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2011年8月19日 (金)

バンコマイシンの初期投与量

市立奈良病院の忽那です。
しつこくバンコマイシンのネタです。

バンコマイシンの初期投与量ってどうされてますでしょうか?
結局のところはトラフを測ってTDMをしないといけないんですが、当院はつい最近まで血中濃度の結果が出るのが測定翌日(ヘタしたら週明け)だったということもあり、「いかに最初に設定した初期投与量・投与回数で可能な限り目標トラフ値に近づけるか」ということが切実な問題でした。

iPhoneのサンフォードアプリをみると、VCMの初期投与量は

CCr > 50:15〜30mg/kg q12h
10 < CCr < 50:15mg/kg q24〜96h
CCr < 10:7.5mg q2〜3days

となっています。
かなりアバウトです。
こんなんで大丈夫なのかと。

ちなみにJohn Hopkins ABX Guideだと、

GFR > 60:15mg/kg q12h
30 < GFR < 59:15mg/kg q24h
15 < GFR < 29:15mg/kg q48h

という感じです。
これも負けず劣らずアバウトです。
うーむ。
これまで私はこれらのいずれかを用いて初期投与量・回数を決定していましたが、測定したトラフ値をみて「ソイ!」と満足することはあまり多くなかった印象です。
なので「SanfordもJohn Hopkinsも当てにならないのなら、Kutsuna Methodを開発するしかない・・・」と思っていた矢先、MandellのVCMの項を読んでみると、かなり細かい表が載っておりました。

Vcm

CCr 10毎に投与量・投与回数が細かく設定されています。
さらに、体重別にLoading Doseも設定されており、

60kg以下:1g
60〜90kg:1.5g
90kg以上:2g

でLoadingして、上記表の投与量・回数で投与すると4日目までに70%の症例でトラフ値10〜20μg/mlが達成された、とのことです。
「トラフが10以上・・・?生ぬるい・・・オレは15を超えないと有効なトラフ値とは認めねえ!」と思われる硬派な方もいらっしゃるでしょうが、とりあえずの初期投与量の設定には使えそうです。
細かい計算式についてはMandellの「Part I Basic Principles in the Diagnosis and Management of Infectious Diseases, 31 Glycopeptides」に記載されていますのでご参考ください(引用元の研究はこちらです)。
アメリカ人と日本人の違いとかもありますのでその辺は注意が必要ですが、私個人は最近はこのMandellの表を参考に投与を開始して、投与の4〜5回目のタイミングでトラフを測定しています。
まだ数人の経験しかありませんが、今のところ良い感じの印象です。

まあ結局、細かくTDMした方がいいんですけどね・・・。

■参考:
The Sanford Guide to Antimicrobial Therapy 2011 (iPhone)
Johns Hopkins ABX Guide - Official Version(iPhone)
Mandell, Douglas, and Bennett's Principles and Practice of Infectious Diseases, 7th Edition
Development and evaluation of vancomycin dosage guidelines designed to achieve new target concentrations. J. Antimicrob. Chemother. (2009) 63 (5): 1050-1057.

2011年8月17日 (水)

第1回なんということのない症例検討会終了!

8月12日(金曜日)に厳橿会館で開催された「第1回なんということのない症例検討会」が無事に終了いたしました。天理よろづ相談所病院、市立奈良病院、奈良医大感染症センターフェローや学生さんなどなど総勢30名前後の全くなんということのないことはない症例検討会になりました。

内容の方も全くなんということのないことはない内容で、正直「準備していたのに時間がなくて発表できなかった」と当科の大野先生が終わった後に泣きじゃくっていました。

ということで、第2回からはたぶんタイトルが変わり、「第2回なんということのないことはない症例検討会」となると思いますが、皆さん今後ともご愛顧のほどよろしくお願い申し上げます。予定が決まりましたらまたこのブログでご連絡いたします。

写真は奈良医大近くの県内随一の歓楽街にて二次会の様子。
Dsc_0005_14

血液培養コメント教室 その2 回答編

皆様コメントありがとうございます。ID conferenceは、「読者の皆様方のディスカッション」を大切にします。すなわち、管理人が読者のコメントに全て答える、という形をとらず、読者 to 読者のディスカッションを大切にしたいと思っています(いま思いつきました)。ので、ご遠慮なく盛り上がってください。それでは回答編です。

