無料ブログはココログ

« 単焦点レンズでグラム染色の写真を撮ろう! | トップページ | Nobody Can Stop 小林 »

2011年7月22日 (金)

感染症一発診断シリーズ①脱皮?

〜この症例は実際の症例を加工したフィクションです〜

59歳女性
基礎疾患なし。
7月上旬に突然ショック状態となりA総合病院を受診。
原因不明の敗血症として加療され(詳細不明)、10日ほどで軽快し退院。
その後も微熱が続き、退院1週間後から手足の皮膚が剥がれてきて「なんじゃこりゃああああ」と思い当院皮膚科を受診した際に、感染症科受診を勧められた。
バイタルサインは問題なし。

Img_0909
Img_0908

診断は何でしょう?
問診すべき事項はありますか?
検査は何かしておいたほうが良いでしょうか?

このエントリーは例によって忽那がお送りいたしました。
管理人に昨日お会いしてブログは書かないのかと伺ったところ「動かざること山の如し」とのことでした。

« 単焦点レンズでグラム染色の写真を撮ろう! | トップページ | Nobody Can Stop 小林 »

コメント

はじめまして。くつな先生
ひさしぶり、笠原先生

西原@土庫こども診療所です。

川崎病?自然に治ったのかしら?
冠動脈のエコーはみておきたいかな。

tsls?タンポン使用歴と、ブ菌感染後の全身検索ですかね?

血管炎の後の落屑とおもいました。

播種性白癬?

TSSですかね?
タンポン使用歴が気になります。
膣培養とTSST-1の検索が必要かなと思います。

TSSっぽいですね。59歳なのでタンポンは???創部の検索ですね。下痢はありましたか?

こんにちは。

最初は僕もTSSかなと思ったのですが、それにしては落屑が出現するのが遅い気がしたので…

・麻疹(普通は予防接種受けてると思いますが)
・猩紅熱(年齢的には合致しませんが)

も鑑別に入れたいかなと思います。
まずは詳細不明なSepsisの情報が欲しいですよね。
そもそも本当にSepsisだったのかとか…

ご回答いただきました皆様

誠にありがとうございます。
正解は・・・たぶんTSSなんじゃないかなと僕も思っております(ボソボソ)。
この方は、Impetigoが後頭部に出現し、それが広がってきてから下痢と血圧低下、全身紅潮が出現したそうです。
ですので、ImpetigoからのTSSではないかと思いますが、前医が培養検査をしていないそうなのでTSST-1産生株かどうかも分かりません。
タンポンはしてませんでした。埋め込み避妊具(って言うんですか?)もないとのことです。
ですのでNonmenstrual TSSだと思います。
膜様落屑の時期としては、だいたい1〜3週後から始まるとのことなので、まあこんなものかなと思います。

「おいおい、思いますじゃなくて、そんな診断付いてない問題を出すなよ」って感じですが・・・。
すいませんでした・・・。
次から頑張ります・・・。

TSSまとめ

■Introduction
・S.aureusは種々の酵素を産生し様々な皮膚病変を作る。
・多くの株は外毒素を産生し、食中毒(S.aureus enterotoxin)、SSSS(exfoliative toxin)、TSS(TSST-1)を起こしうる
・TSSの報告はMSSAがほとんどだが、MRSAによるTSSも増えている。市中MRSAにも注意。

■疫学
・S.aureusによるTSSは1978年に初めて報告された。
・1980年代に生理用品に関連したTSSの報告が激増した。若い白人女性に多く、36%が15〜19歳で、97%が白人女性であった。
・臨床症状は月経の間にみられ、吸収性のタンポンの使用と関連していた。
・タンポンブランドのいくつかが撤退したことで、TSSの頻度は激減したが、2000年から2003年のあいだでわずかに増加傾向がみられた。

・生理関連
 ・1979年から1996年までに5296例が報告されている。
 ・TSSのうち74%が月経に関連しているとされるが、比率は減少傾向にある(1979年では91%だったが、1987年〜1996年では59%)。
 ・1980年には女性10万人中9人の発症率だったが、1986年には10万人中1人まで減った。
 ・死亡率も同様に減少傾向にあり、1979年には5.5%であったが1996年には1.8%まで低下している。
 ・吸収性のタンポンの減少と、レーヨン含有のポリアクリル製品が増えたために月経関連のTSSは減ったものと考えられているが、タンポンの使用はいまだにTSSのリスクファクターである。
 ・TSSを発症する女性は、吸収性のタンポンを使ってたり、何日もずっと同じものを使っていたりする。

