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2010年10月25日 (月)

グラム染色における哲学的な悩み

ゲストライターのくつな featuring 鼻茸です。

グラム染色が診断に有用であることは言うまでもありませんが、
自分が行ったグラム染色の所見をどこまで信用して良いものか、
ということは自分にとって非常に悩ましい問題です。

Photo

写真は先日診た肺炎球菌性肺炎です。
ここまで白血球もグラム陽性双球菌が多数いて、
扁平上皮が見当たらなかったら誰でも「肺炎球菌性肺炎だ!」と思うと思います。
でもこの患者で肺炎球菌の尿中抗原が陰性だったらどうでしょうか。
思わず「尿〜!(NO)」と叫んでしまうのではないでしょうか。

自分がグラム染色をした場合、その解釈はどうしても主観的になります。
対して、尿中抗原が陰性であるという結果は客観的なものです。
なのでここでグラム染色の結果を信じて(尿中抗原は偽陰性であると考えて)PCGでいったろうやんけとするのは勇気がいります。
『感染症診療のエビデンス』という本によると、肺炎球菌尿中抗原の感度は70〜90%程度で、特異度は80〜90%と書かれています。
非濃縮尿であれば3割くらいは肺炎球菌性肺炎であっても陰性になりえるということです。
ただし「グラム染色で肺炎球菌が疑わしい」という状況では当然検査前確率が高くなるわけで、そのような母集団ではたとえ陰性であっても当然陰性的中率が高くなるわけです。
うーん、悩ましい。

ちなみにこの症例は気管支拡張症が背景にあり、緑膿菌の検出歴もあったためヘタレ的チョイスでCFPMで開始しました。
第2病日に尿中抗原検査をもう一度行い、今度は陽性だったのでPCGに変更して昨日軽快退院しました。

当院の研修医の先生は皆マジメにグラム染色をしていますが、
たまに「肺炎球菌が見えたので尿中抗原は陰性でしたがPCGで治療してます」とドヤ顔で言うことがあります。
いや、やってることは立派なのです。
でも後からグラム染色を見返してみると「うーん、これ唾液じゃないかなあ」というものだったりします。
このようにグラム染色は非常に有用ですが、グラム染色をみる者の習熟度によっては諸刃の剣になりえるということなのです。

細菌検査室のない当院ならではの悩みです・・・。

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感染症」カテゴリの記事

コメント

Picasaの顔認識機能を応用すれば、菌の認識なんて簡単にできるんじゃないでしょうか?一度googleの人に聞いてもらえませんか?

両先生 久しぶりです。

さて、顔認識機能ですが白血球に反応しませんでしょうか?どちらかと言うと人の顔って赤系統ですし。知りたいことです。
ちなみにこの標本は厚いでのもっと薄く伸ばせばキレイな標本図が撮れるでしょう。
10-12ptの文字が透けて見えるくらいが適当です。

管理人先生

先生の知性に満ちたコメントに感銘を受けましたので、実際に試してみました。
ID-conferenceのクオリティがどんどん下がってきていますが、ご了承ください。

グラム染色道場師範手前先生

大変示唆に富んだご提案をいただきありがとうございます。
次回のエントリーで実験させていただきましたので、ご参考になりましたら幸いです。

あと、写真のグラム染色は、言い訳をするようですが研修医の先生が塗ったものでして・・・。
濃いですよね。
ご教授ありがとうございます。
これからもご指導よろしくお願いいたします。

なりすましメイルではありません。(笑)
くつな先生、先日は有り難うございました。
生まれて初めてのなら訪問でした。奈良は、駅を降りたとたんに落ち着いた雰囲気で、短い時間でしたがとても印象深い街でした。

肺炎球菌尿中抗原の件ですが、先生のGram染色のうでなら、もっと自信を持たれて良いと思います。尿中抗原なんぼのもん、という感じです。
先生の陰性適中率についてのコメントですが、チョット違うような気がします。
検査前確率が極めて高い状態では、ある検査を行った場合に陰性の時は偽陰性である確率が高くなります。検査前確率がきわめて低い場合は、陽性の結果は偽陽性である可能性が高くなります。これは検査後結果が検査前確率の影響を受けるためで、検査の解釈を行うにあたっては重要な注意点であることは先生のご指摘の通りです。
と、言うことでおそらくこのGram染色をみた段階で尿中抗原検査が陰性でも肺炎球菌と考えることができると思います。従ってこの場合尿中抗原検査を"やらない"という選択もあると思います。私ならそうします。
検査ができるからと行っても全て行う必要はないと思います。ある時点で確定診断、あるいは治療のthresholdを越えた場合、それ以上の検査は臨床的にはしなくても良いと思います。

細川直登先生

コメントいただきありがとうございます。
また先日は素晴らしいご講演ありがとうございました。
あの後、新しいMacBookAirが発表されて、思った以上に良さそうなので、僕も買ってしまいそうな勢いです。

このような場合、尿中抗原検査をしないという選択肢もありえるのですね。
ついついクセのように尿中抗原を提出してしまうのですが(レジオネラも・・・)、先生のおっしゃるように、このグラム染色を見た後に尿中抗原を提出して陰性であった場合、混乱してしまうだけなのかもしれません。
今後のプラクティスに活かしていこうと思います。
大変勉強になりました。

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