無料ブログはココログ

« 2011年2月27日 - 2011年3月5日 | トップページ | 2011年3月27日 - 2011年4月2日 »

2011年3月18日 (金)

被災地に何を持っていくべきか

市立奈良病院の忽那です。

現地で診療されている先生方に休んでいただくため、3月30日から4月8日まで被災地の女川にある某病院にお手伝いに行くことになりました。
市立奈良病院は地域医療振興会というグループに属しているらしく、当院にも応援医の募集が来ていたんですが、なんちゃって救急医ということで僕が採用されました(でも僕が行く頃には救急医の需要はなさそうなので内科医として行くつもりです)。
正直放射能はちょっと心配なんですが・・・自分にできることがあるということを嬉しく思います。

とりあえず出発までまだ期間があるので「何の薬を持って行こうかな〜」などとのんびり考えていたんですが、当院の薬剤部の方から先ほど「こっちの準備があるから早くリストを作成して送ってほしい」と言われ、早急に持っていく薬剤を決めない状況になってしまいました。
オジキ(奈良医大感染症センターの教授)にもアドバイスをいただき、とりあえずは以下のものを持って行こうかと思っています。

■薬剤:抗菌薬、降圧薬、止痢薬、制吐薬、消炎鎮痛薬、胃薬、風邪薬、タミフル(インフルエンザ迅速キットはかさばるので持っていかないつもりです)、喘息などの吸入薬、抗不安薬、副腎皮質ステロイド薬、乳酸菌製剤
■その他:マスクや手指消毒薬、環境消毒用のクロス


経口抗菌薬の何を持っていくか、という議論がIDATENで行われていますが、僕も基本はLVFX、CVA/AMPCに頼ろうかと思っています。
その他、CAMとMINOも少し持って行こうかと。
破傷風トキソイドは、かさばりそうなのと、僕が行く頃には被災から20日近く経っているので時期的にはもういらないような気がしますが・・・。
他にも「コレを持っていったら?」というものありますでしょうか。
つーか、薬を持って行きすぎでしょうか。
逆に「コレはいらないんじゃない?」というご意見もお待ちしております。

感染症医の先生方が書いてくださっているいろんなサイトを見て目下勉強させていただいております。
この知識を活かして現地の方々のお役に立ちたいと思います。

といってもまだしばらく奈良にいますが。

-----------------------------------------------------

■メディカ出版(2011年3月23日追加)
災害医療関連記事のご提供
岩田健太郎先生、矢野邦夫先生の記事や感染対策以外の対応に関する記事あり


■災害時(津波を含む)の感染症対策
http://blog.livedoor.jp/disasterinfection/

■感染症は国境を超えて
https://aspara.asahi.com/blog/border/entry/K68Q9KoixG
https://aspara.asahi.com/blog/border/entry/xvevrwQmTy

■国立感染症研究所 感染症情報センター:被災地・避難所における感染症リスクアセスメント
http://idsc.nih.go.jp/earthquake2011/index.html

■感染症の病理学的考え方:地震災害に伴う感染症およびその管理

■日本内科学会:内科医のための災害医療活動
・解説:サバイバルカード−災害時に自分と家族、地域、被災者を守るために−(カード解説
・内科医のための災害医療活動−超急性期 最初の二日間(カード解説
・災害3日目以降:病院編・診療所編(カード解説
・医療支援編(避難所編)(カード解説
・災害拠点病院編(カード解説
・精神医療支援(カード解説)■感染症科不定期日報:自然災害後の感染症

■今にも落ちて来そうな空の下で:災害時の外傷における抗菌薬予防投与、治療について

2011年3月13日 (日)

地震後の創感染の抗菌薬治療

忽那です。
地震後の創感染の抗菌薬治療、というcorrespondenceがNEJMにあったので読んでみました。

Antimicrobial Therapy for Wound Infections after Catastrophic Earthquakes.
N Engl J Med 2010;  363:2571-2573

2010年1月12日に起こったハイチの地震では、イスラエル国防軍は迅速に機動できるチームを派遣し72床の簡便な病院(mobile hospital)を作った。この病院は地震後4日以内に運営可能な状態となり、10日間活動した。この間に、737人の患者が入院し、242人が手術された。入院患者の原因の多くは四肢外傷であり、整形外科的な処置を必要とし、創感染の治療を必要とした。入院前に抗菌薬を投与されていた患者は少数だった。我々は創感染の病原菌を同定することができた。
77%の創感染が複数菌によるものであり、そのうち89%(41/46)がグラム陰性桿菌を含んでいた。これらの病原菌はCDCやWHOのガイドラインによれば一般的に抗菌薬に耐性である。
Limitationとして、Table 1のレポートは我々のもの以外は院内でもらった病原菌か被災地で感染したものか判別できない。我々の研究は患者が病院に着いた時点で採取しており、地震が起きて以降この病院以外に受診した病院はない。
結論として、救助する医療チームはグラム陰性桿菌にスペクトラムを持つ抗菌薬を十分に持つべきである。加えて、将来起こる災害においてもこのような病原微生物の調査は行っていただきたい。これらの研究によって、早期からEmpiric治療を行うことができるだろう。

Photo
(災害時ということでNEJMさん画像転載許してください)

これをみると、7割近くが複数菌によるもので、ブドウ糖非発酵菌が意外と多いようです。
創感染には経口抗菌薬であればオグサワ(オーグメンチンCVA/AMPC+サワシリンAMPC)が処方されることが多いとは思いますが、無効例ではこういった起炎菌も考える必要があるかもしれません。
引用されている2004年12月のタイでの地震+津波という今回の日本と似たような状況でのstudy(
Skin and Soft-Tissue Infections among Tsunami Survivors in Southern Thailand. Clin Infect Dis. 2005 Nov 15;41(10):e93-6. Epub 2005 Oct 13.)では、エアロモナスが22.6%も検出されています。エアロモナス・・・怖いですね。
こちらも読んでみましたが、スワブの採取法についての記載がないのでこれらが本当に全て起炎菌なのかは疑問が残るものの、筆者らは「We found that Aeromonas species were the bacteria most commonly isolated probably because most tsunami survivors were exposed to contaminated fresh water after their area was flooded by the tsunami wave.」と述べており、津波に暴露した患者(特に基礎疾患のある患者)での創感染ではやはりエアロモナスに注意しておいた方が良さそうです。
はじめから全ての患者でエアロモナスをカバーするのは現実的ではありませんが(ちなみにエアロモナスに感受性のある抗菌薬はアミノグリコシド、キノロン、カルバペネム、アズトレオナム、第3世代セフェムなどです)。


Tsunami_survivor
(CIDさんも・・・転載許してください)

トルコ、タイ、インド、中国、ハイチといったdeveloping countryでの研究であり、地震の起こった季節もそれぞれ異なるので、これをそのまま日本に当てはめることはできないとは思いますが・・・少しでも現場の先生方の参考になれば幸いです。

« 2011年2月27日 - 2011年3月5日 | トップページ | 2011年3月27日 - 2011年4月2日 »

最近のトラックバック