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2010年12月17日 (金)

グラム染色クイズ

グラム染色道場白帯のくつなです。

「前回のめざましテレビの記事はくつな、おまえが書いたのか、なかなかいいこと言うじゃないか」というご意見をいただきましたが、あんな立派なことを僕が書けるわけないじゃないですか。
冒頭に「くつなです」と書いていない場合は全て当ブログの管理人先生が書いています。
ちなみに管理人先生が何故このブログで自分の名前を明かさないのかについては当ブログの永遠の謎です。
僕も本名を知りません。
管理人先生については全てが謎に包まれています。
実は村上春樹の『ねじまき鳥クロニクル』の登場人物「笠原メイ」である、というウワサも聞きましたが、だとするとますます謎です。
捨ててこそ 浮かぶ瀬もあれ ノモンハン

さてそれは置いておいて、感染症ブログらしく、グラム染色クイズに私も挑戦してみたいと思います。

78歳男性。
慢性C型肝炎と肝細胞癌で消化器内科、肺気腫で呼吸器科に通院中。
朝から38℃の発熱と呼吸苦で受診。
胸部レントゲンでは右上葉の大葉性肺炎像。
意識障害があったので、心を鬼にして吸引チューブを気管内に挿入し採痰。
研修医の先生に染めてもらいました。
そのグラム染色写真です。

1

・・・「汚い写真だなあ、おい」という皆様の心の声が聞こえてきそうですが。

起炎菌は?
追加で何か検査しますか?
治療は?
この痰を染めた研修医の先生は「肺炎球菌性肺炎なのでPCGでOKです!」と言っています。
ホントに大丈夫でしょうか?

2010年12月15日 (水)

今朝のめざましテレビはひどかった

水曜日は出張日なので、いつも7時頃は車中です。
ラジオを聞いたり音楽を聴いたりテレビをみたり色々なのですが、今日はたまたまめざましテレビをつけていました。
すると、いきなりおどろおどろしいマイコプラズマの生写真をだして、これなんだか分かりますか?と。
数分間にわたってマイコプラズマが流行していることを伝え、「手洗いとうがいをするように」という専門家のコメントを流し、すぐに菅総理の話題へとうつりました。で、「マイコプラズマ肺炎の治療にはペニシリン系などの抗生物質が使われるが全く効かない」と恐怖だけを植え付けるような報道。何を伝えたいのでしょうか?思ったことを箇条書きに。

  • テレビは人の健康に関わるようなことを安易に報道すべきでない。
    • 我々でも一つの病気を患者さんに説明するのに10分~数十分かかります。わずか数分で何十万人もの人に説明する対象として、健康に関するものを扱うのは不適切で不親切です。
  • マイコプラズマに感染したら全員肺炎になるわけではない。
    • 成人で抗体を持っていたら感染しないこともありますし、感染しても軽症で済むこともあります。肺炎になるのは一部の患者さんです。咳が出ている、長引いているからといって肺炎だとは限りません。
  • マイコプラズマに感染したら全員抗生物質が必要になるわけではない。
    • マイコプラズマは通常予後のよい病気です。多くの方は抗生物質を投与しなくても治ります。
  • マイコプラズマ肺炎になっても効く抗生物質はある。
    • めざましテレビの内容が完全に間違っていたのはここで、「ペニシリン系などの抗生物質が全く効かない」と言っていました。まだ「など」が入っていなければよかったのですが、「など」を入れてしまったばかりに、有効性の期待できるマクロライド系薬やテトラサイクリン系薬、キノロン系薬などの抗生物質の存在を全く無視しています。これは「誤報道」です。

もうすでに多くの人が指摘していることですが、マスコミは報道するのならもっと病気のことを勉強するべきですし、どう報道するかもよく勉強するべきです。上記のような報道をされるのは、一医師として、非常に迷惑です。

このページを訪れた患者さんに補足しておきます(ただしこのブログ自体は医療従事者を対象としたもので、患者さんを対象としているものではありません)。

確かに長引く咳(通常1週間~2週間以上と定義されます)は色々と問題があることがあります。多くは感冒後咳嗽といって、風邪の後にただ咳が長引く、というあまり心配することのない病態ですが、場合によってはマイコプラズマ感染症や、結核、肺癌や咳喘息など色々と考えるべき疾患があります。体調が悪いときには是非病院に行って下さいね。

2010年12月14日 (火)

あなたの血培、大丈夫ですか?

久しぶりに感染症らしき話題です。

先日の日曜日、奈良で臨床検査学会がありました。
その中で血培を扱ったシンポジウムがあり、小泉さんとともに司会をさせていただきました。
正直な感想としては、数年前に同様のシンポジウムに出席したときと、状況は根本的にはあまり変わっていないな、と思いました。ただ、数年前は「臨床医と検査技師とが密にコミュニケーションを取る」ということしか考えていませんでしたが、今回はもう少し大局的な見方をすることができました。
今の血培を取り巻く問題点は
・血培を自施設で行っている施設では、その血培の質を高める
・血培を外注している施設では、その血培の質を高める
という大きく2つの問題があるように感じました。
大事なことは、「外注がいい、悪い」という善悪の判断からこういった問題を切り離して考える、ということで、そこに解決の糸口が見えるように思います。

私は決して全ての病院で自前の細菌検査室を持つことが良いことだとは思いません。どうも「シェアする」ことが我々は苦手で、すぐに「自分の」ものを持ちたがる傾向にあります。イイ例えかどうか分かりませんが、「レベルC」の細菌検査室がぱらぱらと散在するよりは、「レベルA」の細菌検査室がびしっとどこかにあった方がいいように思います。あとは、「そこへいかに検体を運ぶか」そして「どう情報を返すか」というロジスティックな問題です。
この辺はアマゾンのお急ぎ便あたりのサービスを見ていると、本気でやればできることじゃないかと思います。

我々がするべきなのは、まず目標像を描き、今の自分の現状をそれに当てはめ、何ができていて、何が足りなくて、何をすべきで、今のリソースではそのすべきことの何%ができるのかをスタッフ全員で話し合うことです。決して「あの病院ではあれをやっているらしいからうちでもやってみよう」と安易に始めるべきではありません。

Photo

上の図をみてください。理想とする感染症診療を全て埋め尽くすまではできていませんが、いくつかの部署が重なり合い、かなり頑張っている状態です。あと足りない部分が何か、どこの部署がそれを担当すべきか、あるいは外部に委託すべきか、それをいつまでにするか、そういった計画を定期的にたてましょう。

不安材料や問題点は言語化し、予定をたてることで解消することができます。悪く言えば「先延ばし」ですが、それでも目印なく行き当たりばったりに動くよりはマシです。

例えば奈良医大感染症センターでは血培陽性例全例に電子カルテにコメントを記載していますが、その後のフォローはしていません(もちろん依頼があればします)。今のリソースではできないと判断しているからです。そりゃぁ無理すればできるかもしれません。でも明日も、来月も、来年もコンスタントにそのサービスが提供できるかどうか分かりません。ならば「今はそれができていないけど、将来的にそれができることを見据えて計画をたて、今はしない」と全員がその状況を共有している方が良い、そういう判断をしています。

あなたの病院が細菌検査を外注していても、こうすれば「何を外注検査に求めるべきか」分かってくるはずです。あとは、委託会社との交渉と契約です。これを繰り返すことで、外注会社もきっと成長し、ニーズに応えるようになると思います(というかニーズに応えられる検査会社じゃないと生き残れなくなる)。

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