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2011年2月10日 (木)

LTBIの診断治療とIGRAについて

市立奈良病院の忽那(くつな)です。
ちなみに車のナンバーは927(くつな)です。

ここのところLTBI(潜伏結核)絡みの症例が多いので、覚え書き。
INHを止めてRFPにしようかのラインをギリギリで数ヶ月粘っている症例とか、「うーん、これってホントに予防内服いるの?」って症例だけど保健所の指導によりINHを続けている症例など、悩ましい症例が多いです。
あと個人的にはINHよりRFPの方が耐用性がある気がするんですが・・・気のせいですよね。
あるいは人種差などがあったりするんでしょうか?皆様のご意見をお聞かせください。

LTBIの診断・治療とIGRAについて

■診断
   * LTBIを診断し治療することで結核の再活性化を激減させることができる。これによって個人ではなく公衆衛生的にも結核の感染源を減らすことができる。
   * LTBIの治療と検査は結核のリスクのある基礎疾患and/or最近の感染性のある結核患者との密なコンタクトがある場合に行われる。LTBIの検査は治療によって利益がある患者にのみ行うべきである。すなわり、陽性であれば治療を行う者だけを対象とすべきである。
   * INHによる肝炎は年令とともに増えるため、以下の年齢毎のパラメーターを用いてLTBIの検査を行うことを推奨する(Grade 2C)
   * 65歳以上では、再活性化のリスクが高いと判断された場合に検査する
   * 50〜65歳では中等度〜高リスクで検査する
   * 50歳以下では「Slightly increased risk」〜高リスクで行う

■LTBI患者の活動性肺結核になるリスク
Ltbi001_2
   * TST(ツベルクリン反応検査)はM. tuberculosis由来のPPDの注入による皮内遅発性過敏反応を評価する。
   * TB初感染後8週までにTSTのconversionが起きる。感染性結核患者と密なコンタクトのあったヒトでは、最初のTSTが陰性であった場合、最大8週間までTSTを繰り返すべきである
   * TSTは(免疫抑制などの)生物学的な問題、注射手技、PPDの品質、判定により偽陰性になりうる。またNTM感染症やBCG接種によって偽陽性となりうる。しかし、LTBIの検査前確率が高い場合、あるいはLTBIであった場合に再活性化が起こるリスクが高い場合、偽陽性の可能性があったとしても治療をためらうべきではない。
   * 高度の免疫抑制状態にある患者が感染性結核患者との密なコンタクトがあった場合、最初のTSTが陰性であってもLTBIの治療を始めるべきである。TSTを8週後に再検し、2度目が陽性であれば治療を継続する。
   * TSTもしくはIGRAが陽性であった場合、活動性結核でないかどうかの評価を行わなければならない。これには症状(発熱・咳・体重減少)、身体所見、胸部画像所見が含まれる。
   * ツベルクリン・ブーストとは、以前のTSTで陰性であり結核との曝露がないにもかかわらず、TSTで10mm以上の硬結を認めるようになる現象を指す。これに対しツベルクリン・コンバージョンとは以前のTSTで陰性であったものが曝露の可能性があった後にTSTで10mm以上の硬結を認める場合を言う

■治療
   * LTBIの治療としてINHが推奨される(Grade 1B)。投与は9ヶ月・毎日内服が良い(Grade 2B)。アドヒアランスが悪い場合は、6ヶ月間、週2回のDOTSでも効果があると思われるが、小児や胸部レントゲン上線維性病変のある患者では治療期間を短縮させるべきではない。
   * 肝炎はINHの副作用として重要である。患者には飲酒を控えるように説明し、毎月肝炎の臨床徴候について評価を行う。患者には肝炎の症状について十分教育し、症状が悪化したときの早期発見の方法についても教えておくべきである。ベースラインとなる肝酵素の確認のため投与前に肝酵素を測定しておく。
   * 治療は肝酵素が①症状のある患者では正常範囲の3倍以上、②無症状の患者では5倍以上、になった場合に中止する。中止後に肝機能が改善しても再開してはならない。
   * 末梢神経障害はINHがピリドキシンの代謝を阻害するために起こりうる副作用であり、ピリドキシンを25-50mg/day補給することで防ぐことができる。これは特にDM、尿毒症、アルコール中毒、低栄養、HIVなど神経障害の起こりうる基礎疾患を持つ患者では重要である。ピリドキシンはINHを内服している母から授乳している児にも投与すべきである。
   * INH不耐性の患者や、INH耐性かつRFP感受性が疑われる場合は、LTBIの治療としてRFPを推奨する(Grade 1B)。連日投与を4ヶ月(小児は6ヶ月)、というレジメが最もエビデンスがある。
   * 多剤耐性結核に曝露した患者では、個々の症例の感受性検査に応じて治療を行うべきである。
   * RFP+PZAというレジメは重篤な肝障害の危険があり推奨しない

■IGRAについて
   * IGRA(interferon-gamma release assays)はLTBIを診断するためのツールである。M. tuberculosisに特異的な抗原で刺激することで血液におけるM. tuberculosisに対する免疫反応とT細胞の放出するIFN-γを測定する。
   * IGRAはBCGに影響されない。TSTの反応はBCGを接種した時期や接種回数によって影響されるので、BCG接種を行ったヒトに関してはLTBIの診断においてTST(ツベルクリン反応検査)よりも優れている。
   * 現在2つのメジャーなIGRAがある。QuantiFERON-TB Gold In-Tube (QFT-GIT) とT-SPOT.TBである。QFT-GITはELISAに基づいた全血検査であり、T-SPOT.TBは末梢血単球で行うELISPOT検査である(ELISPOTとは:http://kusuri-jouhou.com/immunity/kougen.html
   * IGRAはLTBIに対する特異度は95%以上である。IGRAはBCG接種歴のあるヒト、特に生後にBCG接種を受けるあるいは繰り返し接種される国ではTSTよりも好ましい。
   * QFT-GITやTSTよりもT-SPOT.TBの方が感度が高いようである。これは末梢白血球中のリンパ球数が少ない場合でも、単球は十分量得られることが多いためと思われる。
   * CDCガイドライン2010ではIGRAは結核感染を診断するためにTSTを行うような状況において、IGRAも同様の状況で用いることができることを示している。IGRAはBCG接種歴がある場合、皮膚反応を見るための再診に来なさそうなヒトではTSTの代わりに用いた方が良く、5歳以下の小児ではTSTの方が良い、としている。
   * カナダのTBガイドラインでは、TSTで偽陰性あるいは偽陽性が疑われた場合にIGRAの使用することを推奨している。
   * IGRAはLTBIと活動性結核の鑑別はできないし、活動性結核の診断として用いるべきではない。小児ではエビデンスが十分ではないが、活動性結核の補助診断として有用かもしれない。何歳であれIGRAが陰性であっても活動性結核は除外できない。
   * 結核曝露集団での検査では、IGRAのconversionとreversionの解釈におけるデータが十分ではないため、カナダのガイドラインではTSTを推奨しており、USのガイドラインではTSTかIGRAを推奨している。

参考:UpToDate 18.3. Interferon-gamma release assays for latent tuberculosis infection、Treatment of latent tuberculosis infection in HIV-seronegative adults、Diagnosis of latent tuberculosis infection in adults

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