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2011年11月21日 (月)

グラム染色の心霊写真

市立奈良病院の忽那です。
突然ですが皆さんは幽霊って見たことありますでしょうか。
先日は忽那の撮りためた紅葉の写真を披露いたしましたが、本日は忽那が撮影した驚異の心霊写真をご覧いただきたいと思います。
部屋の明かりを暗くしてからご覧ください。

先日、奈良医大の微生物検査室で研修している際に、微生物検査室長の佐野さんからとあるスライドを渡されました。
検体は喀痰で、アジア人の成人男性が1ヶ月以上続く発熱と呼吸器症状で受診された際に提出された検体とのこと。
ほほう・・・危険な香りが・・・。


Pb090013

なんか・・・扁平上皮ばっかり。
これ、喀痰というよりは唾液なんですけど。
「これは不適切検体だな・・・再提出してもらわねば」と思いつつ、同じ視野で顕微鏡のピントをずらしてみると・・・。

Photo

ギャー!
透けとるうううううう!
これはまさか・・・細菌の幽霊・・・?

比較するとこんな感じです。

001

まさか・・・我々が抗菌薬で殺しまくってきた細菌たちが、亡霊となって再び我々の前に立ちはだかってきたというのか!
患者さんを救うためとは言え・・・今までホントにすいませんでした!
ガクガク震えながら、これまでに自分が使ってきた広域抗菌薬によって死んでいった罪のない常在細菌叢たちに懺悔する忽那・・・。
今後は出来る限り狭いスペクトラムの抗菌薬を選択して、悪いヤツだけ懲らしめるよう心がけますので許してください・・・。

気持ちを落ち着けるために、同じ検体でチールニールセン染色されたスライドも残っていたのでついでに見せてもらうと・・・。

Zn_2  

そこには赤く輝く桿菌の姿が・・・そう、幽霊の正体は抗酸菌だったのだ!(バーン)
しかし唾液でこの抗酸菌の量・・・すごいなコレ。

というわけで、よく言われていることではありますが、菌量が多ければ抗酸菌はグラム染色で見つけることはできます(効率は悪いですけど)。
抗酸菌の細胞壁はグラム陽性菌に近い構造をしていますが、細胞壁に蛋白質やポリサッカライドではなく脂質を持つため厳密にはグラム陽性菌とは異なります。
この脂質に富んだ細胞壁の性質のためしっかりとグラム陽性には染まらずにピントをずらすと「幽霊」のように透けて見えることがあります(Gram Ghostと表現されます)。
グラム染色道場師範によりますと、2+(G5)~3+(G9)の排菌量があれば確認できるそうです。

以前、NTMによる皮膚潰瘍の症例もありました。

Ntmgram_2

なんかウジャウジャいすぎて白血球が網目状に透けて見えています。
同じ検体でチールニールセン染色をしたものがコレです。

Zn2

ちなみにこの抗酸菌はM. kansasiiでした。

いやー、それにしても幽霊って恐いですね。
今週末はお祓いのためにお寺に行ってこようと思います。
皆さんも広域抗菌薬の使用には十分ご注意ください。

■参考文献
1)Ghost mycobacteria on Gram stain. J Clin Microbiol. 1990 Jan;28(1):146-7.
2)Schaaf: Tuberculosis: A Comprehensive Clinical Reference, 1st ed.

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