◎月◎日に採取された血液培養2セットのうち、1本の嫌気ボトルのみからグラム陽性桿菌が培養20時間で陽性になりました。

菌体は比較的大きめで、Clostridium属やBacillus属、Lactobacillus属などの可能性があります。

Clostridium属だと真の原因微生物の可能性がありますが、Bacillus属だとコンタミネーション(血培採取時の汚染)の可能性もあります。発熱が持続しているなど、感染が持続している可能性があれば、血液培養を再度採取されてはいかがでしょうか?
(←今回のケースでは血培再検が大事なメッセージだと思います)

現時点で抗菌薬の選択について確かなことを申し上げるのは困難ですが、Clostridium属ですと比較的感受性の良いものが多いと思われます(C. perfringensなど)。一方Bacillus属が真の原因菌ですと、バンコマイシンなどを用いる必要があります。状況によってご相談いただければ幸いです。
(←この辺は、患者の状態がある程度分かればもう少しspecificな推奨ができるかもしれません)

培養結果は◎◎頃、感受性結果は△△頃に出ると思います。
ご質問、お問い合わせなどは感染症センター☐☐までご連絡ください。

結果は、Bacillus属でした。

※コンタミネーションは様々な形で起こりえますので、1本、しかも嫌気ボトルでかつ時間も早いからコンタミでないとは必ずしもいえません。このボトルの蓋が超汚染されていた場合などでは今回のような現象も起こりうると思います。

2011年8月16日 (火)

院内でバンコマイシンを測ろう

市立奈良病院の忽那です。

皆さんはバンコマイシン(VCM)の血中濃度は院内で測定できるのが当たり前だと思っていませんか?
いえいえ、測定できない病院も日本にはたくさんあるんです。
実は市立奈良病院もつい先日まで外注で測定していました。

しかし、外注で測定していると、当然のことながら結果が帰ってくるまでに時間がかかります。
VCMを投与しているような患者さんは重症な方が多いですし、そのような方のトラフのコントロールは厳密に行われて然るべきですが、当院ではその日の朝に採血しても結果が出るのが翌日の夕方だったりします。
これはかなりストレスフルです。
週末に提出した検査が週明けに帰ってきて、トラフが50μg/mlとかだったりするとかなりへこみます(そこまで外れることは稀ですが、ときどきあります)。

というわけで、VCMを院内で測定できないかと模索しておりました。
そしてなんと!市立奈良病院でも院内でVCMが測定できるようになりました。

ソオオオオオオオオオオオオオオオイ!

いや、まあ皆さんのいらっしゃる病院では当たり前かもしれませんが、ウチの病院にとっては非常に大きな一歩です。

1_2 参考にしたのはレジデントノート増刊「感染症専門医がいなくても学べる、身につく 感染症診療の基本」という本です。

この中で武蔵野赤十字病院の本郷先生が「実はVCMは院内で簡単に測定できちゃうんだぜ!」という衝撃の事実を記載されておりました。
空いているスロットさえあればナトリウムとかカリウムを測定する機械でVCMも測定できるそうです。
さすがに市立奈良病院でもナトリウムとカリウムは院内で測定しております。

さっそくこの本を持って検査室に乗り込んだところ「ああ、できますよ。つーか簡単にできます」との返事が。
「じゃあ何で今まで外注だったんだよおおおおおおおおおお!」という思いは心にそっとしまい「ではぜひお願いします。患者さんの予後がきっと変わってきますから」「あの有名な本郷先生も院内で測定するべきだとおっしゃってます(拡大解釈)」「採算が合うように医師側にも協力してもらいます」などと真摯に頼み込み、この度測定できるようになりました。

ソオオオオオオオオオオオオオオオイ!(流行らないかなコレ)

というわけで、ある程度測定回数が多くないと採算が合わないといったこともあるかと思いますが、もし皆さんがVCMが測定できない病院で勤務されているのであれば、一度検討してみてはいかがでしょうか。

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