に二週間の穴を開けるのに引け目を感じなかったといえばウソになるが,二つ返事で(実際には教授の許可を得て)引き受けさせていただいた.

 今から振り返れば,8年前にフィリピンに行ったときは,自分がフィリピンの病院にいて,目の前にデング熱やマラリアなど教科書でしか読んだことのない疾患の患者がいることだけで興奮を覚え,現地のスタッフと英語で意見交換を行い,レクチャーを受け,日々を過ごすことに精一杯だった.実はフィリピンのコースでも最終日に自分の経験した症例のプレゼンを行ったのであるが,私の作成したマラリアのケースのプレゼンファイルをこのたび見返し,そのあまりの未熟さに恥ずかしくなった.

 この8年間の間に少数ではあるが熱帯感染症を自院で経験を重ね,2度目の参加でようやく余裕をもって患者・疾患を見ることが出来たように思う.熱帯感染症だけでなく,HIVや結核などの感染症患者にも注意を向けることが出来たし,自分の専門分野である感染対策の状況についても目を向けることが出来た.また現地のスタッフと医学的な話のみならず,生活や経済,倫理的問題についても議論を交わした.


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 ベッドサイドの熱い議論


 「2度目」にはもう一つ,重要な意味がある.それは「比較ができる」ということだ.例えば時間的な比較,という意味ではこの10年間でメソット総合病院に入院するマラリア患者の数は相当に減った.一方で以前は見られなかった多剤耐性アシネトバクターが院内・地域で蔓延するようになった.地理的な比較も重要だ.例えばメソット総合病院で行うことのできる医療行為は,フィリピンのサン・ラザロ病院のそれをはるかに上回っている.サン・ラザロ病院では人工呼吸器の数が極めて少なく,家族が付きっきりでバッグをもんでいたが,メソット総合病院には新しい人工呼吸器が何台もある.もちろん血液培養も院内でできるし,ウイルスのPCRもリファレンスラボに送付して行っている.一方でフィリピンで数多くみた狂犬病や破傷風,フィラリアや住血吸虫といった疾患は見ることができなかった.

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 人工呼吸器がなく,バッグをもむ家族(フィリピン)




 もちろん,日本の現状との比較もできる.ちょうどメソット総合病院では新棟の建築中であった.日本では,建築工事中の真菌感染などが問題視され,いかに封じ込めを行うかが注目されている.一方メソットでは,封じ込めどころか,鍬を使って地面を掘り起こし,極めて原始的な建築技術を用いていた.ところが一歩病院内に踏み込み,感染対策の状況を見ると,ワゴンの整理や水回りの整理などは,日本の現状とほとんど変わりがない.これは日本の感染対策が,一部で極めて遅れていることを示唆している.

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鍬を使って新棟建築を進める.

 
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 このようなワゴンの使い方はアジア独特のものなのだろうか?


 「学習」はいつになってもそれなりの意義と効果がある.初めてなら初めてなりの経験と感動があるだろうし,2回目なら2回目なりの経験と感動がある.インストラクターとして参加し,参加者の教育補助を行うはずが,実は自分が一番勉強した気になっているのは,参加者には内緒である.最後になりましたが,本研修に参加するにあたってお世話になりました関係者の方々に,この場を借りて御礼申し上げます.

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コメント

おかえりなさい!
最近熱帯感染症が(私の中で)じわじわ流行中なので、FBの更新楽しみにしてました。
取り敢えず、英語アレルギーの脱感作をがんばろうかな、と思います。
先生が帰ってきてから何故か関西弁がきつくなってたのが気になりますw

けしさん
コメントありがとうございます.
英語,とても大事です.
頑張ってください!

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