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奈良医大感染症センターでは医師を募集しています & ブログ開設しました

奈良県立医科大学感染症センターでは当科で働いていただける医師を募集しております。
詳しくは当科ホームページをご覧ください。
また当科のブログも開設しております。こちらもご愛顧くださいますようお願いします。

2022年2月 4日 (金)

濃厚接触者である同居家族等の待機期間について(2022年2月2日)新型コロナウイルス感染症事務通知

  • (注)濃厚接触者である同居家族等の待機期間について
    • 【引用】 新型コロナウイルス感染症の感染急拡大が確認された場合の対応について(2022年2月2日一部改正)(https://www.mhlw.go.jp/content/000892312.pdf
    • 上記の検査陽性者の濃厚接触者であって、当該検査陽性者と生活を共にする家族や同居者(当該検査陽性者が自宅療養をする場合に空間的な分離の徹底が困難であるとの想定の下、例えば飲食、入浴、就寝等を共にする家族や同居者。以下「同居家族等」という。)の待機期間は、現時点までに得られた科学的知見に基づき、当該同居家族等が社会機能維持者であるか否かにかかわらず
    • 当該検査陽性者の発症日(当該検査陽性者が無症状(無症状病原体保有者)の場合は検体採取日)
    • 又は
    • 当該検査陽性者の発症等により住居内で感染対策を講じた日のいずれか遅い方を0日目として、7日間(8日目解除)とする。
    • ただし、当該同居家族等の中で別の家族が発症した場合は、改めてその発症6 日(当該別の家族が無症状の場合は検体採取日)を0日目として起算する。また、当該検査陽性者が診断時点で無症状病原体保有者であり、その後発症した場合は、その発症日を0日目として起算する。
    • また、ここで言う感染対策は、日常生活を送る上で可能な範囲での、マスク着用、手洗い・手指消毒の実施、物資等の共用を避ける、消毒等の実施などの対策を想定しており、保健所の指示に基づく対策の実施や、濃厚接触者とならないよう厳格に隔離等を行うことまでを求めるものではない
    • なお、同居家族等の待機期間が終了した後も、当該検査陽性者の療養が終了するまでは、当該濃厚接触者においても検温など自身による健康状態の確認や、リスクの高い場所の利用や会食等を避けること、マスクを着用すること等の感染対策を求めること

2022年2月3日(木)更新Photo_20220204072402

2019年8月14日 (水)

グラム染色(A→Z アルファベット順に並んでいます)

Candida albicans カンジダ・アルビカンス(血培)

仮性菌糸を伸び伸びと伸ばします.

Candida_albicans_blood_culture_id_confer

Candida glabrata カンジダ・グラブラータ(血培)

仮性菌糸を作らないのが特徴です.菌体も小ぶりです.グラム染色を見渡して,仮性菌糸らしきものがあれば「glabrataではないな」,仮性菌糸らしきものがなければ「glabrataかもしれない」と思うようにしています.

Candida_glabrata_blood_culture_id_confer

Candida parapsilosis カンジダ・パラシローシス(血培)

Candida albicansと比べると仮性菌糸が控えめです.菌体は長めで「タイ米」と表現した研修医がいました.新生児や小児で特に多く,フルコナゾールが第一選択(キャンディン系薬が効きにくい場合があります)となります.英語の発音は正確には「カンジダ・パラサイローシス」です(youtube).パラサイローシスにしてもパラシローシスにしても,途中の"p"は発音しません.しかし日本語の会話では分かりやすく「パラプシ」と呼ぶことが多いかもしれません.

Candida_parapsilosis_blood_culture_id_co

Haemophilus influenze インフルエンザ菌(喀痰)

米をひとつかみ投げてばらまいた感じです.技師さんは「黄色ブドウ球菌や肺炎球菌などのグラム陽性菌は誰でも見えるし分かる.インフルエンザ菌は小さくて見逃しやすい.喀痰を見るときはまず『インフルエンザ菌はいないか』考えながら見なさい」と言います.

Haemophilus_influenzae_sputum_id_confere

Staphylococcus aureus 黄色ブドウ球菌(血液培養)

菌体の後ろに赤いオーラをまとっていると黄色ブドウ球菌の可能性が高まります.Hadanoらは,"oozing sign"と呼んでいます.ピンクサイン,と呼ぶ人もいます.

Sa

クラスター(菌塊)がとても大きくなるパターンも黄色ブドウ球菌のことが多いです.

