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2011年11月11日 (金)

本日は埼玉県薬剤師講習会でお話をさせていただきました

ご参加いただいた皆様、まことにありがとうございました。

最近よくあるパターンのご依頼は(私が無理矢理そういう風にねじ曲げてるのかもしれませんが)、「薬剤師の方々に微生物検査を知っていただく」というコンテンツです。これはもちろん微生物検査技師さんの方が適任だとは思うのですが、まあいろんな事情で私がさせていただくことも多いです。

臨床微生物検査を日常感染症診療にどのように利用するか、というのは私の数年来のテーマでして、最近の自分のスライドをみると、数年前からずいぶん変わったな(継ぎ足し継ぎ足しで熟成されてきている)と思います。なかでもニトロセフィン法やオキシダーゼテスト、コアグラーゼテストなどの簡易なテストを動画で見せるようにしたり、ペプチドグリカンの合成におけるPBPの作用とβラクタム系薬の作用をアニメーションで見せるようにしたり、かなり凝ってきています。

私にしたらこの話は実は年間100回くらいはやってるんじゃないか(主に学内の学生・研修医に:多いときは1日3回したこともあります)、という得意中の得意の話なので、いくらでもできます。

しかし、最近気づいたことが一つあります。ストーリーとしてはペニシリン系薬を中心に展開していく話なんですが、一通りの話をするのに60分前後かかります。通常の講演時間だとこれで終わってしまうんですね。本当は、「セフェム系編」「カルバペネム系編」「嫌気性菌編」「真菌編」「ウイルス編」と発展させたいんですが、最初の第1話を聞いてもらわないと、第2話以降が入りづらいドラマのような形態をとっているので、今後はこのあたりの計画性をどうするか考えないといけないなぁ、と思っています。

例えば講演をお受けするときは、「2回セットにする」とかかな。2回目は1回目を受けた人だけ基本的に参加するようにしてください、みたいな。

最近作成したこのフローチャート、自分ではなかなか使えるかな、と思っているんですが、間違ってるところやここをこうした方が良い、というアドバイスなどがあれば是非お願いします。

Photo_5

帯状疱疹と水痘ワクチン

市立奈良病院の忽那です。
なんか今日のワクチン外来に、やたら水痘ワクチン接種キボンヌの方が受診されてて何事かと思ったら朝日新聞に記事が載っていたんですね。

■朝日新聞
帯状疱疹 後遺症防ぐには

この中に『帯状疱疹ワクチンは、日本にはまだないが、水痘ワクチンを使えば同じ効果が得られる。「高齢者は痛みも残りやすいので、ぜひ接種を。50歳でワクチン接種すれば、ほぼ一生、帯状疱疹の予防ができます」と漆畑さんはいう。』という記載があります。
うーん、そう言い切っちゃっていいのかなあ・・・という違和感があるんですが。
いや、僕もたぶんそういう効果はあるのだろうと考えてますけど、添付文書に記載されていない接種になるし、データがまだ十分ではないですよね(と患者さんにも説明しています)。
新聞がそういうこと書いちゃっていいのかなあ・・・。
気になったので、もう一度水痘ワクチンと帯状疱疹ワクチンについてまとめてみました。

アメリカの帯状疱疹ワクチンと水痘ワクチンで用いられている生ワクチンは同じVZVのOka株が使用されています。
アメリカでは水痘ワクチンを水痘予防用に VARIVAX(1350pfu〜)と帯状疱疹予防用のZOSTAVAX(18,700~60,000pfu)と,水痘ワクチンの力価によって使い分けています。
帯状疱疹ワクチンの方がだいぶ高力価です。
帯状疱疹ワクチンの効果については、以下のNEJMの研究が最も有名だと思います。

A Vaccine to Prevent Herpes Zoster and Postherpetic Neuralgia in Older Adults.
N Engl J Med 2005; 352:2271-2284

ここでは、ZOSTAVAXが60歳以上の健常人において、帯状疱疹と帯状疱疹後神経痛を有意に減少させる、と報告されています。
これを受けて(だと思うんですが)ACIPでは60 歳以上の成人に対して,帯状疱疹と帯状疱疹後神経痛の予防のためZOSTAVAXの使用を推奨するようになったようです。
またJAMAにも一般医療機関におけるZOSTAVAXの有効性を示した研究が今年載っていました。

Herpes Zoster Vaccine in Older Adults and the Risk of Subsequent Herpes Zoster Disease
JAMA. 2011;305(2):160-166. doi: 10.1001/jama.2010.1983

で、じゃあ同じVZVのワクチンなんだから日本の水痘ワクチンでも帯状疱疹を予防できるんじゃないの?というわけです。
アメリカで使用されている水痘ワクチンは力価が低いため帯状疱疹の予防効果については限定的と考えられていますが、日本で使用されているoka株由来の水痘ワクチンは海外の帯状疱疹ワクチンと同程度の高力価(42,000~67,000PFU/dose)であり、いけそうな感じです。

また、この2003年の日本での研究によると、50~79歳の129人に水痘ワクチンを接種したところ、抗体価の上昇と皮内テストの陽転化を認めたそうです。
高齢者に接種しても免疫反応は不活化できるだろう、と結論づけられています。

Enhancement of immunity against VZV by giving live varicella vaccine to the elderly assessed by VZV skin test and IAHA, gpELISA antibody assay.
Vaccine. 2003 Sep 8;21(25-26):3845-53.