・生理非関連
 ・報告例の半分は生理に関連しないケースである。
 ・手術や分娩後の創感染、乳腺炎、副鼻腔炎、骨髄炎、関節炎、熱傷、インフルエンザ後の呼吸器感染症、腸炎など
 ・手術に関連したものは1979年には14%であったが、1996年には27%まで増えている
 ・全体で93%、非月経関連のTSSで73%が女性であった。しかし、月経関連TSSと分娩後を除いた場合は男女比は等しいとする報告もある。
 ・生理非関連TSSでは生理関連TSSと比較して年齢が高く、白人以外の人種が多い
 ・生理非関連TSSの死亡率は5%で、これは低下傾向にはない

・MRSA
 ・MRSAもTSST−1を産生し、TSSを起こすことがある
 ・市中MRSAもTSSを起こすと考えられている

■病理

TSST-1
 ・TSST-1は生理関連のTSSの90%、生理非関連TSSの40〜60%で産生されている。
 ・TSST-1の神経への作用機序として、TSST-1が脳内のPGE2を増加させ、カスパーゼ依存性神経細胞死を起こすためと考えられている。
 ・生理関連TSSでTSST-1産生が多い理由は分かっていない。

Other Toxins
 ・非生理関連TSSはTSST-1産生が少ない。
 ・Staphylococcal enterotoxin Bという外毒素は生理非関連TSSのうちTSST-1陰性の株の38〜62%で産生されており、TSSとの関連が考えられている。
 ・動物実験ではenterotoxin AはTSSにおいてTSST-1の補因子ではないかと推測されている。enterotoxin A欠損株ではマウスへの毒性が低かった
 ・その他、enterotoxin C, D, E, HもTSSに関連していると考えられている。183例のTSSのうち、TSST-1、enteroxoxin A, B, C, Dの産生株はそれぞれ40%、20%、8%、6%、3%であった。血液培養から分離された株ではenterotoxin Dの産生が多い傾向にあった

Superantigens
 ・S.aureusの外毒素はSuperantigenである。Superantigenは無数の(多いときには全体の20%もの)T細胞を活性化させ、サイトカイン産生を引き起こす
 ・通常のT細胞の反応では、抗原は抗原提示細胞によって取り込まれ、分解され、細胞表面のクラス2MHCに抗原を提示し、抗原特異的T細胞に認識される。
 ・対照的に、Superantigenは抗原提示細胞に分解されずにクラス2MHCに直接作用する。
 ・Superantigen−MHC複合体はT細胞受容体のβ鎖のV領域に作用することにより、活性化される。
 ・活性化されたT細胞はIL-1、IL-2、TNF−α、TNF-β、IFN-γを大量に産生することによりTSSの症状を引き起こす。
 ・IL-1は内因性発熱物質であり、TSSに関連した発熱を引き起こす
 ・加えて、IL-1は筋骨格系のタンパク質を分解し、これが筋肉痛やCK上昇を起こすと考えられている・
 ・TNFの産生は多核球の遊走を阻害する。TSST-1産生S.aureusは化膿性の反応を生じないが、これは多核球の阻害が一因かもしれない。
 ・加えて、enterotoxin Bは外蛋白の産生を抑制するため、これもTSS関連のS.aureus感染症が化膿性病変を作らない一因かもしれない
 ・消化管由来の内因性のエンドトキシンなどもTSST-1の感受性を高めると考えられている

抗体反応
 ・宿主のS.aureusの外毒素への抗体反応もTSSの病態において重要な役割を果たす
 ・10代後半では70〜80%がTSST-1の抗体を持ち、その後40年間で90〜95%となる
 ・臨床でのTSS患者はTSST-1の抗体がなく、回復期の血清中でも十分な抗体が産生できないことがしばしばみられる
 ・TSS患者ではその他の外毒素の抗体価も低かったという報告もある。
 ・Superantigenに刺激され産生されたTNF−γによってポリクローナル抗体の産生が抑制されることも抗体が産生できない原因の一つかもしれない
 ・こうした抗体産生の失敗が、患者によっては初回のTSSのエピソード後に再発を起こしやすいということを説明できるかもしれない

