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2012年4月25日 (水)

感染症学会シンポジウム4「研究をしませんか」

無事,終了しました.

水曜日の朝イチにも関わらず,数多くの方々(+顔見知りの方々)に参加していただき,質疑応答では思わずIDATENカンファかと思うような方々からのコメントがあいつぎ,とても楽しかったとともに,「臨床感染症の履修,教育」から「研究」へと私と同世代の方々が少しシフトしつつあることを実感しました.
若手を研究にいざなう,というよりは,私と同世代の方々が,これからいかに工夫をして研究を進めていくか,という内容だったかもしれませんね.

このシンポジウムの企画自体は実は私が学会に提案したもので(学会員,評議員には学会開催前に「希望したい企画があったら教えてね」という連絡が事前に来てると思います),原田先生や丸山先生,松元先生といった発表者も私がお願いしたものです.少し話がそれますが,「学会」に少し抵抗を感じてらっしゃる方がいらっしゃったら,是非「自分が当事者」になってみてください.学会に欠けているものがある,学会に不満な点がある,というのなら是非それを学会に提案してみてください.沢山の人が集まる学会,せっかく集まるのならより良い集会にしたいじゃないですか.その気になれば,結構身近な工夫や提案で物事は変わるものです.

さて,シンポジウムですが,丸山先生には僻地でもできる臨床研究,原田先生には臨床感染症医の耐性菌研究,松元先生には薬剤師が行う臨床研究,について発表していただきました.私はそのイントロダクションということで,「米国における感染症研究」について私の限られた経験からお話しさせていただきました.

■ 臨床感染症のトレーニングと感染症研究

「臨床感染症」の発展様式は,皆さんご存じのように日本と米国では大きく異なっていて,日本の感染症学は「臓器別」に発展してきた経緯があります.したがって「肺炎」や「尿路感染症」という臓器別の研究は進んでいる反面,「敗血症」「心内膜炎」などの血流感染症や「血液培養から◎×菌が分離された症例」というふうに複数の臓器に病変がまたがって存在するような患者に関する研究は日本ではまだまだ数少ないのが現状です.

従って,臓器に縛られないいわゆる「(米国式)臨床感染症」を切り口にした感染症研究は,日本ではまだまだこれからなのです.こういった研究をこれから進めていくには,そもそもまずちゃんとした臨床感染症のトレーニングを受けていなければいけません.従って私の一番目のメッセージは,「臨床感染症医として感染症研究(基礎であれ臨床であれ)をしたいのであれば,まず「臨床感染症のトレーニングをしっかりうけること」ということでした.

これは同時に「臨床感染症を学びたい」という若者達のアツい気持ちと「研究をする」ということは,まったく同方向,同一線上に存在している,ということを意味しています.つまり「研究をするために臨床をないがしろにしたり」,「臨床をするために研究をないがしろにしたり」する必要は全くなく,むしろどっちもちゃんとしなければだめだ,というメッセージなのです.

■ あなたの専門は何ですか?

松元先生は「薬剤師として働いていて,日本では絶対聞かれることはなかったが,米国では沢山の人に聞かれた」こととして「あなたの専門は何ですか?」という質問を挙げておられました.シンポジウムが始まる前に原田先生も「長くやっていると専門を持つ必要性が出てくる」ということをおっしゃっていましたが,そういう点でも「研究」の必要性がみえてくると思います.もちろん「教育」も専門性の一つですから,「感染症診療+感染症教育」という研究分野でもいいと思うのですが,いずれにせよ,専門というからには何らかのアウトプットがないと,なかなか第三者には理解してもらいにくいですね.

■ 各分野の専門家をつなぐ

フロアから,例えば細菌学者や微生物検査技師,薬理学者に,彼らが持っているデータが「臨床現場でどのように役立てられるべきか」をどう対話すればよいか(臨床医から伝えればよいか),という質問がありました.
これについては,私はその重要性は理解しつつも,「その対話がちゃんとできる臨床医は希有である」とお返事しました.このブログでもありましたが,例えば喀痰のインフルエンザ桿菌がCTRX耐性と返ってきたときに,ちゃんと検査室にその妥当性を質問し,場合によっては検査方法まで踏み込んで質問できる臨床医がどれくらいいるでしょうか?日本の感染症を専門とする臨床医の中で,それぞれの病院でICNや臨床微生物検査技師に,同じ目線で議論できる臨床医がどれくらいいるでしょうか?多くの方々は「それはもう検査室にまかせるよ」「それは看護師の仕事でしょ」と自ら関わるのを避けているのではないでしょうか.
ですから,ここでもやはり「臨床感染症医の育成」が喫緊の課題だと思うわけです.

