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2011年3月13日 (日)

地震後の創感染の抗菌薬治療

忽那です。
地震後の創感染の抗菌薬治療、というcorrespondenceがNEJMにあったので読んでみました。

Antimicrobial Therapy for Wound Infections after Catastrophic Earthquakes.
N Engl J Med 2010;  363:2571-2573

2010年1月12日に起こったハイチの地震では、イスラエル国防軍は迅速に機動できるチームを派遣し72床の簡便な病院(mobile hospital)を作った。この病院は地震後4日以内に運営可能な状態となり、10日間活動した。この間に、737人の患者が入院し、242人が手術された。入院患者の原因の多くは四肢外傷であり、整形外科的な処置を必要とし、創感染の治療を必要とした。入院前に抗菌薬を投与されていた患者は少数だった。我々は創感染の病原菌を同定することができた。
77%の創感染が複数菌によるものであり、そのうち89%(41/46)がグラム陰性桿菌を含んでいた。これらの病原菌はCDCやWHOのガイドラインによれば一般的に抗菌薬に耐性である。
Limitationとして、Table 1のレポートは我々のもの以外は院内でもらった病原菌か被災地で感染したものか判別できない。我々の研究は患者が病院に着いた時点で採取しており、地震が起きて以降この病院以外に受診した病院はない。
結論として、救助する医療チームはグラム陰性桿菌にスペクトラムを持つ抗菌薬を十分に持つべきである。加えて、将来起こる災害においてもこのような病原微生物の調査は行っていただきたい。これらの研究によって、早期からEmpiric治療を行うことができるだろう。

Photo
(災害時ということでNEJMさん画像転載許してください)

これをみると、7割近くが複数菌によるもので、ブドウ糖非発酵菌が意外と多いようです。
創感染には経口抗菌薬であればオグサワ(オーグメンチンCVA/AMPC+サワシリンAMPC)が処方されることが多いとは思いますが、無効例ではこういった起炎菌も考える必要があるかもしれません。
引用されている2004年12月のタイでの地震+津波という今回の日本と似たような状況でのstudy(
Skin and Soft-Tissue Infections among Tsunami Survivors in Southern Thailand. Clin Infect Dis. 2005 Nov 15;41(10):e93-6. Epub 2005 Oct 13.)では、エアロモナスが22.6%も検出されています。エアロモナス・・・怖いですね。
こちらも読んでみましたが、スワブの採取法についての記載がないのでこれらが本当に全て起炎菌なのかは疑問が残るものの、筆者らは「We found that Aeromonas species were the bacteria most commonly isolated probably because most tsunami survivors were exposed to contaminated fresh water after their area was flooded by the tsunami wave.」と述べており、津波に暴露した患者(特に基礎疾患のある患者)での創感染ではやはりエアロモナスに注意しておいた方が良さそうです。
はじめから全ての患者でエアロモナスをカバーするのは現実的ではありませんが(ちなみにエアロモナスに感受性のある抗菌薬はアミノグリコシド、キノロン、カルバペネム、アズトレオナム、第3世代セフェムなどです)。


Tsunami_survivor
(CIDさんも・・・転載許してください)

トルコ、タイ、インド、中国、ハイチといったdeveloping countryでの研究であり、地震の起こった季節もそれぞれ異なるので、これをそのまま日本に当てはめることはできないとは思いますが・・・少しでも現場の先生方の参考になれば幸いです。

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