■臨床症状
 ・TSSの臨床症状はS.aureusの産生する毒素による作用である。
 ・1981年にCDCは定義を提唱した。
 ・TSSは健康な成人で、急激に生じる
 ・生理関連TSSでは月経開始とTSSの症状が始まる間隔は2〜3日で、術後のTSSでは平均2日後に症状が出現するが、最も遅い報告では術後65日経過してTSSが起こった症例がある
 ・TSSの患者では発熱、血圧低下、皮膚症状が普通見られる。
 ・その他の症状としては、悪寒、不快感、頭痛、咽頭痛、倦怠感、嘔吐、下痢、腹痛、起立性のめまい、失神など。
 ・CDCの定義を全て満たさないからといって、TSSではないとは言えない。除外には使えない。
 ・入院してから48時間の間に、紅皮症となり、水様性下痢を呈し、尿量が低下し、チアノーゼになり、四肢の浮腫を認める。
 ・眠気、混乱、易刺激性、興奮、幻覚なども脳の虚血や浮腫により二次性に起こりうる
 
血圧低下
 ・急速に血圧が低下し、組織虚血や臓器障害を認める。
 ・血圧低下は、血管内から間質にリークすることにより全身の血管抵抗が低下し起こる。これらは大量のサイトカインの放出による。
 ・血圧低下は、数日もの間、大量の輸液に反応しないこともある。

皮膚病変
 ・TSSでは様々な皮膚病変がみられる。
 ・初期にみられる紅皮症は、皮膚と粘膜にみられ、びまん性の斑状発疹で、日焼けに似る。病変は手掌と足底にもみられる。
 ・紅皮症は分かりにくく、またすぐ消失する。
 ・術後の紅皮症では、術創周辺で特に強くみられる。
 ・粘膜病変は結膜強膜出血や膣粘膜や鼻咽頭の充血を起こす。
 ・重症例では粘膜潰瘍、点状出血、水泡もみられる
 ・間質への体液貯留のためnon-pitting edemaもみられる
 ・後期の皮膚病変では掻痒感を伴なう丘疹がTSSの症状出現から1〜2週でみられ、特徴的な手掌と足底からの落屑が1〜3週後からみられるようになる。この膜様落屑が後期に起こるため、急性期は診断が難しい。
 ・脱毛や爪が剥がれたりも時にみられる。

多臓器病変
 ・多くの患者では筋肉痛と倦怠感を訴え、CK上昇がみられる。
 ・胃腸症状も一般的であり、特にひどい下痢がみられる。
 ・腎前性もしくは腎性腎不全も起こり、またそれに引き続き電解質異常も起こる。
 ・見当識障害、混乱、痙攣などの脳症もTSSではみられるが、これは脳浮腫によるものと考えられている。
 ・肺水腫、胸水、心機能低下、肝機能障害、貧血、血小板低下などの報告もある。

生理関連と非関連の違い
 ・症状は似ているが、生理非関連TSSでは皮疹と発熱が現れるのが早く、腎障害とCNS合併症の頻度が高い、筋骨格系の症状が少ない

再燃
 ・TSSは再燃しうる。
 ・適切な抗菌薬投与をされていなかった症例や、S.aureus毒素への抗体産生が不完全であった症例に多い。
 ・生理関連TSSは再燃時の症状は初回よりも軽症のことが多い。
 ・再燃は初回の症状から数日〜数ヵ月後に起こる。
 ・AIDS患者では、亜急性の経過で紅皮症、落屑、発熱、血圧低下などの症状が数週間に渡って繰り返し起こることがある。

血液検査
 ・基本的にショックや臓器障害を反映する。BUN, Cre、肝酵素、CK上昇など。
 ・WBCは上昇しないこともあるが、左方移動はみられ、未熟な好中球は25〜50%にも及ぶ。
 ・血小板減少と貧血は最初の数日でみられ、PT、APTT延長もみられることが多い。DICもときにみられる。
 
