Jolt Accentuationの追試まとめ
忽那@市立奈良病院です。
IDATENウインターセミナー2011にひき続いて、サマーセミナーでもインストラクターをさせていただけることになりました。恐縮っす。
IDATENセミナーの参加者はすでにバイアスがかかりまくっており、
僕の担当は「頭痛と髄膜炎」「肺炎球菌」で、
さて、Jolt Accentuationという手技をご存知でしょうか。
皆さんご存知だと思いますが、髄膜炎を疑ったときに行う手技です。
赤ん坊が「イヤイヤ」するみたいに1秒間に2,
Jolt accentuation of headache: the most sensitive sign of CSF pleocytosis.
Headache. 1991 Mar;31(3):167-71.
PMID:2071396
1991年にUchiharaらが発表したこの研究は、JAMAの「
僕も疑ったら必ず取るようにしています。
この研究の内容をまとめると以下のようになります。
髄液検査で細胞数増加が見られた34人(30人が髄膜炎、
一方、細胞数増加のない20人のうち8人で陽性であった。
髄液細胞増加に対する感度97%、特異度60%、LR+ 2.4、LR- 0.05であった。
感度が非常に高く、
しかし、この研究は患者数が34人と少ない点、
で、追試を探してみたところ、2008年に会議録が一つ、
まずは2008年の中江らの会議録ですが、
Jolt accentuation of headacheの髄膜炎における感度と特異度
日本頭痛学会誌 35 :133, 2008
対象と方法;①項部硬直、38℃以上の発熱、
結果;髄膜炎と診断された患者は19名で、
Jolt Accentuationは8名(ウィルス性6名、細菌性2名)
ウィルス性髄膜炎では感度40%、細菌性髄膜炎では感度50%
患者数は19名と少ないものの、感度
内原らの原著では意識障害のある患者が除外されていますが(
詳細は不明ですが、
とするとやはり感度は下がるかもしれません。
次はIranian Journal of Clinical Infectious Diseasesというイランの感染症雑誌に掲載された研究です
Jolt accentuation of headache in diagnosis of acute meningitis.
Iranian Journal of Clinical Infectious Diseases 2010;5(2):106-109
14人の患者に対して腰椎穿刺前にJolt Accentuationを施行。
細胞数増加に対して感度100%、特異度71.5%であった。
かなり簡単な要約ですいません。
ただこの研究、僕の英語力が足りないせいかもしれませんが、
正直、微妙な研究です。
じゃあ取り上げるなよって感じですが。
そしてついに真打ち登場!
Clinical Neurology and Neurosurgeryという雑誌に2010年に掲載されてい
Accuracy of physical signs for detecting meningitis: a hospital-based diagnostic accuracy study.
Clin Neurol Neurosurg. 2010 Nov;112(9):752-7.
発熱、頭痛、意識障害、嘔吐、痙攣、
190人の患者のうち髄膜炎と診断されたのは99人(52%)
このうちウィルス性髄膜炎が62人、細菌性髄膜炎が7人、
髄液細胞数増加(WBC>5 /μl)に対してJolt Accentuationは感度6.06%, 特異度98.9%, LR+5.52, LR-0.95であった。
これも感度6%と超低い結果になってますが・・・。
それにしても結核性髄膜炎が多いなあ・・・。
ちなみにUchiharaらの研究で大多数を占めたウィルス性髄膜炎だけをみても感度1.61%, 特異度98.9%だそうです。ホントかなあ。
意識障害があるかどうかでのサブグループ解析はありませんが、
というわけで、
うーん、
「すわ!Jolt神話崩壊か!」というほどのものではないと思いますが、
救急車で搬送された意識障害がある患者の首を他動的にブンブン振
« 微生物検査室に行こう! | トップページ | 奈良 節約セミナー2011 »
この試験、私個人としては意識障害の患者さんにやる意味は元々ないのでは?と思います。論文読んでいないのでわかりませんが、意識障害患者の頭痛の増強をどうやって判断しているのでしょうか?一層顔をしかめる?極端な話ですが、レベル3桁の患者にやって”増強はなかった”と言われてもどうかと思います。
投稿: ほし | 2011年7月 1日 (金) 11時37分
ほし先生
資料集めにご協力いただきありがとうございました。
おっしゃるように、Joltは意識障害のない頭痛と発熱のある外来患者で髄膜炎を除外するためのものであって、発熱患者で意識障害があればJoltがどうこう以前に全員腰椎穿刺をした方がいいんじゃないかと思います。
まあ高齢者だと肺炎や腎盂腎炎でも意識障害あることが多いですが。
なので、本当の意味でJoltの再評価を行うのであれば、「頭痛と発熱のある(意識障害のない)外来患者」に絞って行うべきなのでしょうね。
投稿: くつな | 2011年7月 1日 (金) 11時55分
くつな先生
私も別件で無菌性髄膜炎について勉強しています。
最近、CSF lactateのbacterial/aseptic meningitisの鑑別における有用性に関する報告がいくつかあるようです。
こちらについての先生のお考えをお聞かせ願えますでしょうか?
PMID:21645387
PMID:21382412
投稿: ID conference管理人 | 2011年7月10日 (日) 23時38分