Staphylococcus_aureus_blood_culture_id_c

Staphylococcus epidermidis 表皮ブドウ球菌(血液培養)

黄色ブドウ球菌と比べると,菌体一つひとつがパラパラとばらけ,区別しやすい感じです.

Staphylococcus-epidermidis_id_conference

Streptococcus dysgalactiae subspecies equisimilis (SDSE)(血培)

ランスフィールド分類では通常G群に分類され,GGS(Group G Streptococci)と呼ぶこともあります.長いレンサのレンサ球菌ですが,注目して欲しいのは「赤くべったりとした」背景です.本菌はβ溶血(完全溶血)で溶血性が高いため,血液培養では赤血球が溶血し,このグラム染色写真のように,赤血球が見えず,赤くべったりした背景になります.α溶血のレンサ球菌属の血培と比べるとその違いが分かりやすいです.

Streptococcus_dysgalactiae_equisimilis_b

Streptococcus pneumoniae 肺炎球菌(喀痰)

市中肺炎,市中髄膜炎の代表的な菌である肺炎球菌です.「莢膜を有するグラム陽性双球菌」はグラム染色を代表するグラム染色像です.

Streptococcus-pneumoniae_sputum_idconfer

Streptococcus salivarius(血培)

α溶血のいわゆる「緑色レンサ球菌属(ビリダンスレンサ球菌)」の一種です.β溶血性のレンサ球菌の血培グラム染色(例えば上のStreptococcus dysgalactiae subspecies equisimilis)と比べて,赤血球がよく残っているのが分かると思います.

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2017年11月28日 (火)

日本臨床微生物学会第19回感染症学セミナーを開催しました

11月26日(日)に、神戸市立医療センター中央市民病院で表記のセミナーを開催しました。

今回は新しい試みとして、「ICNではない看護師さん」をメインターゲットとして企画しました

結果的に130人近い方々(うち約2分の1が看護師さんで、4分の1が薬剤師さん)に参加していただき、とても盛況な会になりました。

20171126_130737
 
まずイントロダクションとして社団法人日本看護協会神戸研修センターの森下幸子先生に「看護師と微生物検査の関わり」についてご講演をいただきました。日頃の「あるある」的なエピソードを交えながら、親しみのある河内弁で非常に分かりやすいお話でした。

続いて「尿路感染症」「菌血症」「肺炎・結核」の3疾患群について順に解説を行いました。
いただいたアンケートは概ね好評でしたが、当初の目標である「ICNではない看護師さん」に伝わる内容であったかといえば、そこは難しかったな、というのが率直な感想です。実際に「ICNではない看護師さん」に感想を聞きましたが、「さっぱり分からなかった」そうです。またある「ICNではない看護師さん」のアンケートは「オール1」でした。さっぱり分からず参加したことを後悔しながら帰った方がいらっしゃることを想像すると、とても心が痛みます。
もし次に企画できる機会があるならば、このあたりの反省も踏まえ、さら「分かりやすく」「心に響く」企画にしたいな、と思っています。

さて、

さんざん微生物の話をした後に、質問をフロアから聞いたところ、森下先生から「結局尿はスピッツ何本出したらいいんですか」と質問をいただきました。
森下先生は「わざと」この質問をされたと思うのですが、結局現場の看護師さんの疑問や要望はこういうところにあるんですよね。「現場は忙しいねんから、スピッツは1本で出すから、検査室で分注してくれたらいいやん」というわけです。

検査に関連する作業の一部(あるいは全部)を、現場でやるのか、検査室でやるのか、空しいやり取りが今日もどこかで行われています。

「室温保管は尿は2時間が限界」「尿意がないおむつ使用患者の尿は導尿で取れ」「質の悪い喀痰は取り直せ」「血培は2セットが原則」「カテ採血は無意味」「創表面のスワブ検体は無意味」「記念培養は無意味」

ぜーんぶ、「検査的には正しい」ですが、現場の諸事情に配慮しているとはいえません。「なぜそんなことになっている」を今一度考え直す必要もあるのではないでしょうか。
私はこういった「現場の諸事情」をもっと検査側が理解し、より良い検体採取器具や方法を開発していく必要があると思います。もちろん、教育・啓発も必要です。そうでなければ、検査室とベッドサイドの溝はいつまでたっても埋まらないのではないかと思います。臨床微生物検査が、臨床微生物検査室が、臨床微生物検査技師がその地位を維持していくためには、このような努力が必要だと思います。また次回の企画にはこういったあたりも活かしたいと思います。

