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2012年2月 9日 (木)

腸球菌IEに対するアミノグリコシド系薬併用のエビデンスはあるのか?

アメリカ心臓協会(American Heart Association, AHA)による感染性心内膜炎のガイドラインでは,ペニシリン感受性腸球菌による感染性心内膜炎の場合,ゲンタマイシンの高度耐性がなければゲンタマイシンの併用を推奨している1.またゲンタマイシン高度耐性の場合はストレプトマイシン高度耐性の有無を調べ,高度耐性でなければストレプトマイシンを併用することを推奨している.これらの勧告の推奨度はIAとなっているが,実はこれらの勧告の根拠となる質の高い臨床研究は存在しない . 

ペニシリンGやアンピシリンは腸球菌に静菌的に働き,殺菌作用を示さない.そこで,ストレプトマイシンやゲンタマイシンなどのアミノグリコシド系薬を併用した方が有効性が高いことが1970年代~1980年代に主に動物モデルで示された .その後,アミノグリコシド系薬に高度耐性を示す腸球菌が発見され,それらの腸球菌に対してはペニシリン系薬とアミノグリコシド系薬の相乗効果が見られないことが分かった .上記ガイドラインの推奨は,臨床研究によるエビデンスというよりも,主にこれらの動物実験に基づいて実際に現在まで行われてきたという「実際のプラクティス」に基づくものであり,2012年に出された英国化学療法学会の感染性心内膜炎のガイドラインでもそう明記されている 

一方で,同じガイドラインでは「ゲンタマイシンであれば1mg/kg12回で多くの症例で十分な濃度を達成できる」,「ゲンタマイシンの開始が遅れると予後が悪くなるといったデータがないので,高度耐性の有無の結果が出てから開始するかどうか決めれば良い」と記載されている.

Olaisonらはスェーデンでの5年間の前向き研究で93例の腸球菌性感染性心内膜炎症例の検討で,81%で臨床的治癒が得られたが,それらの症例に対して併用投与されたアミノグリコシド系薬の平均投与期間が15日間であったことから,アミノグリコシド系薬の併用は,従来ガイドラインで推奨されているような「全治療期間」の併用ではなく,23週間に短縮しても問題ないとしている 

また,併用する場合のアミノグリコシド系薬の用法や用量についても,多くのガイドラインでは8時間毎の分割投与が推奨されているが,これについてもエビデンスがあるわけではない.Beraudらは,腸球菌性心内膜炎に対し,フランスでは分割投与する医師と11回で投与する医師はほぼ同数であるというアンケート結果を報告している 8時間毎の分割投与の方が11回投与よりも有効である,というデータはなく,むしろ11回投与の有用性が指摘されていなかった頃の用法・用量が引き続き使用されているのが現状である.

(続くかも)

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