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2011年7月 1日 (金)

Jolt Accentuationの追試まとめ

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忽那@市立奈良病院です。

IDATENウインターセミナー2011にひき続いて、サマーセミナーでもインストラクターをさせていただけることになりました。恐縮っす。
IDATENセミナーの参加者はすでにバイアスがかかりまくっており、すごく賢い方々ばかりなので、ボロが出ないように今のうちから勉強してます。すでに焦りまくりです。
僕の担当は「頭痛と髄膜炎」「肺炎球菌」で、現在は資料集めの日々です。

さて、Jolt Accentuationという手技をご存知でしょうか。
皆さんご存知だと思いますが、髄膜炎を疑ったときに行う手技です。
赤ん坊が「イヤイヤ」するみたいに1秒間に2,3回首を水平に振り、頭痛がひどくなったり、首に痛みが走れば陽性というものです。

Jolt accentuation of headache: the most sensitive sign of CSF pleocytosis.
Headache. 1991 Mar;31(3):167-71.
PMID:2071396

1991年にUchiharaらが発表したこの研究は、JAMAの「Rational Clinical Examination」シリーズの「Does this adult patient have acute meningitis?」にも取り上げられるほどインパクトがあり、現在では髄膜炎の診断のための身体所見として欠かせないものになっています。
僕も疑ったら必ず取るようにしています。
この研究の内容をまとめると以下のようになります。

髄液検査で細胞数増加が見られた34人(30人が髄膜炎、4人が別の病態)のうち33人がJolt陽性であった。
一方、細胞数増加のない20人のうち8人で陽性であった。
髄液細胞増加に対する感度97%、特異度60%、LR+ 2.4、LR- 0.05であった。

感度が非常に高く、外来で歩いて受診する発熱と頭痛のある患者でJolt Accentuation陰性であれば髄膜炎を否定できるのではないかということで、大変重宝されています。
しかし、この研究は患者数が34人と少ない点、これまでに追試がない点などが問題とされていました。

で、追試を探してみたところ、2008年に会議録が一つ、昨年論文が2つ発表されていました。
まずは2008年の中江らの会議録ですが、当院の神経内科の先生が学会誌をお持ちでした。

Jolt accentuation of headacheの髄膜炎における感度と特異度
日本頭痛学会誌 35 :133, 2008

対象と方法;①項部硬直、38℃以上の発熱、頭痛のうちいずれか2つ以上がある、②発熱と意識障害がある、のどちらかを満たし髄膜炎が疑われた患者44名に頭部CTと髄液検査を行った
結果;髄膜炎と診断された患者は19名で、内訳はウィルス性髄膜炎が15名、細菌性髄膜炎が4名であった。
   Jolt Accentuationは8名(ウィルス性6名、細菌性2名)で認められ、感度42.1%, 特異度56.0%であった。
   ウィルス性髄膜炎では感度40%、細菌性髄膜炎では感度50%であった。

患者数は19名と少ないものの、感度が42.1%とかなり低いという内原らの原著と全く違った結果になっています
内原らの原著では意識障害のある患者が除外されていますが(その理由についてはこちらに書かれています)、本研究では意識障害のある患者も含まれています。
詳細は不明ですが、もしかしたら意識障害のある患者には他動的にJolt Accentuationを行ったのかもしれません。
とするとやはり感度は下がるかもしれません。

次はIranian Journal of Clinical Infectious Diseasesというイランの感染症雑誌に掲載された研究です

Jolt accentuation of headache in diagnosis of acute meningitis.
Iranian Journal of Clinical Infectious Diseases 2010;5(2):106-109

14人の患者に対して腰椎穿刺前にJolt Accentuationを施行。
細胞数増加に対して感度100%、特異度71.5%であった。

かなり簡単な要約ですいません。
ただこの研究、僕の英語力が足りないせいかもしれませんが、14人の患者の内訳などの情報が足りなくて何とも言えません。
正直、微妙な研究です。
じゃあ取り上げるなよって感じですが。

そしてついに真打ち登場!
Clinical Neurology and Neurosurgeryという雑誌に2010年に掲載されていたかなり患者数の多い研究です。

Accuracy of physical signs for detecting meningitis: a hospital-based diagnostic accuracy study.
Clin Neurol Neurosurg. 2010 Nov;112(9):752-7.

発熱、頭痛、意識障害、嘔吐、痙攣、神経局所症状などのある12歳以上の患者が対象。
190人の患者のうち髄膜炎と診断されたのは99人(52%)であった。
このうちウィルス性髄膜炎が62人、細菌性髄膜炎が7人、結核性髄膜炎が30人(!)であった。
髄液細胞数増加(WBC>5 /μl)に対してJolt Accentuationは感度6.06%, 特異度98.9%, LR+5.52, LR-0.95であった。

これも感度6%と超低い結果になってますが・・・。
それにしても結核性髄膜炎が多いなあ・・・。
ちなみにUchiharaらの研究で大多数を占めたウィルス性髄膜炎だけをみても感度1.61%, 特異度98.9%だそうです。ホントかなあ。
意識障害があるかどうかでのサブグループ解析はありませんが、髄液細胞数でmild, moderate, severeに分けた3段階のうち、mildとsevereでは感度0%、moderateでは12%になっています。

というわけで、これまでの研究を表にまとめると表のようになります(クリックすると拡大します)。

Jolt

うーん、少なくとも意識障害のある患者も含めると感度はかなり低下するということでしょうか。
「すわ!Jolt神話崩壊か!」というほどのものではないと思いますが、やはり原著の著者が言われるように、Jolt Accentuationは「walk inで来院した頭痛と発熱を訴える患者で髄膜炎を除外する目的で用いる」というのが正しい使い方のようです。
救急車で搬送された意識障害がある患者の首を他動的にブンブン振って、「痛いですか?ねえ、痛みがひどくなりますか?」と強引に聞いて返事がなくても髄膜炎は否定できないということですね(当たり前か)。

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コメント

この試験、私個人としては意識障害の患者さんにやる意味は元々ないのでは?と思います。論文読んでいないのでわかりませんが、意識障害患者の頭痛の増強をどうやって判断しているのでしょうか?一層顔をしかめる?極端な話ですが、レベル3桁の患者にやって”増強はなかった”と言われてもどうかと思います。

ほし先生

資料集めにご協力いただきありがとうございました。
おっしゃるように、Joltは意識障害のない頭痛と発熱のある外来患者で髄膜炎を除外するためのものであって、発熱患者で意識障害があればJoltがどうこう以前に全員腰椎穿刺をした方がいいんじゃないかと思います。
まあ高齢者だと肺炎や腎盂腎炎でも意識障害あることが多いですが。
なので、本当の意味でJoltの再評価を行うのであれば、「頭痛と発熱のある(意識障害のない)外来患者」に絞って行うべきなのでしょうね。

くつな先生
私も別件で無菌性髄膜炎について勉強しています。
最近、CSF lactateのbacterial/aseptic meningitisの鑑別における有用性に関する報告がいくつかあるようです。
こちらについての先生のお考えをお聞かせ願えますでしょうか?
PMID:21645387
PMID:21382412

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