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2011年8月26日 (金)

ダプトマイシン登場

市立奈良病院の忽那です。
むしろ忽那の市立奈良病院です。

ダプトマイシンが9月下旬から鳴り物入りで(かどうかは知りませんが)発売されるようなんですが、皆様のご施設では採用される予定でしょうか?
すでに使ったことのある先生がいらっしゃいましたら使用感などを教えていただければ幸いです。

とりあえず、ダプトマイシンの概要と治療成績などを文献的にまとめてみました。

・ダプトマイシン (Cubicin)はStreptomyces roseosporus由来の環状リポペプチドと呼ばれる抗菌薬である。
・菌の細胞膜に結合してカリウム排出による膜の急速な 脱分極および関連するDNA、RNAの分裂、ならびに蛋白合成を引き起こし、速やかな死滅をきたす。
・作用は濃度依存性である。
・MRSAなどのグラム陽性球菌による複雑性皮膚軟部組織感染症と菌血症(IEを含む)の治療薬としてFDAに承認された。
・肺胞サーファクタントによって不活化されるため、肺炎には使えない。

■治療効果
・複雑性皮膚軟部組織感染症(皮下膿瘍、膿痂疹、蜂窩織炎は除外されている)1092人を対象としたダプトマイシンの治療効果をみた研究では、ダプトマイシンの治療成功率はバンコマイシンと同等であった(83.4% と 84.2% )(The Safety and Efficacy of Daptomycin for the Treatment of Complicated Skin and Skin-Structure Infections. Clin Infect Dis. 2004 Jun 15;38(12):1673-81. )。
・右心系感染性心内膜炎を含む黄色ブドウ球菌血症患者246人(うち99人はMRSA)を対象とした研究では、ダプトマイシンはバンコマイシン+少 量ゲンタマイシンと非劣性であった(治療成功率44% vs 42%)。(Daptomycin versus standard therapy for bacteremia and endocarditis caused by Staphylococcus aureus.N Engl J Med. 2006 Aug 17;355(7):653-65.)。
・67人の慢性骨髄炎患者を対象とした後ろ向き研究。ダプトマイシンによる治療成功率は82%であった。ダプトマイシンの初期投与量は平均5.6mg/kgで、4mg/kg 以上の投与量の方が予後が良かった。(Clinical experience with daptomycin for the treatment of patients with osteomyelitis.Am J Med. 2007 Oct;120(10 Suppl 1):S13-20.)

■感受性検査
・ダプトマイシンのMICは治療中に増加することがあり、これはバンコマイシンの曝露に影響される。
・黄色ブドウ球菌血症に対しダプトマイシンで治療していた患者で細菌学的に治療失敗した19人のうち6人がダプトマイシンのMICが0.25〜0.5から2〜4に増加していた(Daptomycin versus standard therapy for bacteremia and endocarditis caused by Staphylococcus aureus.N Engl J Med. 2006 Aug 17;355(7):653-65.)。
・加えて、バンコマイシンに曝露された黄色ブドウ球菌がダプトマイシン耐性となるこ とも観察されている(Induction of daptomycin heterogeneous susceptibility in Staphylococcus aureus by exposure to vancomycin. Antimicrob Agents Chemother. 2006;50(4):1581.)
・このように、ダプトマイシンの感受性検査は(特に長期間治療例や治療中にも細菌が検出される場合には)治療前だけでなく治療中にも行うべきである。

■副作用
・ダプトマイシン投与中の患者は定期的に末梢神経障害やミオパシーの評価を行うべきである。
・血清クレアチンキナーゼを少なくとも週に1回は測定し、症状のある患者では正常値の5倍以上になれば、無症状であれば正常値の10倍以上になればダプトマイシンを中止する。
・ダプトマイシンは好酸球性肺炎とも関連がある。ダプトマイシンで治療中に新規に出現した発熱+肺浸潤影±好酸球増多ではダプトマイシンによる好酸球性肺炎の可能性がある。

■投与方法
・複雑性皮膚軟部組織感染症では4mg/kgを1日1回投与する。
・血流感染症では最低6mg/kgを1日1回投与する(8mg/kgを推奨する専門家もいる)。
・ただし、高用量投与や長期間(14日以上)の投与に関する安全性についてはデータが限られている。
・ダプトマイシン8mg/kgを平均25日間投与された61人を対象とした後ろ向き研究では、ダプトマイシンの副作用は許容範囲であり、CPK上昇も低用 量・短期間投与と比較し大差なかった(Safety of high-dose intravenous daptomycin treatment: three-year cumulative experience in a clinical program. Clin Infect Dis. 2009;49(2):177.)。


Mandell 7th(31. Glycopeptides (Vancomycin and Teicoplanin), Streptogramins (Quinupristin-Dalfopristin), and Lipopeptides (Daptomycin))、UpToDate(Treatment of invasive methicillin-resistant Staphylococcus aureus infections in adults)を参考に作成

バンコマイシンが使えない症例では切り札として使えるのかもしれませんね。
肺炎には使えないというのは要注意ポイントです。
まあ当院でよく見られる「なんちゃってMRSA肺炎(痰からMRSAが出ただけ)」にはダプトマイシンを使おうがバンコマイシンを使おうが大差ないと思いますが、本当のMRSA肺炎にはダプトマイシンを使わないように注意しないといけません。
しかし、日本の適応症を見てみると感染性心内膜炎があるんですが、この注意書きに「右心系感染性心内膜炎での効果して認められていないので、左心系感染性心内膜炎には使わないこと!」とあります。
日本で右心系の感染性心内膜炎は稀ですので、「感染性心内膜炎患者には使えない」とほぼ同義なのではないかと思うんですが・・・。

それに、黄色ブドウ球菌の菌血症の期間が長くなるほど合併症としてのIEが増え、4日以上菌血症が続いた症例では40%がIE(普通に考えてほとんど左心系と思われます)を合併していたという報告(Persistence in Staphylococcus aureus bacteremia: incidence, characteristics of patients and outcome. Scand J Infect Dis. 2006;38(1):7-14.)もあるので、黄色ブドウ球菌の菌血症自体にもダプトマイシンは使いにくいような・・・これは拡大解釈しすぎでしょうか。

まあ採用しない、というのは大切な抗菌薬を温存するための最良の手段ですので、当院ではしばらくは様子見になりそうです。
それよりも当院の状況としてはコリスチンを早く認可していただきたいものです。

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