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2011年8月10日 (水)

血液培養コメント教室 その1 回答編

管理人です。

このままだとただのおふざけコーナーになってしまいそうなので、回答見本を出します。
電子カルテを確認したところ、経口キノロン系薬を使用中に発熱し、第4世代セフェム系薬を2日間使用されましたが解熱せず、静注キノロン薬に変更され、その最中に採取された血液培養でした。
血液培養は1セットしか採取されておらず、嫌気ボトルから培養29時間で写真のような菌が陽性になりました。また化学療法により多数の口内炎があったようです。この状況でのコメントです。

◎月◎日に採取された血液培養(1セット)の嫌気ボトルから培養29時間でグラム陰性桿菌が陽性になりました。

患者さんに多数の口内炎があるという背景と、菌体の形状(非常に細長い)を考えると第一には口腔内のグラム陰性桿菌(特に今回のグラム染色のような細長い形状をとる Fusobacterium spp. または Capnocytophaga spp.)が考えられます。

もともと予防に経口キノロン系薬をご使用になっていたとのことですので、本菌はキノロン系薬に耐性の可能性があります。βラクタム系薬へのご変更をおすすめします(特に口腔内の細菌はβラクタマーゼを産生することが多いので、ペニシリン系薬ならばβラクタマーゼ阻害剤を配合したものがよいと思います)。

緑膿菌などのカバーが必要なければアンピシリン・スルバクタムでもよいと思いますが、発熱性好中球減少症の状態のようですので、緑膿菌もカバーする抗菌薬がよいかと思います(例えばピペラシリン・タゾバクタムなどはいかがでしょうか(本患者の腎機能ならば……を……回くらいが適当と思います)。

明日午前中には同定結果が、明日午後には感受性結果が判明する予定ですので、その際に再度ご連絡いたします(あるいはその際により適切な抗菌薬にご変更ください)。
(→次のアクションが可能なタイミングをあらかじめ言っておくとスムーズ)

今回は嫌気ボトル1本からの培養陽性で、真の原因微生物かどうか判定しにくい部分もあります。もし発熱が持続するようでしたら次回は血液培養を2セットとっていただくとよいと思います(その方がより確実に敗血症の原因微生物の診断が可能です)。
(→次に同じようなことがあったとき、より良い感染症診療をしていただくためのサジェスチョンをしのばせておく)

ご質問などがありましたら◎◎までご連絡ください。

というような感じです。培養は Capnocytophaga gingivalis, LVFX MIC 8 でした。

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感染症」カテゴリの記事

コメント

管理人様

今回のコメントはどの程度臨床医にとって有効なのかどうか自分でも良く悩む範囲です。感染症無関心層にとってFusobacteriumもCapnocytophagaも興味対象から外れる訳です。要は治療が奏功するものかどうかの興味が往々にしてあり、当院ではあまり細かいことは逆に言わないようにしております。IEであったり、脊椎炎であったりなど既に治療が困難な例でしかも抗菌薬の投与方法を微妙に調整して臨床経過を見ていく場合には細かいことを口にするようにしております。米国ではどのようにアセスメントされているのが現状なのでしょうか?また教えて下さい。
ところで、今回は口内炎が多発しているという患者背景にはやられました。ヒントにある場合は当然Capnocytophgaも範疇に入ってくる訳ですが、当然緑膿菌もあると思いますし口内炎症が強い場合は消化器の潰瘍も考慮が必要で、大腸菌を含めてた腸内フローラの細菌も可能性として挙げられるのでは無いでしょうか?以下の点についても相談を受けた場合は説明に参りカルテに記載して帰って来ます。

①今回はセフェピムやキノロン(多分シプロキサンですか?)の効果が悪いという背景で血液培養が陽性ということですのでESBL+キノロン耐性菌や緑膿菌は最初から外せないとは思います。
②嫌気のみの培養であれば嫌気性菌の可能性もあり、嫌気性菌に抗菌力の悪いキノロンなどは投与を変更するように考えることが要るのでは無いのか?と思っております。
③キノロンの場合はAUC/MICに相関するので、キノロンの効果が悪い場合はMICが高いのか、AUCがしっかり保てている投与方法、種類なのか考える必要があるのでは無いかと考えています。
④膿瘍や閉塞、梗塞性病変のような抗菌薬が移行しにくい疾患の有無について見直してください。
⑤グラム染色で疑われる菌種を報告し、推定菌とは類似しているが稀に検出される菌種についてコメントし、全ての感受性率について明示して抗菌薬の継続について考える。
⑥嫌気性菌が検出される背景にはコンタミもあり、特にソケイ部の採血はコンタミが多いので採取条件について再度確認をする。

ところで模範解答ですが、血液培養で29時間かかるものを翌日培養で発育さすのは無理では無いかとは考えないのでしょうか?29+29=58時間になるので3日がかりで漸く推定菌が分かりますので時間テーブルはしっかりと伝える必要があります。C.gingicvalisは口腔内のカプノですので、C.canimosusとは違いオキシダーゼ、カタラーゼが陽性になり容易に鑑別が可能であります。なので感受性率もやや異なることが早い段階で分かりますが経験したことが無い方は同定すら出来ないため感染症内科医のフォローを頂けると非常に検査室としてはあり難く思います。
少し長くなりましたが、レア細菌の症例は教えて貰ったあと伝染するように経験しますので当分注意して見て見ます。カキピー菌出なくて良かったと思います。たまにコリネを見てカキピーチョコと思ってしまいます。

師範手前様

とても重要なご指摘ありがとうございます。
今回の企画は、コメントを書く人間と、主治医との距離感によってずいぶんと内容が変わってくると思います。
模範回答としているのは、あくまでも「まあまあ距離がある」のが前提ですので、よりお互いを深く知り合えれば、コメントも深くなってよいと思います。

時間テーブルについてのコメントありがとうございました。この部分は正確ではなかったのでお詫びいたします。メッセージとしては「次のアクションを考えることとのできるタイミングを連絡しておくことが大事だ」ということで、一例としてご容赦ください。

また、その他のコメントについてもありがとうございました。

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