■診断
 ・臨床所見に基づく。CDCの定義があるが、これはサーベイランスのために作られた定義であり、これを満たさないからといって除外してはならない。
 ・CDCの定義では38.9℃以上の発熱、血圧低下、皮疹、膜様落屑、3臓器以上の臓器障害を満たさなければならない。
 ・80〜90%の患者では粘膜や創部からS.aureusが検出されるが、診断には必須ではない。
 ・Streptococcal TSSと違って、血液培養から検出されるのは5%に満たない。
 ・感受性や毒素の産生を調べるために、細菌検査は提出すべきである。
 ・研究室によっては急性期と回復期のS.aureus毒素への抗体を測定できる。
 ・急性期に毒素への抗体がない患者から毒素を産生するS.aureusが検出されればTSSを強く疑うことができる。

鑑別診断
 ・健康な若い成人に急速にショックを起こす病態は多くない。
 ・Streptococcal TSSは局所の外傷の強い疼痛・圧痛がある点で鑑別しやすい。Streptococcal TSSはデブリが必要なのでこの2者の鑑別は重要。
 ・ロッキーマウンテン紅斑熱:皮疹は四肢末梢に出て、発熱の3日後に現れる
 ・髄膜炎菌による菌血症:皮膚所見が違うので鑑別できる。

■治療
支持療法
 ・血管透過性亢進のため、10〜20L/日もの輸液が必要となる。輸液だけで血圧が保てない場合は昇圧剤も必要。
 ・生理関連TSSは支持療法のみで回復するが、抗菌薬を投与していない例では再燃がみられやすい

外科的治療
 ・タンポンや避妊用スポンジなどを挿入している場合は除去する。
 ・術後は創部に感染の所見がみられないことがあるが、これは炎症反応が抑制されているからであり、TSSを疑えばデブリするべきである。
 
抗菌薬治療
 ・抗菌薬治療がTSSの予後を改善するかは明らかではないが、再燃は減らす
 ・理論的にはCLDMは蛋白合成を阻害するので、毒素産生を減らすと考えられるため、βラクタム系などの細胞壁に作用する抗菌薬より良いと考えられる。
 ・in vitroではCLDM, EM, RFP, キノロンはTSST-1の合成を90%抑制したが、βラクタム系では融解あるいは細胞膜の透過性亢進のためTSST-1産生を増加させた。
 ・CLDMやLZDなどの蛋白合成阻害薬の方が細胞壁に作用するβラクタム系やVCMより治療効果が優れていた、という症例報告もある。
 ・患者から分離したS.aureusを培地で発育させ抗菌薬の存在下でTSST-1の産生量をみた実験では、抗菌薬なし、ナフシリン、VCMではTSST-1産生量が多く、LZD,CLDMでは産生が抑制された。
 ・治療期間は10-14日

保菌患者の除菌
 ・S.aureusによるTSS患者では、鼻腔培養を行い陽性であればムピロシンで除菌するという試みがある。
 ・熱傷治療でよく使われるスルファジアジン銀は45%の株でTSST-1の産生量を4倍に増加させた一方、ムピロシンは47%で産生を減らし、増加させることはなかった。
 ・ムピロシンで除菌する場合は、1回分の軟膏の半分を片側の鼻腔に、もう半分をもう一方の鼻腔に塗る。これを1日2回、5日間行う。

その他の治療
 免疫グロブリン
  ・RCTはないが、理論的には有効であろうと思われる。
  ・GASから分離したSuperantigenに比べ、S.aureusから分離したSuperantigenの方がIVIGの効果が低かったという報告がある。
  ・400mg/kgを数日間投与すると早期にショックから離脱したという報告がいくつかある。

 ステロイド
  ・高用量のステロイド(mPSL 10~30mg/kg)を提唱する臨床家もいるがエビデンスはない。

■予後
・TSSに関連した死亡は入院から数日の間がほとんどだが、15日以降でも起こりうる。
・死亡原因は不整脈、心筋症、呼吸不全、凝固因子低下による出血など
・生理関連TSSの死亡率は1987年の5.5%から、1996年には1.8%まで低下している一方、生理非関連TSSの死亡率は依然6%と高いままである。
・小児のTSSの死亡率は3-5%。

Staphylococcal toxic shock syndrome. UpToDate 19.1

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/185562/52275733

この記事へのトラックバック一覧です: 感染症一発診断シリーズ①脱皮?:

« 単焦点レンズでグラム染色の写真を撮ろう! | トップページ | Nobody Can Stop 小林 »

最近のトラックバック