無料ブログはココログ

« 2011年6月19日 - 2011年6月25日 | トップページ | 2011年7月3日 - 2011年7月9日 »

2011年7月 1日 (金)

Jolt Accentuationの追試まとめ

P1180799_2

忽那@市立奈良病院です。

IDATENウインターセミナー2011にひき続いて、サマーセミナーでもインストラクターをさせていただけることになりました。恐縮っす。
IDATENセミナーの参加者はすでにバイアスがかかりまくっており、すごく賢い方々ばかりなので、ボロが出ないように今のうちから勉強してます。すでに焦りまくりです。
僕の担当は「頭痛と髄膜炎」「肺炎球菌」で、現在は資料集めの日々です。

さて、Jolt Accentuationという手技をご存知でしょうか。
皆さんご存知だと思いますが、髄膜炎を疑ったときに行う手技です。
赤ん坊が「イヤイヤ」するみたいに1秒間に2,3回首を水平に振り、頭痛がひどくなったり、首に痛みが走れば陽性というものです。

Jolt accentuation of headache: the most sensitive sign of CSF pleocytosis.
Headache. 1991 Mar;31(3):167-71.
PMID:2071396

1991年にUchiharaらが発表したこの研究は、JAMAの「Rational Clinical Examination」シリーズの「Does this adult patient have acute meningitis?」にも取り上げられるほどインパクトがあり、現在では髄膜炎の診断のための身体所見として欠かせないものになっています。
僕も疑ったら必ず取るようにしています。
この研究の内容をまとめると以下のようになります。

髄液検査で細胞数増加が見られた34人(30人が髄膜炎、4人が別の病態)のうち33人がJolt陽性であった。
一方、細胞数増加のない20人のうち8人で陽性であった。
髄液細胞増加に対する感度97%、特異度60%、LR+ 2.4、LR- 0.05であった。

感度が非常に高く、外来で歩いて受診する発熱と頭痛のある患者でJolt Accentuation陰性であれば髄膜炎を否定できるのではないかということで、大変重宝されています。
しかし、この研究は患者数が34人と少ない点、これまでに追試がない点などが問題とされていました。

で、追試を探してみたところ、2008年に会議録が一つ、昨年論文が2つ発表されていました。
まずは2008年の中江らの会議録ですが、当院の神経内科の先生が学会誌をお持ちでした。

Jolt accentuation of headacheの髄膜炎における感度と特異度
日本頭痛学会誌 35 :133, 2008

対象と方法;①項部硬直、38℃以上の発熱、頭痛のうちいずれか2つ以上がある、②発熱と意識障害がある、のどちらかを満たし髄膜炎が疑われた患者44名に頭部CTと髄液検査を行った
結果;髄膜炎と診断された患者は19名で、内訳はウィルス性髄膜炎が15名、細菌性髄膜炎が4名であった。
   Jolt Accentuationは8名(ウィルス性6名、細菌性2名)で認められ、感度42.1%, 特異度56.0%であった。
   ウィルス性髄膜炎では感度40%、細菌性髄膜炎では感度50%であった。

患者数は19名と少ないものの、感度が42.1%とかなり低いという内原らの原著と全く違った結果になっています
内原らの原著では意識障害のある患者が除外されていますが(その理由についてはこちらに書かれています)、本研究では意識障害のある患者も含まれています。
詳細は不明ですが、もしかしたら意識障害のある患者には他動的にJolt Accentuationを行ったのかもしれません。
とするとやはり感度は下がるかもしれません。

次はIranian Journal of Clinical Infectious Diseasesというイランの感染症雑誌に掲載された研究です

Jolt accentuation of headache in diagnosis of acute meningitis.
Iranian Journal of Clinical Infectious Diseases 2010;5(2):106-109

14人の患者に対して腰椎穿刺前にJolt Accentuationを施行。
細胞数増加に対して感度100%、特異度71.5%であった。

かなり簡単な要約ですいません。
ただこの研究、僕の英語力が足りないせいかもしれませんが、14人の患者の内訳などの情報が足りなくて何とも言えません。
正直、微妙な研究です。
じゃあ取り上げるなよって感じですが。

そしてついに真打ち登場!
Clinical Neurology and Neurosurgeryという雑誌に2010年に掲載されていたかなり患者数の多い研究です。

Accuracy of physical signs for detecting meningitis: a hospital-based diagnostic accuracy study.
Clin Neurol Neurosurg. 2010 Nov;112(9):752-7.