■ role model/mentor を持つ

全ての発表者に共通していたのが role model/mentor を持つ,ということでした.日本にも優れたrole modelが沢山いらっしゃいますが,米国にはもっと沢山います.私は別に米国に留学することをお勧めしているわけではありませんが,「臨床感染症医+α(疫学や微生物検査など)」の研究者たちがダイナミックにコラボレーションしているところを見れる,という意味では留学は手軽な方法の一つだと思います.

■ これからの日本での感染症研究

フロアから生物統計や疫学を学べるコースは日本にはないのか,という質問があり,誰も満足にお答えすることはできませんでした(他のフロアの先生から京都大学のコースのご紹介がありました).もしかすると循環器や腎臓など,他分野ではそういうコースがあるのかもしれません.もっともっと私たちは視野を広く持ち,異なる施設での感染症医同士の交流はもちろん,感染症分野でなくても,研究手法を軸とした交流など,様々な軸で有機的につながっていく必要がある,と感じました.例えば感染症研究関係で role model がないのなら,感染症学会に,循環器や腫瘍など,他分野で臨床研究を成功させている人たちをお呼びしてシンポジウムを開催する,なんてことも面白いと思います.

10年ほど前に感じた,IDATENを中心として「臨床感染症という学問があるんだ,面白いなぁ」という新鮮な気持ちは,当時に同じ思いをもったであろう仲間と共に「感染症研究をやるぞ」という新たな新鮮な気持ちにシフトし,これから数年で大きく発展するのではないか(だってすでに交流はあるんですから),そう感じたひとときでした.

取り急ぎ,乱文ですがご報告します(また加筆訂正するかもしれません)

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コメント

市中病院で働くコメディカルの多くは専門を持たなくて良いという指導の下、歳を取って行くことが多いように思います。数的には諸外国に比べて微生物検査室のみならず、検査室に従事する人の数も少ない状況です。なので専門性を見つけれずに過ごしている人が大半と思います。最近それじゃあかんように感じていますが打開策も見つけれず沈んでいます。そんなこと言っていても始まらないので今後どうするか考えて行かないとあかんのかなと思います。日本は日本なりのやり方があるんでは無いかとボンヤリと浮かんでいます。

シンポジウムでは有難うございました。私自身も他の発表者のプレゼンテーションを興味深く伺い、また最後のディスカッションではフロアの先生方の熱い思いと問題意識を感じることができて有意義な時間でした。
感染症科医やコメディカルの専門性について。「旅行医学に詳しい」「臓器移植後の感染症に詳しい」「臨床微生物学に詳しい」などももちろん専門性ですが「Generalに広く感染症を診ることができる」「生物統計学・疫学に詳しい」「教育ができる」なども専門性だと思っています。とにかく臨床感染症の専門家がもっと増えて、いろんな人がいる状態になるのがお互いの向上のために望ましいと思っています。

生物統計や疫学や学ぶ場が国内に無いというのは同感です。あえて言わせて頂ければ、日本環境感染学会で医療疫学トレーニングコースを立ち上げ、2回実施しました。高いレベルを目指す方々には物足りないかもしれませんが、それなりの評価は得ています。ご参考になれば幸いです。

皆様コメントありがとうございます.
コメディカルの専門性については,組織・ボスによって様々ですね.ボスが専門性を持っていると,必然的に部下も専門性を追求するようになるようですし,「業務をこなしていればいい!」というスタイルだと,なかなか専門性を追求するのは難しいようです.よっぽど悩むようなら,職場を変わるしかないかな…あとよっぽど力があれば,職場の雰囲気を変えることができるのかもしれないけど.

医療疫学のコースのご紹介もありがとうございます.少しずつ学びの場が増えると嬉しいです.忙しいので通信・オンラインならなお嬉しいです.

奈良医大はまだまだですが,寄生虫に詳しい医師,HIVに詳しい医師,微生物に詳しい医師,少しずつ育っています.もっともっとプライドを持って,鍛錬したいです.

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