企画側として、色々と頭の中をかき回された一日でした。ご協力いただいた先生方、ご参加いただいた皆様、本当にありがとうございました。

2016年6月 1日 (水)

【急告・会場変更!】 6月4日(土)IDATENケースカンファレンス開催!(成人・小児ダブルトラック)

先日ご案内した下記カンファレンスですが、会場が変更になりました。新しい会場は以下の通りです。

 

会 場フクラシア東京ステーション 会議室GH

 100-0004東京都千代田区大手町2-6-1朝日生命大手町ビル5F6F
     https://www.fukuracia-tokyo.jp/

IDATENの代表的活動の一つでありますIDATENインタラクティブケースカンファレンス(第45回)が今週6月4日(土)に開催されます。直前になりましたので再度のご案内をいたします。今回は倉敷中央病院感染症科の上山伸也先生に特別講演をお願いしています。またケースカンファレンスは成人と小児に別れて行うダブルトラックです。

日時:6月4日(土)13時30分~(13時開場)
会 場
フクラシア東京ステーション 会議室GH

 100-0004東京都千代田区大手町2-6-1朝日生命大手町ビル5F6F

 

特別講演
演者:倉敷中央病院感染症科/感染制御室 上山伸也先生
演題:感染症科は一日にして成らず~信頼される感染症科、ICTの作り方~

ケースカンファレンスはダブルトラック(成人、小児)です。

成人トラック
オーガナイザー:帝京大学 松永直久先生

症例提示1:自治医科大学附属病院感染症科
症例提示2:順天堂大学総合診療科
症例提示3:神戸医大学感染症内科

小児トラック
オーガナイザー:東京都立小児総合医療センター 堀越裕歩先生

症例提示1:諫早総合病院ほか
症例提示2:東京都立小児総合医療センターほか
症例提示3:聖路加国際病院

学生の方も、研修医の方も、ベテランの方も、看護師の方も、薬剤師の方も、検査技師の方も、その他の方々も、皆様是非奮ってご参加ください!

2016年4月16日 (土)

Internal Medicineのすすめ

ID conference読者(そんなひとまだいるんかな)の皆さま

DCCの忽那です。
大変ご無沙汰しております。
 
現在、日本内科学会が開催中のようでして、私の周辺も認定医または専門医更新のためのお布施(とりあえず会費だけ払って更新単位ゲット)をしている方もいらっしゃいます。
かくいう私も数年前までお布施をしておりました。
しかし、当たり前ですがお布施にはお金がかかります。
また会場までの移動もばかになりません。
お布施はまさに修行とも言えるほど過酷なものなのであります。
 
私からの提案なのですが、もっと楽に更新しようではありませんか。
Internal Medicineの"PICTURES IN CLINICAL MEDICINES"を狙いましょう。
そう、日頃から撮りためているClinical Pictureを解き放つときが来たのですッ!!
以下は私が投稿して掲載されたものです(さりげない自慢)。
 
Kutsuna S, Kawabata H, Ohmagari N. Imported Lyme disease. Intern Med. 2015;54(6):691.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25786470
3
 
Kutsuna S, Ohmagari N. Dengue fever. Intern Med. 2014;53(15):1727.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25088899
 
2
 
Kutsuna S, Hayakawa K, Ohmagari N. Scarlet fever in an adult. Intern Med. 2014;53(2):167-8.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24429462
 
1
 
この3作品で更新単位30ポイントゲットッ!
認定医ならこれだけで余裕で更新できますッ!
ぶっちゃけ採用率は50%くらいですが、休日をムダにしないためにとりあえず出してみる価値はあるのではないでしょうか。
 
Clinical Pictureの撮影方法や投稿方法は、もちろんみるトレ感染症で!!(さりげない宣伝)
 
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2015年9月 2日 (水)

SHIKATEN夏合宿2015!

こんばんは.市立奈良病院 循環器内科のケシです.

管理人の全面的なご協力のもと,元(現?)ゲストライターのコバヤシ先生を中心にSHIKATEN夏合宿2015を開催したので、初投稿させていただきます!
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今年は8月29日,30日に市立奈良病院,東大寺と長谷寺の井谷屋で開催しました.
 
 
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まずは市立奈良病院で総合診療科のレクチャー.
1人の患者さんを色々な立場から診ていきます.
西村先生の司会のもと,市立奈良病院ならではの多様なレクチャーが繰り広げられました.
 