この辺を総合的に、そして深いことはあまり考えずに解釈すると、この朝日新聞のように「水痘ワクチンで帯状疱疹や帯状疱疹後を予防できるのだ!ガッハッハッハ」ということになるのでしょうけど・・・。
まあそれを証明したデータはまだない、ということになります。
自分の母に水痘ワクチンを打つべきか、悩ましいところです。
というか帯状疱疹ワクチンが新たに承認されるのはいつになるのでしょうか・・・。

■参考文献
1)帯状疱疹とその予防に関する考察. 感染症誌 84: 694~701, 2010

2011年11月 7日 (月)

「ダプトマイシンをどう使うか」という問題の先にあるもの

ダプトマイシンを当院でどのように使っていくか、本日勉強会を開催しました。

18時からまずMSD社の方に20分ほどプレゼンをしていただきました。その後、わざわざ東京からいらしていただいた学術の方との質疑応答の場をもうけました。質疑応答はプレゼンより長く、約30分にも及びました。質疑応答後はMSD社の方にはご退室いただき、当科の小川先生にオリジナルでダプトマイシンについてプレゼンを用意していただき発表してもらいました。発表後もセンター内で40分ほどダプトマイシンの位置づけと今後の運用方法についてディスカッションが行われました(結論は出ませんでした)。

当院の薬剤部・検査部からも担当者に出席してもらい、ダプトマイシンの払い出し方法をどうするか、適切な溶解方法をどのように伝達するか、またMRSAのダプトマイシンの感受性をどのような方法で、どのような株について検査するかについて話し合いました。

私には当科の後期研修医の皆さんに、知ってほしい、感じてほしいことがいくつかあります。

まず、抗菌薬の採用、運用というのは非常に重要な仕事であり、それは一人、あるいは一部署の判断で簡単に決めるようなことではないこと。もちろん、我々のように、各部署から専門家が集まり、20人前後の大所帯で一つの抗菌薬について議論できる、という恵まれた環境にある病院は希有でしょう。しかし、それは逆に「そういう体制が必要だ」と理解されてこなかったことの裏返しであるともいえます。「メーカーがこういったから」「この論文にこう書いてあったから」というような表面的な知識でなく、とことんまでお互いが持っている知識と情報を出し合い、納得のいく議論をすることが重要です。そのためにはメーカーにもご協力をお願いしたいと思っています。

もう一つは、このような「決め事」のやり方。病院という組織で物事を決めて進めていくにはそれなりの手法があります。抗菌薬の採用のみならず、感染対策まで視野を広げると、対策物品の採用はもちろん、気道内吸引のプロトコールや蓄尿の基準など、病院内で決めなくてはいけないことは山ほどあります。

「他の病院はどうしてる?」は確かに重要ですが、それを基準にしてはいけません。あくまでも「よそはよそ、うちはうち」です。「よそ」がやっていても、それが医学的・社会的に間違っていると思えば、「うち」はうちのやり方を採用するべきです。まずは「自分はこう思う。だから自分の病院でもこうすべきだ」という意思を持つこと。そしてその意思を皆に理解してもらい、共有し、同じ方向を向いてもらう必要があります(もちろん間違っていたら修正しなくてはいけません)。

この(感染症)仕事は、なかなか一人だけでできるものではありません。「いつか自分が独り立ちしたらどうするか」「いつか自分に責任を任されたらどうするか」という問題意識を常に持って、日常業務に取り組んでほしいと切に願っています。

(写真はこの勉強会の前に行われた忽那先生の学生向け勉強会)

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第2回 なんということのない症例検討会

市立奈良病院の忽那です。
奈良県内でも感染症の勉強会を立ち上げようということで、8月から始まったこの「なんということのない症例検討会」ですが、第2回を開催することが決まりました。

■第2回 なんということのない症例検討会
場所:天理よろづ相談所病院 南別館3階講義室
時間:11月9日(水)18:30〜

Photo

この「題名のない音楽会」みたいな名前は当ブログ管理人が考えたものですが(というか何も考えずに名付けたものだと思いますが)、発表症例の方はなんということのないことはない症例ばかりになっております。
忽那は前回、血液寒天培地の観察日記を発表するだけでお茶を濁しましたが、今回は「本邦2例目の回帰熱症例」という胡散臭いタイトルの症例呈示で、参加者の皆さんのご機嫌をうかがおうかと思っております。
もちろんこの症例が回帰熱のはずはありませんが、答えが何なのかは来てのお楽しみということで。
また奈良県立医科大学附属病院 感染症センターの大野史郎先生からも「僕の道標 いち思い出」という森山直太朗の曲名のような詩的な演題で症例呈示をしていただく予定です。
そして終了後、肝心の飲み会が始まります!

一応、奈良県周辺にお住まいで感染症に興味のある医療従事者・学生が対象ですが、基本的にどなたでもご参加いただけます(飲み会だけ参加したい、というのもOKです)。
皆さまのご参加をお待ちしております。

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