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2010年2月20日 (土)

感染症コンサルテーション

時がたつの早いもので帰国まで約1ヶ月となりました。心情的には様々な紆余曲折を経ながら、それでもなんとかこの1年を実りのある年だったと思えるよう、頑張っています。
さて、今週から待ちに待っていた臨床見学が始まりました。私のボスが年に2週間だけclinical attendingをしているのでそれに同行させてもらうのです。学生時代からアメリカの臨床に興味があり、臨床留学を考えたこともありましたが結局かなわず年だけをとりました。しかし、こういう形でもその夢がかなったことにとても感謝しています。

今の時期は学生がいないらしく、チームはボス(attending)と1年目のフェロー、そしてcritical careのレジデントをしている薬剤師と私の4人だけです。General IDとよばれる一般感染症のコンサルトをしているチームはもう一つあります。その他に移植患者の感染症コンサルトをしているチームと、HIV患者のケアをしているチーム(これは自分たちのベッドになります)などに分かれて院内をカバーしています。General IDのコンサルトは1チームあたり1日平均3件くらい、多いときで5件くらいでしょうか。症例は様々ですが、私が日本でしていたのと大差ありません(心内膜炎や膿瘍まで発展したMRSA敗血症やよく分からない人工関節感染症、骨髄炎やよく分からない発熱など)。まだ数日しか見ていませんが、その中から今後の自分たちのやり方に取り入れることができるかな、と思うことをいくつか。いくつか感想を。

(1)コンサルトの受け方

基本的にフェローが受け、一度患者を診察し、午後からアテンディングと一緒に回る。カルテは上下に分かれていて上半分がフェローの記入欄、下半分がアテンディングの記入欄で、下半分にアテンディングが治療方針などを記載し、サインして完結する。
→奈良ではこのあたりの役割分担がなんとなくふわふわしていた→この方式をとると、間違いなくアテンディングが大変になるがどうしたものか…多分これができるのはアテンディングが「年がら年中」アテンディングをやっているわけではないからでしょう…。期間が決まっていれば頑張れる、というのもあるはず。

(2)サインオフがはやい

サインオフというのは奈良的にいうといわゆる「終診」。アメリカはサインオフが早いとは聞いていましたが、本当に早いです。コンサルトを受けた症例の半数は当日でもうサインオフする感じです(ただしこれはアテンディングによりかなり差があるそうですが)。ただしコンサルトの症例が多いので、確かにこれはちゃっちゃとサインオフしていかないとキリがないようにも思います。またこのサインオフの早さには(1)簡単なコンサルトが多い:明らかなに感染症らしくない症例が含まれる、(2)患者の入院期間が短い、ということも関連しているようです。こちらではhome infusion therapyやrehabilitation facilityでのinfusion therapyが充実していて、本当に患者が早く退院していきます(回転が速い)。

(3)「コンサルト」文化が発達している

「私達はコンサルトできています。抗菌薬や検査についてアドバイスを行いますがそれ以上でもなくそれ以下でもありません」というスタンスが医師同士でも、患者さんに対しても確立しています。「この患者、もうウチではすることないからそちらの病棟でとってよ」という無益かつ消耗的ないざこざが見る限りはありません。むしろ病棟でとってよ、という前に患者は退院してしまうわけですが。

(4)ナースプラクティショナーの存在

で、こういった文化を下支えしているのがナースプラ久ティショナーを代表とするコメディカルの人々です。コンサルトチームは基本的にカルテにアドバイスを残すだけですが、仮に病棟にいる誰かに口頭で支持を伝えるとしても「ちょっと輸液足りないんじゃない」とか「これ明日の検査に追加しておいて」ということはいちいち医師を探すことなく病棟にいるナースプラクティショナー(日本でもホットな話題になりつつありますね)に伝えるだけです。「コンサルト文化」のところにも書きましたが、コンサルトチームは「アドバイス」するだけなので、自ら処方や指示簿を書くことはありませんし、ましてや自分で採血管を用意し、ラベルを貼り、翌日の朝に自ら採血に向かい、ついでに薬局によって点滴をとってくるなんていうことはきっと理解されないでしょう(好きでやってるだけという話もありますが)。