発熱、頭痛、意識障害、嘔吐、痙攣、神経局所症状などのある12歳以上の患者が対象。
190人の患者のうち髄膜炎と診断されたのは99人(52%)であった。
このうちウィルス性髄膜炎が62人、細菌性髄膜炎が7人、結核性髄膜炎が30人(!)であった。
髄液細胞数増加(WBC>5 /μl)に対してJolt Accentuationは感度6.06%, 特異度98.9%, LR+5.52, LR-0.95であった。

これも感度6%と超低い結果になってますが・・・。
それにしても結核性髄膜炎が多いなあ・・・。
ちなみにUchiharaらの研究で大多数を占めたウィルス性髄膜炎だけをみても感度1.61%, 特異度98.9%だそうです。ホントかなあ。
意識障害があるかどうかでのサブグループ解析はありませんが、髄液細胞数でmild, moderate, severeに分けた3段階のうち、mildとsevereでは感度0%、moderateでは12%になっています。

というわけで、これまでの研究を表にまとめると表のようになります(クリックすると拡大します)。

Jolt

うーん、少なくとも意識障害のある患者も含めると感度はかなり低下するということでしょうか。
「すわ!Jolt神話崩壊か!」というほどのものではないと思いますが、やはり原著の著者が言われるように、Jolt Accentuationは「walk inで来院した頭痛と発熱を訴える患者で髄膜炎を除外する目的で用いる」というのが正しい使い方のようです。
救急車で搬送された意識障害がある患者の首を他動的にブンブン振って、「痛いですか?ねえ、痛みがひどくなりますか?」と強引に聞いて返事がなくても髄膜炎は否定できないということですね(当たり前か)。

2011年6月27日 (月)

微生物検査室に行こう!

忽那@市立奈良病院です。

今月から2週間に1回奈良医大の微生物検査室に研修にお邪魔しています。
恥ずかしながら市立奈良病院には微生物検査室がないのですが、市立奈良病院に来て1年が経ち微生物たちが恋しくなってたまらなくなったので、病院側と交渉して研修の許可をいただきました。
奈良医大にいたときは、微生物検査室のありがたみというのがイマイチ分かってなかったんですよね・・・。
あって当たり前と思っていたというか・・・。
失って初めて分かるありがたみというか・・・。
そういう意味では微生物検査室は「両親」と似ているのではないでしょうか。
田舎のお母さん、見てますか?(見てるはずないけど)

というわけで、「2週に1回遊びに来て、丸一日微生物検査室で好きに過ごして良い」という太っ腹なお許しを各方面からいただき、ハンターハンターで言うところのクラピカのエンペラータイムになった忽那は、さっそく微生物検査室に乗り込み、室長さんに「面白い検体があったら染めさせてほしいのですが・・・」という傍若無人なリクエストをしてみました。
すると室長さんはニヤリと笑みを浮かべた後に喀痰を渡してくれました。
60代女性で、細胞性免疫不全の基礎疾患あり、数日前から発熱と呼吸器症状があり受診、肺野に新規の浸潤影を認め入院となった患者さんの喀痰検体です。

Photo_8

ギャーーーーーーーーー!
なんか昔ファイナルファンタジーに出てきたモルボルを思い出しました。
カエルにされると大変なんですよね、アレ。
というわけで同じ検体でキニヨン染色もさせてもらいました。

Photo_9

うむ、やはりノカルジア。
微生物検査室楽しいなあ・・・。

そして次にもらったのは、サブロー培地から生えてきたアスペルギルスと思わしきカビ。

P1160425_2

う、美しい・・・。
この質感、たまりません。
ずっと眺めていたいと思うのは僕だけでしょうか。
これを使って真菌のスライドカルチャーを作成しました。

P1160430_2

4日くらいで生えてくるそうです。
ちなみに先程のコケをラクトフェノールコットンブルーで染色したものがコレです。

Photo_10

う、宇宙・・・?
美しすぎる・・・まるでプラネタリウム・・・。
いやー、エンペラータイム、最高ッス。

最後に、日頃の感謝を込めて先ほどのアスペルギルスの写真を用いて、当ブログ「(帰ってきた)ID CONFERENCE」の壁紙を(管理人に無断で)作成しましたので、ぜひ皆さまのパソコンの壁紙としてお使いください。

クリックすると拡大します。

Photo_6

たぶん自分以外誰も使わないと思うので、自分のiMac用に2560 × 1440ピクセルで作成しました。

違うサイズをご希望の方はお気軽にお申し付けください。

« 2011年6月19日 - 2011年6月25日 | トップページ | 2011年7月3日 - 2011年7月9日 »

最近のトラックバック