 
「市立奈良にSHIKAないカンファレンス」
 市立奈良病院 総合診療科  川口竜助先生,西村正大先生
        感染制御内科 佐藤公俊先生
 
■川口先生の緊急気管挿管
予定手術の時とは違う慌ただしくリスクのある状況で,エビデンスと経験を駆使してできるだけ安全な気道確保を目指します.
■佐藤先生の感染症
大切な感染症診療の基本を見直し,目の前の患者さんに当てはめて考える方法を確認しました.
フロアの感染症専門医たちも悩みながら,自分の考えを語ります.
■西村先生の高齢者診療
何かと判断に迷う高齢者診療.医師の意思決定に知らない間に影響を及ぼしていること,知らない間に見逃していることを認識することからはじめます.
 
 
001 奈良と言ったらシカ!? 奈良と言ったらお寺!
続いて東大寺観光です.
お恥ずかしながら,奈良に2◯年住んでいたのに知らなかったこと,知ろうとしなかったことが多く,奈良の深さを感じました.
 
 
 
 
東大寺観光のあとは,長谷寺の旅谷,井谷屋に移動します.
ご飯を食べて温泉につかって,ほっと一息ついたらここからが本番!
今回目玉企画のダブル情熱大陸です.
4 
 司会:奈良県立医科大学感染症センター 笠原敬先生
 ① 揺れて何処まで行くのやら
  2013年3月11日出演 
  高雄病院地域医療室 川島実先生
 ② 回帰熱大陸
  2015年4月 5日出演 
  国立国際医療研究センター国際感染症センター 忽那賢志先生
 
■まずは川島先生の,身の上話.面白い映画を観ているような気分で,ぐいぐい惹き込まれます.
枠にとらわれない,エネルギーにあふれた川島先生の生き様に憧れます.
■次は忽那先生の回帰熱大陸.インスピレーションに従ってチャンスを逃さない,どこまでも上を目指す忽那先生.
その裏で,先生の人柄と細やかな配慮による周りからの絶大な信頼があり,ビッグになる人は違うなと,できるところからでも見習いたいな,と感じました.
 
翌日8月30日6
朝ごはんのあとは市立奈良病院に戻り,ワークショップです.
「診断推論WS〜プロセスを考えよう!」
  天理よろづ相談所病院 総合内科 長野広之先生
  亀田総合病院 総合内科 佐田竜一先生

  • 診断をつけるカンファレンスが溢れている中で,いまいちどう考えていいかわからない.
  • 診断できるようになりたくて参加してるけど,正直他の人が何でそんなに思いつくのかわからなくてつらい. 

そんな人のために,少人数でのワークショップ形式で診断を考えながら,同期や上級医と考え方をシェアし合う企画でした.
いろんな症状がある中,どこを取っ掛かりに鑑別を広げていくか,お互い意見を言い合いながらまとめました.
 
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2日間,ありがとうございました!
 
いまさらですが,SHIKATENって何??という方は,とりあえずコチラのfacebookページにいいね! してみてください.
簡単にいうと,奈良の多施設の研修医とか学生とか医師とかが定期的に集まって,楽しいことをしながら仲良くなって,スキルを伸ばしたり将来を語り合ったりしている集まりです.もちろん他府県の方や医療従事者でない方も大歓迎です.
少しでも気になったあなた,是非facebookページをチェックして下さい!

2014年12月12日 (金)

レジデントノート「インフルエンザ診療のスタンダード!」

DCCの忽那です。

 

この度、私ごときが、レジデントノートの特集を編集させていただきました。
12月上旬刊行ということでインフルエンザ特集です!
 
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https://www.yodosha.co.jp/rnote/book/9784758115445/index.html?st=0
 
インフルエンザ診療のスタンダード! 編集/忽那賢志
特集にあたって【忽那賢志】
1. インフルエンザの診断の極意
(1) どんなときにインフルエンザを疑う?【平島 修】
(2) 迅速検査キットの考え方【片岡裕貴】
2. インフルエンザの治療の考え方【佐田竜一】
3. インフルエンザ合併症のリスクファクターとマネージメント
(1) 高齢者のインフルエンザ診療,インフルエンザ肺炎【大藤 貴】
(2) 小児のインフルエンザ診療,インフルエンザ脳症【上山伸也】
4. インフルエンザの予防の極意 (1) 予防接種【氏家無限】
(2) インフルエンザの感染対策【笠原 敬】
5. インフルエンザの患者対応の極意【北 和也】
6. 新型インフルエンザ・鳥インフルエンザ【古宮伸洋】
 
私の尊敬する友人たちと、心の兄貴・笠原先生、そしてトロピカルの世界に私を導いてくださった古宮先生にご執筆いただき、素晴らしい特集になりました。 執筆者の先生方、本当にありがとうございました!
 
