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2011年11月 7日 (月)

「ダプトマイシンをどう使うか」という問題の先にあるもの

ダプトマイシンを当院でどのように使っていくか、本日勉強会を開催しました。

18時からまずMSD社の方に20分ほどプレゼンをしていただきました。その後、わざわざ東京からいらしていただいた学術の方との質疑応答の場をもうけました。質疑応答はプレゼンより長く、約30分にも及びました。質疑応答後はMSD社の方にはご退室いただき、当科の小川先生にオリジナルでダプトマイシンについてプレゼンを用意していただき発表してもらいました。発表後もセンター内で40分ほどダプトマイシンの位置づけと今後の運用方法についてディスカッションが行われました(結論は出ませんでした)。

当院の薬剤部・検査部からも担当者に出席してもらい、ダプトマイシンの払い出し方法をどうするか、適切な溶解方法をどのように伝達するか、またMRSAのダプトマイシンの感受性をどのような方法で、どのような株について検査するかについて話し合いました。

私には当科の後期研修医の皆さんに、知ってほしい、感じてほしいことがいくつかあります。

まず、抗菌薬の採用、運用というのは非常に重要な仕事であり、それは一人、あるいは一部署の判断で簡単に決めるようなことではないこと。もちろん、我々のように、各部署から専門家が集まり、20人前後の大所帯で一つの抗菌薬について議論できる、という恵まれた環境にある病院は希有でしょう。しかし、それは逆に「そういう体制が必要だ」と理解されてこなかったことの裏返しであるともいえます。「メーカーがこういったから」「この論文にこう書いてあったから」というような表面的な知識でなく、とことんまでお互いが持っている知識と情報を出し合い、納得のいく議論をすることが重要です。そのためにはメーカーにもご協力をお願いしたいと思っています。

もう一つは、このような「決め事」のやり方。病院という組織で物事を決めて進めていくにはそれなりの手法があります。抗菌薬の採用のみならず、感染対策まで視野を広げると、対策物品の採用はもちろん、気道内吸引のプロトコールや蓄尿の基準など、病院内で決めなくてはいけないことは山ほどあります。

「他の病院はどうしてる?」は確かに重要ですが、それを基準にしてはいけません。あくまでも「よそはよそ、うちはうち」です。「よそ」がやっていても、それが医学的・社会的に間違っていると思えば、「うち」はうちのやり方を採用するべきです。まずは「自分はこう思う。だから自分の病院でもこうすべきだ」という意思を持つこと。そしてその意思を皆に理解してもらい、共有し、同じ方向を向いてもらう必要があります(もちろん間違っていたら修正しなくてはいけません)。

この(感染症)仕事は、なかなか一人だけでできるものではありません。「いつか自分が独り立ちしたらどうするか」「いつか自分に責任を任されたらどうするか」という問題意識を常に持って、日常業務に取り組んでほしいと切に願っています。

(写真はこの勉強会の前に行われた忽那先生の学生向け勉強会)

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感染症」カテゴリの記事

コメント

それで、ダプトマイシンはどう使えば良いのでしょうか…

一病院勤務医師さん

今日、我々も話し合いましたが、まだ「こうだ」と言えるデータが非常に少ないんですね。結局は自分の施設で決めるしかないと思います。
むしろ大事なのは、「使った後に一人ずつ患者さんの経過をちゃんと振り返ること」ではないかと思います。

指導医が「あの患者にDAPいっておいて!」と言ったら研修医が患者のベッドサイドで「DA PUMP」をガンガンかけるということもあり得ると思います。
このように「DAP」という略号はヒヤリハットの原因になりかねないので、個人的には「DPT」が良いと思います。

うちもダプトマイシンは正式採用せず、必要があれば臨時購入でということになりそうです。感受性試験をどうやってどの患者にやるかも悩ましい問題です。

「DPTいっといて!」だと三種混合ワクチンと間違える研修医もいるかもしれないので、マクドナルドを「マクド」という関西風に「ダプト」がいいのではないかと思います。

ほんとだ、DAPとDPTはまさにマックとマクドの関係だ…

ダプトをマクドのアクセントで言ったら超違和感あるんですが…

院内の決めごとをする際の示唆に富む記事をありがとうございました。
最初はダプトをすぐに採用することするも考えておりましたが、患者限定で少し使ってみてからの採用したほうがよいと慎重に考えるようになりました。

この薬、ポジショニングが難しいんですよねぇ。どうやって使えばいいのか、って訊きたくなりますが、今のところ答えようがないというのが答ですよね。
薬剤の原沫は製造元が配布しないらしいのでMIC測定は無理。E-testならやれるのでしょうか? Caイオンの影響を受けるけどどうするんでしょ。
いずれにせよ、難しい薬剤です。

私の病院でも先月末にICTと薬剤部で合同勉強会・MRプレゼン行いました。MRさんいわく、”どんどん採用されていて、使用制限もかけていない病院が多いよ”とのこと。肺炎や左心系IEにダメなど適応病態に注意が要るのに制限がないとは。と思いましたけど。 みなさん、やはり採用には慎重なんですね。

志智大介様
コメントありがとうございます.
採用にも慎重ですが,何より使われ方に慎重になっています.
ただ,患者に有益になり得る薬剤が慎重になりすぎて使用できないという状況は避けたいですが…
また来週の月曜日に議論の予定です.

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