思いつくままに徒然に書きましたが、良い悪いは別にして、色々と参考になる部分があります。日本の他の病院でやっている「いいところ」をいただくように、アメリカの病院でやっている「いいところ」を取り入れて、「私達のやり方」を模索したいと思います。

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コメント

基本的にフェローが受け、一度患者を診察し、午後からアテンディングと一緒に回る。
これはぜひ奈良医大でも導入していただきたいものです。
人数的に難しいかもしれませんけども。
今だと困ったときは、そのとき空いそうな上級医に相談する、という感じになってるので、誰もいない場合途方に暮れることがあります。

くつな 様
曜日毎にアテンディングが変わるというのはどうでしょうか。今まで通り2診の先生が新患・コンサルト・血培を担当し、13時~14時頃からその曜日のアテンディングと上記および病棟の患者も回診するというのはどうでしょうか?
ここのミソは「病棟の受持患者」のアテンディングが従来通りの「季節毎交代」ではなく、「曜日毎交代」になるわけですが。
メリットとしては
・情報・症例共有
・相互監視(と書くと雰囲気悪いけど)
・出張日にアテンディングがいないということがなくなる
などがあると思います。

はじめまして。癌化学療法に携わっています。
以前から、ときどきブログを拝見させていただいています。癌化学療法を行うにも、感染症のマネージメントが不可避と思っています。
質問です。奈良での例で結構ですが、さまざまな科で癌化学療法が行われていると思いますが、感染症科へコンサルトがある症例はどのくらい、またはどういう症例が多いですか?

はじめまして。コメント頂きありがとうございます。
癌化学療法症例のコンサルトについては大きく「化学療法中の予防」についてのものと「好中球減少時の発症した感染」についてのものに分けることができます。できれば前者の段階から関わることが望ましいと思います(ワクチン戦略なども含めて)。
当院では血液悪性腫瘍患者の感染症については基本的に主治医達がコントロールしていました(1年前の話です)。固形悪性腫瘍はケースバイケースですが、一度コンサルトしてもらうと、次からもコンサルトされることが多かったと思います(リピーター、というやつですね)。
あとちょっと違いますが肝移植・腎移植にまつわるコンサルトが多かったです。
血液悪性腫瘍についても私達の方からアプローチすればよかったのだと思っていますが、私達のリソース的に厳しかったのでそこまでは手を広げませんでした。
疾患的には敗血症、真菌症、呼吸器感染症が多かったですね。
いずれにせよ、抗癌化学療法も含め、免疫抑制患者の感染症や「予防可能だったのに」と思うようなものもありましたので、そういったレジメ作りから一緒に関わるのも一つの手だと思います。

管理人様。
ありがとうございます。"化学療法中の予防”については、まったく頭にありませんでした。特に固形腫瘍では患者の年齢層が高いためか、癌化学療法後の感染症で問題になる患者さんがときどきおられます。が、私の勤務する病院には残念ながら感染症科がないので、大概は主治医の判断での抗菌薬使用です。
少なくとも私の周りの癌化学療法医では感染症に全く関心が無いと断言する上司もいてしまいます。外来ケモ中の発熱はクラビット100mg3錠分3とか。気になったら上司に対してでもできるだけ意見などを言うようにはしたいのですが、感染症についてのトレーニングを積んだわけでもなく、どこまでお手伝いできるかいっつも不安になりつつです。でも自分が助言した治療で良くなった時は、その分報われた気にもなります。
ブログでも感染症のお勉強の参考にさせていただきたいので、これからも続けて愛読させてください。

追加ですが、

あと、化学療法をされている主治医の方は「化学療法を完遂する」ことが何よりの目的なので、そのためには「手段を問わない(=いかなる抗微生物薬でも遠慮なく使う)」というスタンスの方が多いように感じます。

お気持ちはよく分かりますが、時々これが裏目にでて薬剤熱や副作用、耐性菌出現などにつながっていることがあります。また予防内服でそれこそレボフロキサシン100mg×3のようになっていることがありますので、そういう場合にはやはり適切な用法/用量をご提案するようにしています。

是非感染症のトレーニングも積まれて素晴らしい化学療法専門医になられることを祈っております。

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