私の巻頭の「特集にあたって」を以下に転載させていただきます。読み返すと「なんか偉そうやな」という感じですが・・・。
 
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特集にあたって
 
2014年12月現在、西アフリカを中心にエボラ熱が猛威を振るっています。
エボラ熱は非常に致死率の高い感染症であり世界にとって脅威であることは間違いありません。
それではインフルエンザはどうでしょうか?
インフルエンザは致死率においてはエボラ熱には遥かに及ばないものの、日本国内だけで毎年1000万人を超える感染者数を出しており、高齢者や小児を中心に約1万人が入院し死亡者数も多い年には数千人に及ぶこともあります。
世界規模で見ると、もっとたくさんの感染者・死亡者を出し続けています。
もちろんエボラ熱も怖い感染症ではありますが、疫学的にはインフルエンザも非常にインパクトが大きい決してあなどれない感染症なのです。
一方で、インフルエンザは我々医療者が最も診療する機会の多い疾患の一つですので、インフルエンザ診療に自信のある読者の方も多いのではないかと思います。
しかし、あなたのインフルエンザ診療は本当に今日のスタンダードだと言えるでしょうか?
たとえば、あなたは以下のようなインフルエンザ診療をしていませんか?
 
・冬のインフルエンザ流行シーズンに発熱患者が受診したら問診・診察前に迅速検査をしている
・インフルエンザだと思って行った迅速検査が陰性だった場合、翌日にもう一度再検査をしている
・インフルエンザと診断した患者さん全てに抗インフルエンザ薬を処方している
・インフルエンザシーズンは感染予防のため病棟内でずっと同じサージカルマスクを付けて診療している
・入院患者がインフルエンザを発症したら、家族、同室の患者、医療スタッフなど片っ端から予防内服を開始する
・医療従事者だが、インフルエンザワクチンは効果が不十分なため接種を受けていない
 
いくつか思い当たる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
実は私が初期研修医だったときも、当時の指導医からこのように教わりました。
私が初期研修医だったのは早10年前ですが、今の初期研修医の先生方からも「同じインフルエンザ患者でも指導医によって診断方法や治療内容が違っていて、どの指導医を参考にすれば良いのか分からない」という声をよく耳にします。
確かに迅速検査キットの使用法だけ取ってみても、ある指導医は迅速検査キットを全く使わずにインフルエンザと診断することもあるのに、別の指導医は診察前に迅速検査を行い結果が出てからでないと診察しない、など実に様々であり、どの方法を参考にすれば良いのか初期研修医の先生方が混乱するのも無理はありません。
日本の感染症診療が徐々に成熟し、かぜには抗菌薬は使用しない、血液培養は2セット採取する、といった”常識”が定着し始めている昨今、インフルエンザ診療に関しては10年前と比べても大きく変わってはおらず、まだまだ未成熟の段階にあるのではないでしょうか。
本企画は、日本の臨床現場の最前線で多くのインフルエンザ患者を診療している初期研修医の先生方がスタンダードなインフルエンザ診療を行うための一助となることを目的としています。
インフルエンザの適切な診断、適切な治療、そして適切な感染対策や予防を行えることは内科医だけでなく全ての医師に求められることです。
ご執筆いただいた先生方は、医療現場の最前線に立ちスタンダードなインフルエンザ診療を行っていらっしゃる方々ばかりです。
どの項目も非常に実践的な内容ですので今日からのインフルエンザ診療に役立つこと間違いなしです。
この特集が出るのはインフルエンザがそろそろ流行し始める頃だと思います。
今シーズンの流行がピークになる前に、自分のインフルエンザ診療をもう一度見つめなおしてみましょう。

Autochthonous Dengue Fever, Tokyo, Japan, 2014

DCCの忽那です。

2014年の夏は私にとって忘れられない夏となりました。
デング熱が日本で流行するなんて・・・(まさか2年前の予想が当たるなんて・・・)。
というわけで、国立国際医療研究センターでもたくさんの国内デング熱症例を診療しました。
全部で19例。
日本国内で160例ですから、全体の12%くらいでしょうか。
そのまとめがあのCDCの機関誌Emerging Infectious Diseasesに掲載されました!
 
Autochthonous Dengue Fever, Tokyo, Japan, 2014
Kutsuna S, Kato Y, Moi ML, Kotaki A, Ota M, Shinohara K, et al.
Autochthonous dengue fever, Tokyo, Japan, 2014.
Emerg Infect Dis. 2015 Mar.
20141212_224904
 
タイトルもカッコよくないですか。
「Autochthonous Dengue Fever, Tokyo, Japan, 2014」ですよ。
いやー、なんだか今年の東京のデング熱の流行をこの論文が代表しちゃった気分になってきました・・・。
たぶんEIDに掲載されるのは人生で最後だと思いますので精一杯自慢したいと思います。
今年はヨーロッパCDCの機関誌Eurosurveillanceにも掲載されましたので、CDCとECDC制覇です!
 
そしてッ!
この論文がNEJMのJournal Watchにも「要チェック論文」として紹介されました!
 
Dengue Transmission Returns to Tokyo
Mary E. Wilson, MD reviewing Kutsuna S et al. Emerg Infect Dis 2014 Nov 26.
20141212_141919
 
NEJMもKutsunaらの論文に注目しちゃいましたか・・・。
やぶさかではないです。全くもってやぶさかではないです!
 
論文中では「なぜ代々木公園で流行ったのか」「来年以降も流行る可能性は?」などディスカッションに記載しておりますので、ぜひご覧ください。

2014年11月15日 (土)

輸入レプトスピラ症の5例のまとめと、パラオ帰国後のレプトスピラ症

DCCの忽那です。

いつもの「論文掲載報告」です。
ダニ関係の投稿ではなく申し訳ありません。
 
DCCで診療した輸入レプトスピラ症の5例をまとめたケースシリーズがJournal of Infection and Chemotherapyに掲載されました。
 
Travel-related leptospirosis in Japan: A report on a series of five imported cases diagnosed at the National Center for Global Health and Medicine
http://www.jiac-j.com/article/S1341-321X(14)00357-2/abstract
 
Travelrelated_leptospirosis_in_japa
 
レプトスピラ症は輸入感染症のビッグ5とよく言われますが、輸入感染症としての日本における知見がまとめられている文献があまりなかったことから今回まとめてみました。
日本では東南アジアからの輸入例が多いこと、全例に淡水曝露歴があったこと、など重要な知見かと思います。
 
そして、なんとこのあと2例のパラオ帰国後のレプトスピラ症が・・・。
もう少し投稿するのを待てば良かった・・・。
 
LEPTOSPIROSIS - JAPAN (02): ex PALAU, SWIMMING
http://www.promedmail.org/direct.php?id=2949702
 
当院の総合感染症コースの的野先生が投稿してくれました。
この2例は台風18号(アジア名:ファンフォン)通過後に水かさが増した滝に浸かっていたということで、やはり曝露歴が明確でした。
 
私個人としてはまだまだ輸入レプトスピラ症を見逃しているのではないかと思っています。
またこのような報告をするべく日常診療に取り組みたいと思います。

2014年10月21日 (火)

日本医師会雑誌 感染症診療update

DCCの忽那です。

ちょろっと宣伝をしてもよろしいでしょうか。
特に反対意見がないようですので、思いっきり宣伝させていただきます。
 
日本医師会雑誌 第143巻・特別号(2)は「感染症診療update」となっております。
 
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名前の通り日本医師会の発行している本で、今回は感染症特集ということでボスの大曲先生が編集に関わっています。
このシリーズは毎回14万部くらい発行される、たいへん歴史のある本だそうです。
なんかそんなすごい本には見えない装丁なんですが、青木眞先生をはじめ錚々たる先生がたがご執筆されている超豪華な内容となっております。
しかも!本を開くとそこには・・・
 
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なんと忽那、笠原(奈良医大感染症センター)、そして山本(グラム染色道場)という3人の名前が!!
いやー、巻頭カラー14Pですか。
少年ジャンプで言うところのドラゴンボール並みの扱いではないでしょうか。
まあ単にグラム染色などの写真をたくさん掲載しているためカラー印刷の関係で最初に載せていただいているだけなんですが。
 
それよりもなによりもこの3人で一緒にお仕事ができたことを大変嬉しく思います。
あの日奈良で行われたグラム染色カンファレンスが昨日のことのように思い出されます。
一生の記念になりました。機会を与えてくれたボスに感謝です。

«日本人2例目となる回帰熱症例

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